ジジイ
他にサブタイが思い付かんかったんやorz
「あいたた……爺さんマジで何者だよ。」
「ほっほっほ、それはワシが問いたいところじゃがのう。」
結局爺さんに一度も当てることが出来なかった。それどころか息一つ切らした様子はない。別に剣術にそこまで自信があったわけではないが、それでも十数年ひたすら剣術に打ち込んできたつもりだったんだが。
「別に自信をなくすようなもんでもないぞい。お主の技量は十分に一端の剣士よりは上じゃ。だがのう、双剣士にありがちな悪い癖がついておるのう。」
「悪い癖?」
ついつい言葉に反応して聞いてしまう。
「うむ、ワシも若い頃はそうじゃったが、双剣というものは知っての通り片手に剣を持って振るう。そのためか一撃の重さが足りんと思うてついつい速度や手数ばかりを求める傾向にある。そうなると攻撃は単調になりがちじゃし、なにより動きに無駄が増えるんじゃよ。」
「うっ、まぁ確かに俺は体格にそれほど恵まれている方でもないし、相手が馬鹿みたいな力の持ち主だったからな。でも速度や手数を求めるのは基本なんじゃないのか?」
イガさんを相手にした不幸を呪えとでも言うのだろうか。ああでもそれなら結構呪った気もするな。
「それ自体が間違いじゃとは思わん。じゃが剣術で一番大事なことはなんじゃ?」
剣術で一番大事なこと? 動きの無駄をなくして鋭い一撃を放つことじゃないんだろうか。
「お主の考えておることはわかる。先程の戦いで体現しておったからな。じゃが無駄をなくそうとしても相手を撹乱しようとすればするほど無駄な動きは増えるんじゃよ。それこそ剣術の理とは矛盾しておる。」
「でもそうしないと相手に攻撃も当たらないし、相手に隙がなければ作らなきゃいけないじゃないか。俺には相手の防御を力ずくで突破出来るほどの力はないよ。」
確かに動きに無駄をなくさないと、と思う反面、フェイントや手数で相手の防御を崩して一撃を入れるために動き回ってることは矛盾しているのかもしれないが。
「それはもはや悪しき観念とも言えるのう。別に動き回らずとも相手に攻撃を当てることは可能じゃし、何故力ずくで突破する必要があるんじゃ? 剣を当てて引く、さすれば斬れるのが剣じゃ。全てにおいてそうじゃと言えるほどワシも達観してはおらんが、技とは得てしてそういうものではないかのう?」
「それがさっきの爺さんの動きってことか? 確かに俺の攻撃は全部かわされてたし、爺さんの攻撃は無駄がないとは思った。だけどそれをいきなり真似しろって言われても俺の実力じゃそうはいかないしなぁ。」
年期が違う。と爺さんも言ってた通り俺にはあの動きが理解出来ない。何故俺より速く攻撃が到達し、俺の攻撃はほとんど動くことなくかわされ続けたのか。
「ふむ、それを言葉で説明しろと言われてもなかなか難しいの。ワシはほれ、見ての通りか弱いジジイじゃからの。お主のように速く動くことも出来んのじゃ。で、あれば速く動かんでも自分の攻撃を相手より速く当てる必要があるからのう。」
「それが出来ればそりゃあ動き回る必要なんてないだろうけど、今の俺にそんな技量はないよ。」
言ってることは分かるが、それを実行することが出来るかと問われればノーだ。むしろそれが出来れば苦労はしない。
「技量、とは言うが、ワシはさっきからお主が向かってくる際に一番前に出たがってる箇所に剣を向けただけなんじゃがの。腕が前に出たがっていれば腕を狙い、頭が前に出たがっていれば頭を狙う。剣を振るうよりも先にこっちに向かって来るんじゃから、そこに剣を向けていれば自分から斬られに来るんじゃ。そりゃあ楽な作業じゃぞい。」
「え? 相手より速く剣を届かせるってそういうことなのか?」
てっきりこっちの呼吸や動きを見切って攻撃してきたのかと思ったが。
「ある程度はそういうことも出来なくはないがのう。だが得てして何事も行き着く先は単純なんじゃよ。ほっほっほ。」
食えんジジイだなホント。
「さて、雑談はこれくらいにして、お主のことじゃ。それにもう一人話が聞きたい奴がおるでのう。」
「もう一人? 俺にも他に誰か来てるのか?」
近くには俺と爺さん、それに爺さんの孫しか見当たらないが。
「いやいや、人と言うのが間違っておったかの。ほれ、いつまで黙っておるんじゃ。とっとと挨拶せんかい。ビゼンよ。」
『全く、転移が発動するからには誰か関係のある人がいると思ったら君かい。レイン。とっととくたばったと思ってたよ。』
「残念ながらあと100年は生きるぞい。それになんじゃ、長いこと寝てついにボケたかの?」
『ん? 僕はそんなに寝てたのかい? 正直数日前に眠って起きたくらいの意識しかないんだよね。レイン、僕は君とどれくらい久しぶりなんだろう?』
「ふむ、なるほどそういうことか。そうじゃのう、あくまでワシの記憶が正しければじゃが、もう400年ほどぶりにはなるかのう。」
「は? いやいや爺さん、人間は100年生きる方が珍しいくらいだろ? いくらなんでもそれは。」
『レインは人間じゃないよ?』
「え?」
どう見ても人間にしか見えないんだが? つか400年ってのが本当ならあの女の子は孫じゃないのか?
「ほっほっほ、まぁ確かに身体は人間と同じじゃがの。ワシは元々魔族じゃ。あのにっくき堕神めに人間と同じ姿にさせられての。それ以来はこの通り、老人として好き勝手に生きとるわい。」
「じゃ、じゃああの子は? 爺さんの孫じゃないのか?」
「あの子は幼い頃に捨てられてたのを拾っただけじゃ。じゃがいかんせん気が強くてのう。せっかくの器量も台無しじゃて。」
『ふーん、随分丸くなったもんだね。いつもクラウド達とケンカばかりしていた記憶しかないけど?』
「あの頃はワシも若かったでな。じゃが彼奴等はそんなワシでも助けてくれた恩人じゃ。感謝こそすれ、今では恨みなどないわい。」
また父さんの名前か。しかし400年前だろ? 俺が地球からこっちに来た時も地球では二十年経ってたのに、わずか三年しか経ってなかったのもあるし、その辺はどうなってるんだろうか。
「ってことはなにか、爺さんは俺が持ってるこの刀がビゼンだと分かってて戦いを挑んできたのか。」
「言ってしまえばその通りじゃ。」
「じゃあ俺は試されてたってことなのか?」
そもそもビゼンの関係者なら最初からそう言ってくれればいいものを。
「それもあるがの。お主がクラウドを、あるいはムラクモを殺し、ビゼンを奪ったという可能性もある。もしそうであれば仇討ちじゃし、違えば実力を図っていた。ということにしておこうかのう。」
なんとも筋が通ってるのか通ってないのか分からない理屈だな。
『僕は別に奪われたわけでもないよ。それにこのコウはどうやらクラウドの息子らしいしね。』
「ほう!? クラウドの息子とな? あやつめ、あの時に逝ってしまったと思ったが生きておったか。ではヴィオラやムラクモ、ストームの奴も生きておるのかのう?」
「すまんが爺さんとビゼンの言うクラウドが父さんなのかは自信はない。いや、話を聞いてて間違いはないとは思うんだけど、それはちょっと話すと長くなるんだ。まぁでも父さんも母さんも元気だし、ムラクモが俺の師範のことだとすれば元気だよ。ただストームという人には聞き覚えがない。父さんの知り合いにもいなかったと思う。」
もしかしたら知らない内に会ってるかもしれないしな。日本人風に名前を変えてることもあるだろうし。父さんはクラウドっていう名前の読みに漢字を当てただけだからともかく、母さんがヴィオラという名前で奏となったんなら、ストームって人は風? いや嵐か?
嵐……どこかで見たことがあるような気もするけどまさかな。もしそれが正しかったら偶然にしては出来すぎだ。
『コウ、その辺の話は僕もまだちゃんと聞かせてもらってないよ。ちょうどいいからそろそろ教えてくれない?』
「そうじゃのう。よし、ワシの家で話をするとしようかの。おーい、サニー。」
「なによクソジジイ。」
「声をかけただけでクソ呼ばわり……お爺ちゃんは悲しいぞい。」
それにしても口の悪い子だな。レイン爺さんが甘やかし過ぎたのが悪いんじゃないかろうか。
「毎回毎回毎回毎回!! 修行だと言いながらお尻を触って来るジジイなんてただのクソジジイよ!!」
前言撤回。甘やかしたとかじゃなくてただのセクハラジジイの弊害じゃないか。
「それは親子のスキンシップというやつじゃよ。ワシとしても娘の成長具合を確かめながら隙を指摘出来るいい方法じゃと思ったんじゃが……」
「全然いい方法じゃないわよ!!」
「爺さん。俺からも言うがそれはない。」
もっとやり方があるだろう。別に尻触らんでも。
「うむう。それよりサニーよ、すまんが先に家に戻って茶の用意をしてくれんか。久方ぶりのお客さんじゃからの。」
「分かったわよ。油売ってないでとっとと戻ってきてよね。お茶が冷めるから!!」
あ、でも言うことは聞くんだ。意外と素直な子なのかな?
「さて、それじゃ行くとするかのう。なに、家はすぐそこじゃ。この街はワシ等とほんの少しの住人しかおらん。既に忘れ去られた街じゃからのう。」
忘れ去られた街、か。その辺も父さん達のこととあわせて聞いてみるとするかな。
久しぶりの投稿だったからだろうか……昨日のアクセスが4000弱もあって目ん玉飛び出るかと思ったばい。
いつもありがとうございます。




