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巨大な魔物

早速活動報告に闇魔法の案をコメントしてくれた方がいます。ありがとうございます!!


流石に一日で、というのも厳しいのでいただいた案を元に決めたいと思います。

※一つとは限らないよ!!

「さて……どうするかな……」


 闇魔法の案もいくつか考える中、どれを重点的に練習すべきか迷ってしまう。やはり弱体出来る魔法は一つでも修得すべきだろうし、隠密系の魔法も欲しい。


 そうなると出来るだけ汎用性のある魔法が好ましいが……


「ぶっ放すだけなら結構楽なんだけどなぁ。ドカーンって感じで」


 --ドカーンッ!!


「そうそうそんな感じ……待て、俺は何もしてないぞ?」


 無意識の内に魔法を使ったなんてことはない。そもそも魔素を取り込んですらいないのだから。そうなると自分以外の誰かが魔法を撃ったか、いずれにしても穏やかではなさそうだ。


 音のしたと思われる方角を見ると、煙が上がっている。どうやら何かあったようだ。


「そんなに距離もないし見に行くか。結構王都からも近いみたいだし」


 せっかくなのでスラスターで飛んでいく。


「お、こりゃ早いし楽だな。今度から単独行動の時はこうしよう」


 別に戦闘中じゃないと使っちゃいけないというルールはない。練習にもなるのでスラスターにはこれからもお世話になろうと決めた。


(さて、この辺みたいだけど……ん?)


 どうやらここで戦闘があったようだ。打ち捨てられた剣や倒れている人までいる。どうやら冒険者のようだ。意識のありそうな女がいたので近づいて声をかけてみる。


「大丈夫ですか? 話せます?」

「うっ……救援? あっちにまだ戦っている人達が……」

「戦闘? 魔物なのか?」

「魔物……だと思う。でもあんな魔物は見たことが……」

「分かりました。今から助けに向かいます。どっちに行ったか分かりますか?」

「あっち、だと思う。私はいきなり爆発が起きてすぐに戦闘不能になったから……」

「あっちか」


 女性が示す方向は王都。どうやら狙いは王都のようだな。


「俺回復魔法が使えないんで、せめて音を聞いて魔物が群がってきても大丈夫なようにしておきますね」

「何……を?」

「静謐なる闇よ。汝を好み、世界を拒む。インドア」


 早速覚えた闇魔法、名付けてインドア(ひきこもり)を発動させる。どうしても他のイメージでは発現出来ず、名前もそれに沿ったものになってしまった。長めに発動した方が良いだろうと思い、詠唱もしておいた。


「何これ……?」

「まぁ安全地帯みたいなもんだと思って、無理して動かずにこの中にいてください」

「うん、どうせしばらく動けないし……」

「じゃあ俺は行くんで、回復したらどこかに隠れててくださいね」

「あっ」


 再度スラスターを発動させて、王都に飛ぶ。まさか中に侵入などされてなければいいが。


 少し心配になったので速度を上げる。王都にはあの団長もいるし、特に心配することはないとは思うが。念のためだ。


 程なくして何か見えてきた。尻尾のようだが、異様に太いし、何より……


「でけえ!!」


 尻尾だけでも俺よりでかい。その身体が見えてくるが、ひと目で全容が把握出来ないほどの大きさだ。しかしいくら魔法の練習をしていたとはいえ、こんな大きさの魔物が現れたら気付かないはずがないんだが……


 俺だけじゃない。あんな大きさで歩けば地鳴り程の音も聞こえるだろうし、見張りの兵士が気付かないはずもないし、どうにも腑に落ちない。


「考えるよりまずはコイツを追い抜いて前方に回るか。戦っているとしたら前からだろう」


 スラスターの出力を上げ、更にスピードを上げる。どうやら胴体だけでも10メートル以上はありそうだ。


 途中、踏み潰された肉塊や食いちぎられたのだろう死体を目にする。上半身がなかったり、下半身がなかったりと非常にグロい。


「くそっ、もっと早く気付いてれば!!」


 悪態を打ちながら前を目指す。少しして予想通り人の集団が見えてきた。既に騎士団も加わっているらしく、兵装に身を包んだ人達の姿も見える。


 その中に見知った顔を見つけたのでそちらに向かう。


「イガさん!!」

「おう、ボウズか。いないと思ったら無事だったんだな」

「離れた場所にいたからね。それよりもこれは?」

「わからねえ。ギルドで依頼を探してたらそこにいた冒険者に召集がかけられてついてきたらこのザマだ」

「騎士団もいるようだけど団長は?」

「あのオッサンならほれ、あそこにいるぜ。飛び出して行くと思ったらどうしてなかなか、相手の戦力を測るまではそうそう出る気はないようだな」


 イガさんの示す方を見れば、確かに団長の姿がある。巨大なバトルアックスを手に、苦虫を噛み潰したような顔で魔物を睨んでいる。


「一応声をかけてくる。イガさんは?」

「俺も遊んでるつもりはねえからな。ボウズと共に動くさ」


 そう言葉を交わし、団長の下に駆け寄る。


「団長!!」

「小僧、それにイガラシか。見ろあれを」

「嫌でも見えますって、それよりアレはなんですか? 見たことのない魔物のようですけど」

「アレの名前はベヒモスだ。二年前に隣国のオルジアを襲っていた時に討伐の命を受け、一度だけ戦ったことがある」

「その時の結果は?」

「勝利、とは言えんな。オルジアの兵力、ワシ等オルデンス騎士団の総力でかろうじて撃退することは出来たが、致命傷を与えたという記憶はない」

「つまり超強いと」

「ああ、だがお前等までいてくれたのは僥倖だ。今は銀閃を中心になんとか動きを止めることは出来ているが、いつまで持つか分からん。すまんが手を貸してくれ」

「もちろん、その為に来たつもりだよ。でも銀閃って?」

「そうか、知らないか。ここ最近名を上げている傭兵だ。ワシも見るのは初めてだが、銀の剣を武器に戦場を駆け回る無双の男だと聞いている。が、あんなに年若い男だとは思わなんだ」

「そんなに有名だったのか……」

「なんだ。知り合いか?」

「ちょっとだけね、とりあえず俺達も参加してくるよ」

「ああ頼む、気をつけてな。小僧に何かあれば姫様が悲しむ」

「流石に二度目はないさ。じゃあ行ってくる」


 団長の下を離れ、戦闘集団に混ざる。大勢いるのかと思いきや、実際に戦っているのはたった五人ほど、他数十人は少し下がった場所から使える魔法を放ったり、傷ついた人を回復したりしている。


 更に前に出ると、近接攻撃を仕掛けている人達の姿が見えてくる。その中でも一際目立つ存在がいた。目で追うのがやっとの速度で動き回り、ベヒモスの前足を狙い、前足が振り上げられたら顔を狙い、とにかく振るわれる剣が止まることはない。


「あれは……すごいな」

「あぁ、ボウズの剣術じゃとてもじゃないが敵わないだろうな」

「つまりイガさんなら勝てると?」

「勝てるかどうかは分からん。だが面白くなりそうな相手ではあるな」


 やめいこんな時に、この戦闘狂が。


「とにかく、イガさんも前足を狙って援護をお願い。俺は出来るだけ横に回って魔法を打ち込むから、前衛で注意を集めておいて欲しい」

「承知した。気をつけろよボウズ」

「むしろイガさんの方が危険だろうし、無理はしないでね」

「はっ!! ボウズに心配されるほどヤワじゃねえよ!!」


 言ってイガさんが駆け出す姿を見届ける。


「オレはイガラシだ!! 助成する!!」


 大きな声を張り上げ、自分の存在をアピールするイガさん。そしてそのまま刀を抜き放ち、ベヒモスの足に斬りかかった。


 --ザシュッ!!


 肉を絶つ音が聞こえ、ベヒモスの肉が僅かに削られる。どうやら刀での攻撃も有効なようだ。


「かってえなおい。それに肉を斬る感触ってのは何度やってもあんま気持ちのいいもんじゃねえな……だがオレも殺されるわけにはいかねえ。悪いがでかいの。殺すぜ(・・・)


 イガさんの身体から光のようなモノが溢れ出す。比喩表現ではなく、物理的に。


「おらあああああっ!!」


 叫び声にも似た裂帛の気合とともに、イガさんが駆け出す。その速度は先ほどよりも明らかに速い。


 --ズパァッ!!


 肉の爆ぜる音とともに、刀が一文字に振り抜かれる。見れば刀身まで淡く光を放っているようだ。


「あれは……?」


 見たことがある。それはある男(・・・)が聖剣と呼ばれた剣を振るう姿に酷似していた。


「イガラシと言ったか!! そっちは任せた。俺はこっちを狙う!!」


 見れば銀閃がイガさんに声をかけ、同じように身体に光を纏いながらベヒモスの左足を狙う。どうやら先ほどのイガさんの一太刀を見て、任せられると判断したらしい。


「分かった!! 銀閃とか言ったか!! てめえも死ぬんじゃねえぞ!!」

「お前もな!!」


 同じ技(?)を使う者同士、通じる物があったのか、お互い声を掛け合い、両足を狙い続ける。


 ベヒモスの歩みは止まったまま、前足を振り払い、邪魔者を噛み砕こうと顔を近づけるが、両者共にかわしては斬りつけ、徐々にダメージを蓄積させていく。


 剣技とは、人の動きとはここまでの物かと尊敬すら覚える光景に、周囲からの魔法攻撃は止み、いつしかベヒモスと対峙する人間は二人だけになっていた。


「おっと、俺も見てる場合じゃないな。このままじゃジリ貧になるかもしれないし」


 言ってから自分の役割を思い出す。二人が足止めしてくれるなら、時間をかけて魔法を構築することが出来るだろう。


 今回は人も大勢いるし、バアル・バーストのような広範囲魔法は使えない。先ほどの女冒険者のように道中で倒れてる人もいるかもしれないからだ。


「さて、どうするか」


 俺はベレッタを手に、目の前の魔物を葬り去る魔法をイメージし始めた。

おや、イガさんの様子が……

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