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試験の後

うーん、ブースターのところはどうにか二刀流を維持したままにしたかったんですが、背中から魔法を出すってのはちょっと反則臭いのでやめときました。

「やっ……おっとダメだ。これは言っちゃ「やったか!?」ダメだってのに……」


 イガさん今日はやたらと被せてくるな。


「ぐぬぬぬぬ!!」


 あーほら起き上がってきたよ。つかあのスピードでドロップキックなんて食らってよくこんなに早く立てるもんだ。脳筋ってマジ怖い。


 右手に剣、左手にベレッタを構えなおす。とは言ったものの、俺も満身創痍である。初めての立体機動で無茶な方向転換もした影響か、頭がフラフラする。力が入らないわけじゃないが、平衡感覚がちょっと怪しい。何より体力的に厳しいものがある。


(いっそ魔法で消し飛ばすか?)


 などと物騒なことを考えてしまうが、殺してしまっては元も子もない。それに今回魔法は使わずに挑戦してみると最初に決めたはずなのに、直接的な魔法は放っていないにしろ、ブースターもれっきとした魔法である。そういう意味では俺の負けと言えるだろう。


 やがて団長がこちらに向き直る。が、武器は構えない。


「ああもう終わりだ終わり。ったくなんだよ最後の無茶苦茶な動きは。あんなのに付き合ってられるか」

「ぶっつけ本番だったから勘弁してもらっていいすか……」

「戦闘中に思いついたのか。なら尚更だ。化け物が」

「悪いけどそのセリフはそっくりそのまま返すよ」


 ともあれお互い戦意はないようで、試験の終了を告げられる。


「で、結果は?」

「ワシ相手にあれだけの戦いをしておいて不合格にしたら駆け出しの冒険者などおらんようになるわ。ヒース! 当然コイツも合格なんだろうな?」

「は、はい。流石にアレで落とすのはちょっと……」

「ふう、良かった」


 一気に身体の力が抜けていく。やはり緊張のせいもあったか、気を抜くと一気に疲れが押し寄せてくる。


「やったなボウズ! 前から思ってたがやっぱりお前は滅茶苦茶だ!!」

「それ褒めてんの!?」

「相手に先を読ませないのは戦いでは重要だ。戦いの中で成長することも相手にとっては脅威でしかない。そういう意味では褒めている」

「うーん、木製の剣で相手の武器を斬り落とす人に言われても若干複雑な感じ」

「とにかく二人とも合格だ。私も試験官という立場で何人かの試験に立ち会ってきたが、団長に勝つような人間の試験をするのは初めてだ。正直ルーキーから始めて貰う決まりがなければとっとと上のランクで依頼を受けて欲しいところだよ」

「ふむ、ヒースよ、その辺はどうにかならんのか? コイツ等に迷子を捜したりさせるよりは、街を襲っている魔物の群れに放り込んだ方がよっぽど効率的だと思うが」


 おい勝手に物騒なこと言ってんじゃねえよオッサン。


「いえ……流石にそのような前例を作ってしまうのはちょっと。それに人目につかない場所とは言え、団長に勝った冒険者などと噂が広まってしまえば騎士団の威光にも影を落とすことになるでしょう。貴方がたは常に最強の名を冠していなければ」

「ワシは別に気にせんが……だが血気に逸る兵士や冒険者もいることだろう。この件はここだけの話にしておいた方が良いか」

「ええ、そう思います。なのでこの件は内密に。君達二人もいいね?」

「え、あぁはい。別に誰に勝ったとかはどうでもいいんで」

「オレも人に勝ったことを自慢するような趣味はねえ。アンタと戦えたことと試験に受かったことだけで十分だ」

「感謝する。それと君もだアイサ。いいね」

「わ、分かりました」


 あ、そういえば受付嬢さんここの居たままだったのね。すっかり忘れてた。


「それとこの二人の受付担当はアイサに任せる。実力は見ての通りだし、時々難易度の低い依頼のように見えてきな臭い依頼が入ってきたりもするだろう。そういうルーキーには薦められないような依頼も君の判断で紹介するように」


 え? 何言ってんのこの人?


「君達もそれだけの実力があって今まで冒険者にもなっていなかったのはそれなりの理由があるんだろう? 詳しく聞くつもりはないが、出来ればその実力を人々のために役立てて欲しい。もちろんこれは善意を強いるような話ではなく、あくまで仕事としての話だ。もし怪しい依頼があればその旨をアイサを通して私に伝わるようにして欲しい。報告を基に調査した結果。どう考えても上級や中級の冒険者でなければ達成出来なかったであろうことが判明すれば、追加でそれ相応の報酬を支払うことを約束しよう」

「そういうことであれば理解したよ。ただ受ける、受けないの判断は任せてもらいたい」

「もちろんだとも、別に君達を死地に送りたいわけではない。これは私が先の戦いを通して君達を信託した証の話だと思ってくれていい」


 随分買われてしまったものだ。悪い気はしないが。


「さて、話はあらかたまとまったな? ならワシはそろそろ帰るぞ。キサラギよ。次に会う時はまたやろうではないか。そこのイガラシもな!!」

「おう! 望むところだぜ。なぁボウズ」

「いえ、俺は遠慮しとくんで是非イガさんがどうぞ」

「ふん、それだけの実力があって何を臆するか。まぁいい、次を楽しみにしておるぞ。ではな!」


 そう言い放って団長が出て行く。しかしあのオッサンはマジで俺達の様子を見に来たのか。


「もしかしたら団長は君達のことを騎士団に勧誘しようと思ったのかもしれないな」

「うん? でもそんな話は匂わせもしなかったけど」

「それは多分勝負に負けてしまったからだろう。自分より強い人間が部下にいてはならないということはないが、君達を誘うにはリスクが高すぎると判断したんだろう」

「リスク?」

「例えばある程度名の知られている冒険者だったら、あるいは名のある騎士や傭兵であれば、という前提で勧誘したなら団長がわざわざ勧誘する理由も納得出来る。だが名も知らぬぽっと出の人間が上の人間、ましてや相手は団長だ。そんな人間から贔屓されているような環境は好ましくないだろう? 特に規律の厳しい騎士団などでは特に上下の関係も厳しいようだしね」

「必ずしも実力重視ではないってことか」

「当然実力あってのことだろうさ。だが組織という物はそんなに単純には回っていかない物だよ。上には上の苦労があるのさ」

「なるほどねえ」


 よくある外部からのヘッドハンティングみたいなものか。確かに自分が次期社長だと言われていた会社で、いきなり外の人間が社長に就任したら意欲は沸かないだろうし、前例を作ってしまうことによって他ポジションももしかしたら……最悪降格も、などと考えてしまっても無理はない。


「そういう意味では冒険者はしがらみがなくていいね。最低限の礼節と人間性があれば実力次第でどこまでも上に登っていけるのだから。だからこれから精進してくれることを願ってるよ」

「ああ、今後も世話になると思うけどよろしくお願いします」

「こちらこそ、王都冒険者ギルドは君達二人を歓迎するよ。キサラギ君。イガラシ君」


 こうして試験を終え、俺達二人は晴れて冒険者となった。

どうしても一人称視点だと会話がメインになってしまいますね。もっと上手く書けるようになりたいなぁ。

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