魔法の練習
ギリギリ日またがなかったけどあんま意味ねえ!!
「うおえぇぇッ!!」
絶賛ゲロり中である。
最近は武器の研ぎばかりだったので、身体が鈍ってはいけないと思い、先刻見につけた新しい魔法『噴射』と、闇魔法の練習をすることにした。
闇魔法については未だに魔法のイメージが定着しないので後回しだ。それに相手がいないので空間に作用する魔法を試しさざるを得ない。他属性の魔法の様に固定された魔法のイメージがあれば助かるんだが、人間にはほとんど使い手がいない。とのことなので、いくつかヴィエラに教えてもらうか、自分で考えて定着させ、魔法にするしかない。
そう思って先にブースターの練習を始めようと、左手でベレッタを抜く。片手で剣を振るう、あるいは突くことを考えると、利き手の右ではなく、左手での操作に慣れる必要がある。
最初は銃口を前に向けて弱めにブースターを発動させた。俺の身体が僅かに宙に浮き、後ろに吹っ飛んでいく。
「うおおおおっ!?」
弱めにと思ったがまだ強かったらしい。思った以上の速度で後ろに飛んでいくもんだからすっごい怖い。
慌てて後ろ手にベレッタを構えてブースターを発動させる。が、威力調整を忘れてさっきより強く撃ってしまった。
「ぬああああああっ!?」
ガクンッという衝撃とともに今度は前方に吹っ飛んで行く俺。傍から見ればトンデモ映像だろう。
集中して、再度前方に向けて銃を撃つ。今度は上手く行った様で、減速、着地することが出来た。
「うーん、これはちょっと考えなきゃだなぁ」
どうも集中しないと上手くいかない。だがブースターに集中を割いてしまっては相手に攻撃するにしても直線に突っ込んで行くことしか出来なくなる。
「飛びすぎるのは威力の面もあるが、どっちかというと持続時間が長いっぽいなぁ」
噴射を0.1秒発動させるのか、0.01秒発動させるのかで同じ威力でも結果は格段に違ってくるはずだ。
コンマ1秒より短い時間で魔法を発動させるとなると集中なしでは今は無理ゲーである。解決使用と思ったら魔法を発動させるイメージを定着させ、違う魔法として認識した方が良さそうだ。
「違う魔法か……長時間飛ぶならともかく、詠唱は破棄したいところだし、魔法名を分けるか」
そう考えて、早速魔法の名前を考える。前回使った『ブースター』は0.1秒の魔法だったが……変えるなら定着する前に変えなくては。
そうなるとあと二つ、瞬間的なステップの役割を果たす0.01秒の魔法、もう一つは減速のための、0.05秒の魔法である。
「よし、三つのつもりだったけど持続的に空を飛ぶための魔法も含めて四つにしてしまおう」
そう思い、俺の中でイメージの切り分けを行う。本来の名前の意味とは若干違ってくるが、元々こちらの世界にはない言葉だ。今更体裁を気にする必要もないだろう。
「まずは持続噴射魔法。スラスター」
多めに魔素を貯め、火と風属性の魔力に変換させながら引き金を引き続ける。さながらイメージとしては火炎放射器のような物だろうか。歩くほどの速度で身体が空に浮かぶ。
この時点で成功なのだが、一つだけ欠点があった。それは引き金を引き続けている間はずっと魔法を発動している状態なので、目標の高さに達したとしても止まることが出来ない。引き金から指を離して魔法を中断させるか、あるいは銃口を向ける角度を調節して常に動き続けなくてはいけないことだ。
だが、これはそれほど問題にならないだろう。必要になれば宙で止まることの出来る魔法も考えることもあるだろうが、今の時点ではイメージも沸かないし、後回しにする。
宙に浮いたままいったんスラスターを中断し、次の魔法に移る。
「続いて加速噴射魔法。ブースター」
ブースターに必要な魔力はそれほど多くない。ただしスラスターが魔力の垂れ流しだとすれば、ブースターはいったん魔力を銃口に集め、放出することで推進力を増加、加速を実現させる魔法である。
これに関してはさっきから使っているので発動自体は問題ない。だがやはり身体にかかるGはそれなりに大きく、慣れが必要そうである。
「つ、続いて逆噴射魔法。ブレーキ」
もうこれはブレーキ以外の名前が思いつかなかった。ブースターの半分ほどの魔力を更に凝縮し、銃口より発動させる。
--ガクンッ。
「ぐっ、ちょっと凝縮しすぎたか」
思ったより急に減速してしまったものだから、慣性の法則で俺の身体がくの字の折れ曲がる。何より脳が振られて気持ち悪い。
いったん地面に降りるために魔法を切って身体を落下させる。着地する少し前にスラスターを発動し、落下速度を弱めて無事着地した。
「ふう、やっぱり慣れないときついな」
だがまだ魔法は一つ残っている。銃口に集める魔力は少なめだ。その分魔力をブースターよりも更に凝縮させる。
「最後に瞬間噴射魔法。縮地」
最後の魔法だけ日本語かよ!! と思う人も少なからずいるだろうが、こっちは日本語も英語も関係ない。だからいいのだ。
最初はライトニングブーストと名付けようと思ったが、瞬間的に使う魔法の文字数が多いのもどうかと思って考えた結果、そういや剣術でもアニメでも縮地って聞いたことあるなぁ。と思って思わずつけてしまった。
逆にこの魔法のイメージは分かりやすい。基本的には相手の懐に一瞬で飛び込むことを目標とする魔法だから、目標物を設定し、ゼロ距離まで一瞬で跳ぶ魔法とした。
他魔法はどこまで移動するか、よりもあくまで飛ぶ、加速する、減速するという事象に焦点を当てた魔法だが、縮地に関しては目標が設定されている。それだけイメージとしては定着させやすかった。
近くの木を目標として、木とは逆方向に縮地を発動させる。
「よし、せいこ……ッ!?」
結果としては成功した。木に密着するかのような距離まで接近し、ブースターのようにブレーキを必要としない。相手との距離を詰める上ではこの上ない強力な魔法である。
だがその魔法の代償は後から襲ってきた。
「うおえぇぇッ!!」
この時点で今に時間が追いつくわけだが、さっきからブースターやらブレーキやら縮地やらで、既に三半規管のライフはゼロだったようだ。物凄く気持ち悪くなって地面に蹲ってしまう。
「うぇ……気持ちわる……これは休みながら練習するしかないな」
とは言いつつも、連続使用が必要になる場面もあるだろう。最初は魔法の発動をスムーズにするための反復練習をした後、連続発動も課題として、一日に何回かはゲロリストとなることを心に決めるのだった。
続きまして闇魔法の練習です。




