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真剣勝負 ※改訂済み

ありがちかな? でも男なら剣と銃に心躍らないはずがない!


※2015/12/07 改訂

「イガさん、今日こそは勝たせてもらう」

「はんっ! どんだけ成長したか見てやるよ」


 イガさんの指導を受けるようになってもう三年が経った。


 この三年間はそりゃあもう辛かった……マジで。


 子供相手に本気で打ち込んで来るわ、アホみたいに走らせるわ、素振りもどんどん回数増やすわ、で何度ぶっ倒れたか分からない。はっきり言ってこの男、鬼である。


 何故そんなに頑張るのかって? そりゃあこの平和な世界なら、武力的な強さなんてなくても、それなりに幸せに暮らしていけるだろう。


 だけど俺には目的がある。もちろんその目的は叶わないかもしれない。


 だけどもう二度と、大切なものを手放すようなことのないように。それにはもっと強くならなくては。


 俺は元の世界に戻っても、剣士として生きていけるんじゃないかと思うくらい、ひたすら剣術に打ち込んだ。


 が、そうは言っても、当然本業である魔法の修練も怠ってはいない。最近少しずつだが、魔法が発現出来るようになってきたところだ。


 以前の俺にとって、一番相性のいい属性は風の属性だったから、今の俺も風属性魔法の発現を重点においてきた。


 魔法のないこの世界で、僅かに感じる魔素を体内に取り込む感覚を研ぎ澄まし、取り込んだ魔素を属性魔力に変換する感触はつかめてきた。


 だがいかんせん魔力の絶対量が少なすぎて、手の平に収束した魔力を放出する際に霧散してしまっている、といった感じだ。


 ちなみに練習時に使用している魔法は初級魔法のウィンドだ。


 そよ風ほどもあるかどうか分からないほどの風しか出ず、正直家にある扇風機(弱)の風のほうが強いくらいである。


 だがそれでも、僅かながらも魔法が発現した、という事実が俺にとっては重要だった。


 --そう、威力はともかく魔法が使えるのだ。


 で、あれば使わない手段はない。実験を兼ねてのこの立会いである。


 --それにこの立会いに関してはもう一つ理由がある。


 それは以前イガさんの家に遊びに行った時のことだ。別に仲が悪いわけじゃないしね。


 イガさんは俺の家の近所で一人暮らしをしている。住んでいる部屋は二Kという間取りのアパートだが、いわゆるリビングにあたる居住スペースに加え、イガさんの自室には色々な長さの木刀やら、何故かモデルガンが多数飾られていた。およそその数は十種類くらいあっただろうか。


 テレビの中くらいでしか見たことのないそれは、思った以上に様々な形状の物があった。その中に一際俺の目を引く銃があった。


「なんだ? 銃に興味があるのか? つってもそれはモデルガンだから実際に弾が撃てるわけじゃないがな」

「あ、うん、これカッコいいなーって」


 そう言いながら一丁の銃を指差す。


「ベレッタか、なかなかいい趣味してるじゃねえか。オレはこのデザートイーグルなんかが好きだがな、やっぱり男はマグナムだろ」


 そう言ってベレッタとデザートイーグルを手に取る。イガさんのゴツい身体にはベレッタは少し小さく見えなくもない。が、なるほど、デザートイーグルは大柄な外見とピッタリマッチしている。


「持ってみるか?」

「うん、そのベレッタって方を持ってみたい。撃っても大丈夫なの?」

「大丈夫だ、引き金を引いても何も出ねえよ。ちょっくら飲み物でも持ってくるから好きにしてていいぞ」


 そう言ってイガさんはベレッタを俺に手渡して席を立った。ベレッタは少しズシリと感じる程度だが、それほど重くはない。今の俺の手には少し大きいが、それほど問題はなさそうだ。何より……


 --それは本当になんとなくだった。


 少し思いついた俺は風の属性魔力を練ってみる。相変わらず取り込める魔素は少ない。当然変換出来た属性魔力は微量ではあるが、銃を撃つイメージで引き金を引いてみた。


 --パスッ


 小さな音を立てて銃口から圧縮された風が放出される。すぐ空気の壁にぶつかって霧散してしまうが、手の平から魔法を使っていた時よりも、威力はあるように感じた。


 今まで杖も持ったことはなかったし、何かを媒介にして魔法を使うことは初めてだったが、細い銃口から圧縮した魔法を放つイメージ、更に引き金を引くという動作がより強く『撃つ』というイメージを強化したのだろうと想像し、得心した。


 --これはいいものだ。


「おーい、オレンジジュースしかないけどいいかー?」

「……」

「おーい」

「……あ、大丈夫です。ありがとうございます」


 少し集中しすぎたらしい、声をかけられていることに気付かなかった。


「随分熱心に見てたな、そんなにそれが気に入ったのか」

「うん、ものすごく。これって買うといくらくらいなの?」

「あん? モノにもよるがそれは二万円くらいだったと思うぞ」

「二万……」


 両親や祖父母に貰ったお年玉もあるが、二万円は高い。というよりも将来の貯金だと言って俺の手元にはほとんど現金がないのである。


「なんだ? 買うつもりなのか?」

「うーん、買いたいけど高すぎるかなぁって」

「まぁそりゃ小学生には高いだろうよ。そんなに欲しいなら……そうだな」


 と言ってニヤリと口元を緩ませるイガさん。あ、これ絶対なんか良くないこと考えてる顔だ。


「三ヵ月後にオレと立ち会え、それでオレに勝ったらそれやるよ」

「ホントに!?」

「ああ、嘘じゃない。今日から三ヶ月間はオレは基本以外の指導はお前にはしない。一切打ち合うことなく、三ヵ月後に勝負だ」


 三ヶ月……長いようで短い期間だ。初めての立会いの時は、俺を子供だと思って油断もあっただろうし、何より奇襲が成功した形での勝利だった。あれ以来何度か練習で立ち会ってはいるが、俺は一度もイガさんには勝ったことがない。


 だがせっかくの機会だ、少しずつ使えるようになってきた魔法も駆使して挑めば勝機がないわけでもない。


「分かった。俺には損なこともないし、是非お願いします」

「ちゃっかりしてんなぁ……可愛げのないボウズだぜ全く」


 そうして三ヶ月間、剣術、魔法ともに必死になって練習に打ち込んだ。魔法に関しては未だに威力のある魔法は撃てないが、少し考えもあるし、なんとかなるだろう。


 そうして迎えた三ヵ月後、俺はついにイガさんとの勝負の日を迎えた。


「じゃあ始めるか。当然俺はもう油断しないし、本気で行く。ボウズも最初っから本気で来るこったな」

「もちろん、イガさん相手に手を抜けるなんて思ってないですよ」


 ベレッタが欲しいこともあるが、それ以上にイガさんは今の俺が越えなくてはならない壁でもある。だからこそこの一戦には意味がある。価値がある。自然と竹刀を握る両手・ ・に力が入るのが分かった。


 --絶対に勝ってやる!!


 俺とイガさんの真剣勝負が始まった。


戦闘描写はまだ経験が浅くて少し悩み中です。矛盾がないように書きたいと思う今日この頃。

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