-幕間- とある世界、冒険者の想い
今回短めです。
--私があの人を死なせてしまった。
後悔なんてものじゃない。あの場では勇者であるアランさんを守るのは当然の選択だった。私も分かっていながらあの人よりもアランさんの回復を選んだのだ。
だから後悔すべきではない。自分の選択は正しかった。
そう思うことで罪悪感から逃げるように、せめて無駄にコウさんを犠牲にしたわけではないと思いたい。
もしかしたらアランさんは後から治癒しても間に合ったかもしれない。もしかしたらコウさんの怪我を癒してみんなで逃げることが出来たのかもしれない。もしかしたら--
それでも思考の迷路に迷い込む。自分は本当に正しかったのだろうか。自分の選択は間違っていなかったのだろうか。
考えても答えの出ない自問自答を繰り返す。それはいつだって『たられば』の繰り返し。
それでもあの人は必ず帰ってくると言った。それだけを頼りに今日も冒険者としての日々を過ごしていく。
これから自分はどうすべきか? 決まっている。
自分は他人よりも回復の術に長けている。ならばあの人が帰って来た時にはどんな怪我でも癒せるようにしよう。
例え腕が千切れとんでも、例え胴体を真っ二つにされようとも、癒し尽くす。そんな魔法を身につけよう。
例えそれが人の運命に背く行為であっても、例えそれが神に牙剝く行為であったとしても。
私は二度と大切な人を失いはしない。私は強くなる。だから……
「だから早く帰ってきて……」
空を見上げ、願う。
遠い世界にこの想いが届きますように。
あの人です。
コウ君がイガさんとくんずほぐれつ(古い)している間にも時間は進んで行きます。
さて世界に三行半を突き付けられた魔法師はいつ出戻ってくるのやら。




