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試験という名の公開処刑

残業で帰宅が遅くなったので投稿も遅くなりました。

「おわわわわわっ!!」

「どうした小僧!! 逃げてばっかりじゃ合格はやれんぞ!」

「んなこと言ったってムリムリムリ!!」


 斧を振り回す鬼から逃げ回る俺。いくら木製だからってとんでもない速度で振るわれるアレに当たればひとたまりもない。


 俺は相変わらずの二刀流、団長は両手持ちの両刃の斧、いわゆるバトルアクスを武器に戦闘開始となったのだが、最初の頃はお互い様子見で打ち合っていたものの、どんどんテンションのあがってきた団長が斧を右へ左へ振り回し、いつしかダッシュで逃げ回る俺と、斧を振り回しながら俺は追いかける団長の構図が出来上がった。アレに当たったら木製でも首がもげそうである。


(しっかし逃げてばっかりでも確かにどうしようもないんだよな……どうするか。)


 いくつか思い当たる手段はあるものの、ぶっつけ本番になってしまうし、魔法を使って勝つのも芸がない。魔法にしたってこの状況ではあまり集中出来ないし、発動しても当たらなければ反撃を喰らって終わりである。


 かといって威力を考えなければこの建物のことも心配だし……と余計な心配も相まってなかなかいい方法が思いつかないのである。


「つまらんな……ほら、打ち込ませてやるからかかってこい」


 そう言って団長が斧を振り回すのを止める。心なしか残念そうな表情だが、そんなことは知ったことではない。


 相手に譲られた攻勢のチャンスではあるが、元々生きるか死ぬかの戦いではない。(当たったら死にそうだが。)せっかくなので手数で攻めてみることにした。


「だあああああッ!!」


 やはり連撃を放つ時はみんな似たような声が出るんだろう。ヒースさんもそうだったが、俺も多分に漏れず声に出しながら息を吐き続けて剣を振り続ける。


 右の打ち降ろしから左から右への胴薙ぎ、そのまま身体を一回転させての腹部への右突きから首を狙っての左から右上への打ち上げ、いずれも上段と中段で狙う箇所を分けながら集中力を乱す目的の連撃だったが、突きをかわされた後に斧の柄の部分で止められてしまう。そのまま右の一振りで下段を狙うが、それもバックステップでかわされてしまった。


「速度、狙いは申し分ないがいかんせん一撃の重みが足りん。そんな攻撃ではワシは倒せんぞ!!」

「いや別に倒すのが目的じゃないだろ!?」


 どうやらまたノってきたらしい。バトルジャンキーかこのオッサンは。


「ほらほらどうした、もっとかかってこんか!!」

「うるせえよ!」


 俺も戦いの高揚感からか、いつも以上に身体が動くように感じた俺はどんどんペースを上げて打ち込んでいく。右、左、右。左と見せかけての右。上段、下段、上段、中段と狙いを変えていくが、いずれも決定打を与えることは出来ない。


 速度では俺の方が勝っているように見えるが、いかんせん団長の動きには無駄がない。反応が早く、最小限の動きでこちらの攻撃を見切ってくる。どうやら王都騎士団の団長という肩書きはダテではないらしい。


「もうおしまいか? ならそろそろ終わりにさせてもらうぞ!!」

「くっ!」


 再び団長が斧を振り回しながら迫ってくる。くそっどうする!?


 受け切るのは無理、まずもって力が違い過ぎる。

 受け流すか? いや、力が不足していれば弾き飛ばされてそのままジ・エンドだ。

 かといってかわしきるには振り回される斧の往復が早すぎて一発避けてもすぐに二発目が来るし、いくらなんでもリスクが高い。


 となると一番安全なのは団長の懐に他ならない。バトルアクスはその威力を生かしきるために長柄の武器に類するため、近距離の戦闘には向いていないはずだ。


 ならどうやって近づくかだが、これはもう魔法に頼るしかない。


 ウィンドブーストはダメだ。あれは魔法というより、体内に循環する魔力を暴発させて自分を弾き飛ばすモノだし、方向も距離も正確性がない。フラッグの時はシャルを助けると同時に攻撃を避ける必要があったから、とにかく真っ直ぐ、遠くへ飛ぶために威力を重視した。それに結果としては背中が裂けたし、近づいた後にまともに動けるかが怪しい。


 イガさんとの戦いの時にも使ったが、これも距離を考える必要はなかった。より早く、より鋭く突きを決めるために足で魔力を爆発させただけだ。それにあの時は集中するだけの時間があった。


 けれど今は追いかけられながら逃げるのがやっとの状況でとても集中する余裕なんてない。


 くそっ、万事休すか! せめて背中に某ロボットのようなブースターでもついてれば……ん? ブースター?


 今更ながらに推進力を得るには何も爆風に頼る必要がなかったことに気付く。進みたい方向の逆方向に強力な、それでいて瞬間的に風を放出すれば逆噴射の要領を得られるのではないか。


 かといって俺の背中にスラスターやブースターなんてついていないし、背中から魔法を放出するなんて成功したことがない。


 せめてブースターの代わりになるものがあれば……


「喰らえぃっ!!」


 考え事をしている間に距離を詰められ、恐ろしい速度で斧が迫る。直撃を避けるために咄嗟に右手の剣で受けてしまう。


「ぐっ!!」


 右手に持った剣で攻撃を受けるが、受けた剣が半ばからバキィッ! という音を立てて折れてしまう。


 なんとか直撃は避けることが出来たが、武器が一つなくなってしまった。


「ふん、なんとかかわしたか。だが今度こそおしまいのようだな」

「まだ終わってねえよ。年寄りはせっかちだから困る」

「まだ減らず口を叩けるか。いいだろう。ならもう一度行くぞ!!」


 もはや手段を選んでいる場合ではない。先ほどのブースターというイメージは間違ってはいないはず。あとは噴射機構の代わりを……


 ふと目に付いたのは黒く光る愛銃ベレッタ。--そうか、こいつなら。


 そのままノータイムでホルスターからベレッタを抜く。


「これで終わりだ!!」


 そして俺はベレッタを団長の方に--ではなく、そのまま真横に向けて引き金を引いた。


「どこを狙っている!!」


 団長の斧が振り下ろされ、地面・・を打つ。もうそこには俺の姿はない。


「なにっ!? 今の一撃をかわしただと!? どこへ行った小僧!!」


 なんでわざわざ自分の場所を教えねばならんのか。俺はベレッタを左手に持ち替え、残った剣を右手に握り直す。


(さて、上手くいってくれよ。)


 先ほどの要領で凝縮した属性魔力をベレッタに集中させる。変換する属性は火と風だ。発現させる魔法は一秒にも満たない一瞬の間だけ。イメージは某ロボットアニメのブースター。一瞬の推進力を得るための魔法を発動させる。


 正直詠唱もなしで発動出来るかはぶっつけ本番だったが、今更背に腹は変えられない。方向は銃口を向けるだけで調節出来るし、あとの問題は距離の調整だけだ。


 そうこうしている間に、俺を見つけた団長が再度襲い掛かってくる。テストの意味も兼ねて下方向に銃口を向けて引き金を引く。思ったよりも威力が強かったらしく、一気に俺の身体が上に浮いてしまう。


 慌てて斜め上方向に銃口を向けて、先ほどより少し弱めた魔法ブースターを発動させる。今度は上手くいったようで、ズザーッと靴裏で地面を擦りながらも着地に成功する。


(これは……思った以上に使えそうだ。)


 問題は立体的な動きに俺の処理能力が追いつくかだが、それは使って慣れていくしかない。とにかく今は団長の視界から逃れつつ、死角からの一撃を当てることに集中する。


 ブースターを何度も発動し、上へ右へ、下へ左へと団長を撹乱する。そして何度かの立体機動の後に、ついに団長の背後を取ることに成功した。


(くっ! 思ったより反動がきつい。だが今なら!)


 団長と反対側に銃口を向け、ブースターを発動させる。狙いは背後への突きだ。


(いけええええええっ!!)


 気付いてくれるなと念じながら猛スピードで団長へ迫る。


 だが気配を察知したのか、団長はこちらを振り向くことなく左に飛んだ。くそっ、このままじゃかわされる!!


「避けんじゃねええええええええええ!!」


 叫びながら銃口を右に向けてブースターを発動させる。脳が振られて意識が飛びそうになるが、細かい動きはもう必要ない。


「喰らええええええええええ!!」


 再度団長に向かっていく。飛びのいたばかりで大きな回避行動を取れない団長目掛け、俺は……


 --団長の頭に盛大なドロップキックをお見舞いした。

剣術(笑) いや、決してコウさんの腕が悪いのではありません。団長オッサンが化け物なだけです。

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