思い出話-前編-
いかん、思ったよりボリュームが。つまんないとか言わずにお付き合いください……
「さて、あれからどうなったのか聞かせてくれるか?」
アランが俺に問いかける。そうだな、何から話そうか……
「アラン達がヴィエラに転移魔法をかけてもらった後からの話になるから長くなるけどいいか?」
「ああ、せっかく皆も集まったんだ。是非聞かせてくれ。」
そうなのだ。俺、アラン、ミリィの三人での話になると思ったら、何故かそこに護衛の団長、暇そうに城で腐ってたヴィエラもついてきた。
更に入った酒場にはイガさんが昼間っから酒を飲んでいたのでついでに話に加わることになり、何故か予定の倍の人数になっている。残念ながらアイラはいないが。
「分かった。まずアラン達が転移してからだが、俺はあの四属性魔法を使ってから回復することも出来ずに死んだ。」
「あの魔法か。確かに凄かったな。コウがあんな魔法を使えるとは正直知らなかったぞ?」
「そりゃとっておきだもの。隠してたってわけではないが、あの頃の俺は器の容量も人並みだったし、上級魔法をマスターするのも時間がかかりそうだったからな。なんとか少しでも威力の魔法を、と思って複数属性の魔法を使うことを練習してたんだが、正直二属性でも砂でいっぱいになるし、詠唱に時間もかかるしで実用的じゃなかったんだよ。」
「そうか、すまない。続けてくれ。」
「で、あの後満足したのか、フラッグは立ち去った。でも俺は腕も千切れとんで出血も止まらないし、どう考えても死ぬしかない状態だった。」
「すまない。俺の力が及ばなかったせいで。」
「いや、あれは無理だ。腐っても神だもの。逆に俺一人で済んで良かったと今でも思ってる。」
まぁでもあの頃のスクエア・ロンドが多少なりとも通用したってことは今の魔力ならもしかしたら意外といけるかもしれない。魔法を詠唱する暇があれば、だが。
「で、その時にヴィエラに声をかけられたんだよ。俺に興味が湧いた。力を与えてやろうって。」
「うむ、確かに我はあの時コウにそう声をかけたな。まさかこんな化け物になって戻ってくるとは思いもよらなんだだけに心中は複雑だぞ?」
「化け物言うな。で、その力ってのはつい最近まで忘れてたから今は割愛しとく。で、そのまま俺は死んだ。」
悲痛、というわけではないが、皆が複雑な表情をしている。まぁそりゃそうか。俺だって逆の立場ならどうリアクションしていいか分からんし。
「続けるぞ。で、その後なんかフワフワした感じになって、急に足を掴まれて引っ張られるような感触に襲われたんだ。あの時は地獄の亡者に引き込まれるんじゃないかと思って正直ビビったよ。」
「地獄?」
「あ、そうか、こっちには地獄って言葉じゃないな。こっちでは楽園と奈落の底って言うだろ? その奈落の方だよ。あっちでは天国と地獄って言うんだ。」
なんていうかよくよく考えると、ニュアンスが違うだけで言葉も似たり寄ったりなんだよな。なんか異世界っていっても関わりがあるんだろうか?
「理解した。続けてくれ。」
「で、足を引っ張られたっていうのはなんのことはない。俺を引っ張っていたのは助産婦さん。フワフワしていたのは母親の体内にいたからだったんだ。」
「体内に?」
「あぁ、俺はこのイガさんのいた世界。地球で新たに生を受けた。何の因果か生前と同じ名前でな。」
「それは偶然と言っていいのか? いくらなんでも出来すぎだとは思うんだが。」
「俺もそう思う。だけど俺を生まれ変わらせたのはヴィエラじゃないって話だし、流れから言ってフラッグだとも考えづらい。そうなると心当たりもないから偶然と考えるしかないんだよな。」
確かに以前から作為的な何かは感じていたが、今さら自分の人生に疑いを持っても仕方ないだろう。少なくとも如月家の両親は本当に愛情を持って俺を育ててくれたのだから。
「さっき言ったように、俺はこことは違う世界。地球で生まれた。だから前の記憶を持った別人、とも言えなくはないが、そこは流してくれ。」
「流すのかよ!?」
「だって記憶が欠けてるとかもないし、今さら別人です。なんて言ったら俺なんのためにこっちに戻ってきたか分からなくなるじゃーん。だからそこは気にしないでくれると有り難い。名前も一緒だし。」
「つってもオレは巻き込まれただけだがな……」
「いやそれは本当に申し訳なく……」
「責めてるわけじゃねえ。オレもこの世界は嫌いじゃねえし、元の世界にそこまで大きな未練があったわけじゃないしな。」
「まあどうにかして戻る方法は探してみるよ。戻る戻らないはその時でもいいでしょ?」
「あぁ、話の腰を折って悪かった。」
地球に戻る方法か、果たして見つかるだろうか。いや、今はそれを考える時じゃないな。
「地球に生まれてからの細かい話は省かせてもらうとして、いつかこのアクリスに戻ってきた時の為に魔法の修行はしておこうと思ったんだが、地球にはほとんど魔素がなくてな。実際に魔法がまともに発動できたのは十数年毎日続けてやっとだったよ。まともって言っても初級魔法の威力にすら及ばないようなもんだったけど。」
その代わり今はとんでもないことになってますけどね。
「魔素がない。魔法が使えない……か。そうなると生活は不便なんじゃないのか?」
「アラン君。いい質問です。」
「そうだの。ワシもそれほど魔法が得意というわけではないが、それでも生活する上で魔法という存在がなければ不便だろうというのは容易に想像がつく。」
「団長も、確かに俺もそう思ったよ。でも違うんだ。魔法がないからこそ発展した文明があって、利便性で見ればアクリスよりも地球の方が先を行っていると言えると思う。」
「どういうことだ?」
「魔法がない代わりに科学という物が浸透しているんだ。明かりは魔法ではなく、電気の力を使う。移動は馬車じゃなくて自動車っていう鉄の塊を車にした物が走っている。挙げ句の果てには飛行機っていうこれまた鉄の塊が人を何十人も乗せて飛んでるんだよ。そりゃもうこっちでの記憶があるだけにパニックになりかけたよ。」
「鉄の塊が空を飛ぶだと? それは一体どんな魔法だ?」
「だから魔法じゃないって。科学って言って、自然の現象が発生する原因を調べて、それを自分達で利用し、発展させるという文化が根付いてるんだ。例えば雲はどうやって出来ているとか、鳥はどうして飛べるのか。とか……」
「ふむ。その説明だけではよく分からんが、とにかく魔法ではなく、技術に近い物、と理解すれば良いのか?」
「そうだよ団長。あっちでは井戸から水を引く必要なんてないんだ。水道っていって、蛇口と呼ばれる部分を回せば水が出てくる。逆に回せば水が止まるように出来てるんだ。」
「なんと!? そんな便利なものがあるならこの国にも是非導入したいぞ!!」
「ごめん、流石にそこまでの知識はないや。」
「ぬう……残念だ。」
確かにこっちの世界にも水道とかガスコンロとかがあれば一気に生活水準は上がるだろう。だけど作るには仕組みを理解していないといけないし、俺にはそこまでの知識はない。
「なんだ団長、水道が欲しいのか。大がかりな奴は流石に作れないが、オレで良けりゃ簡単な水汲み装置くらいなら作るぜ?」
「おお、本当か!? イガラシ!!」
「え!? イガさんそんなの作れるの!?」
「まあガキの頃色々あってな。幸か不幸か知識だけはある。」
てっきり脳みそが筋肉で出来てると思ってたが違ったらしい。つか刀で無双するわ内政にも手出そうとするわ。まるで召喚モノの主人公じゃないか。見た目以外。
「話を戻すよ? それで満足に魔法が使えないと理解した俺は、せめてこっちの世界に戻ってからアラン達の足手まといにならないように、剣術を覚えることにしたんだ。幸いにも刀工だった父さんの紹介で、ここにいるイガさんの通っている剣術道場に通うことになったんだ。」
「あぁそうだったな。ボウズの親父さんには何かと世話になってるから面倒見るくらいならいいかと思ってたが……まさかこんな無茶苦茶な奴だったとは思っても見なかったぜ。」
アンタが無茶苦茶言うな。
「これで幼少期の話は終わりかな。ちょっと一息入れてからその後のことを話すよ。」
流石にずっと喋ってると疲れる。なんだかんだで二十年分の記憶を遡って話すわけだしな。今のうちに色々思い出して整理しておこう。
うーん、後編でまとめたいところだけど、長くなるようなら中編になるかもしれません。




