新魔法
さて、活動報告にコメントをいただいた魔法を早速使ってみました。期待した効果でなければゴメンナサイ……
さて、どうしたものか。
目の前に在る巨大な生物を見て思考する。
(俺にはイガさんや銀閃のような身体能力はないし、一発で仕留められなかった場合は確実に死ぬな。)
もちろんこれから放つ魔法が全く通用しなければ相手にもされないだろうが、そうなるとこっちとしてもイガさん、銀閃コンビに頼るだけの戦いとなる。
ベヒモスのスタミナがどれほどのものかは分からないが、このまま二人に任せて楽観視出来るほどの状況ではない。現に二人とも致命傷は負ってはいないながらも、全くの無傷というわけではないからだ。
そうなると血液の流しすぎて動きの鈍った時が怖い。それに現状二人に任せ、周囲は傍観せざるを得ない状況だ。どちらか一方が倒れただけで状況は一気に悪化するだろう。
そうなると中途半端な魔法は使えない。出来る限り一撃で葬る。あるいは致命傷に近いダメージを与えて、二人にトドメを刺してもらうかのどちらかしかない。そのどちらのハードルも高い。
現に冒険者や騎士団の集団にいる魔法師が中級魔法、中には上級魔法師もいるだろうが、有効と思われる傷が見当たらないことからしても、魔法に耐性のある魔物なのだろうことも推測出来る。
先にも考えたが、この状況ではバアル・バーストは使えない。ベヒモスが暴れるよりも大きい被害が出ては元も子もないからだ。
となると地球で考えた魔法の内、出来る限り強力で、且つ範囲の狭い魔法を選択する必要がある。
「となるとアレかなぁ。でも外皮で弾かれる可能性もあるからなぁ……」
使用している魔法は火と地属性の二属性魔法だ。だがこれは貫通性のある魔法ではなく、どちらかというと内部から相手を破壊することを目的とした魔法となる。
それだけに周囲への被害は最小限に出来るとは思うのだが、いかんせん相手の内部に魔法を打ち込む必要がある。足の傷からでも良いが、足を噛み千切って胴体への被害を防ぐような方法をとられた場合には致命傷になり得ない。
実際に試したことがないからベヒモスの外皮を貫ける確証もない。せめてあと一手……
と、思考してふと気付く。そうか、闇魔法で相手を弱体することが出来れば……
魔法の耐性を落とす、あるいは外皮を突破出来るほど弱体させる魔法。心当たりがあるとすればやはり闇魔法しかない。
「ぶっつけ本番だけどやるしかない、か」
ベレッタを抜き、右手に握り込む。同時に魔素を取り込み、闇属性の魔力に変換する。
そしていくつかイメージした中で一つの魔法を選択した。成功するかどうかは神、ではなく魔王のみぞ知る。と言ったところか。
「暗澹たる闇よ。我が敵の希望を喰らい、溶かし尽くせ。エルーション」
溶離を意味するその魔法は、闇の幕で相手を包み込み、包んだ部位を物理的に弱体する魔法である。流石にベヒモスの身体では全身を覆うまではいかないながらも、胴体の一部を膜で包むことには成功した。効果についてはこれから放つ魔法の成否で示すしかない。
恐らく効果時間はそれほど持たない。その前に決着をつける!!
「堅牢なる岩は炎を包み込み、灼熱の炎は岩を焼き尽くす」
イメージするのはベヒモスの内部を溶かし尽くすほどの高熱の魔法。
「やがて岩と炎は溶け合い、混ざり合い、それはさながら涙のように全てを流し尽くす」
イメージするのは火山より流れ出るマグマ、全てを溶かし尽くすほどの。
「肉片も残さず焼き果てろ!! 炎神の涙!!」
地属性の魔力で火属性の魔力を包み、球体にして打ち出す。そしてエルーションの膜に包まれたベヒモスの外皮に接触し、少しずつ、少しずつ体内にめり込んでいく。
やがて球体はベヒモスの体内に収まり、同時に役目を果たした膜も魔素に還り、霧散した。
それから数秒後、ベヒモスに異変が起きた。
--グルオオオオッ!!
ベヒモスが急に暴れだす。恐らく体内に入り込んだイフリート・ティアーズの外郭が溶け始め、身体の中で高温のマグマが流れているのだろう。
放たれる咆哮は怒りか、それとも苦悶の声か。やがて動きが小さくなり、咆哮が止んだ。
そして胴体の一部が赤熱し、溶けた肉が垂れて落ちる。思わず目を背けたくなるようなグロさだ。
そのまま文字通り身体が真っ二つになり、やがてベヒモスは動かなくなった。
「オラアアアアアッ!!」
「ハアアアアッ!!」
剣士二人の叫び声が重なってこだまする。早速好機と見たのだろう。完全にトドメを刺すつもりのようだ。
頭部を落とすつもりなのだろう。奇しくも両者の狙いは首だ。銀閃は身軽さを生かして上空に大きく跳躍して上からの降り下ろし、イガさんはその突進力を生かして横からの打ち下ろし。まるで示し合わせたかのように両者の姿が交差する。
--ザシュッ!!
タイミングも同時だったのか、斬撃の音すら一度しか聞こえなかったほどだった。
ベヒモスの首から緑色の血液が吹き出し、地面を緑色に染め上げる。そしてそのままベヒモスの頭部は胴体から離れ、血に落ちた。
「ふう……どうなるかと思ったけど意外とどうにかなったな」
初めての魔法を二つも同時に使用するという緊張感から解放され、どっと疲れが押し寄せてくる。
実はエルーションの発動には成功したが、イメージが定着していないこともあり、詠唱中も魔力が無駄に流れていたようだ。上手くいっていればベヒモスの全身を覆う事も出来たのかもしれないが、今の俺には大量の魔力を消費しして先程の結果である。効果はあったようなのでここは良しとしよう。
さて、今回のMVP二人に声をかけに行くとしようか。
こんな感じで応募いただいた魔法はちょいちょい登場させていきたいと思います。賛否両論ありそうなので、発案者の名前はここには記載しないことにします。
さぁ今度はイガさんの二つ名を考えなきゃ。いかつくて怖いのにしよう(何)




