やり過ぎ
今回短めです。
「コウ!!」
イガさんに担がれながらミリィ達の待つ門前へ戻った俺は、いきなりミリィに声をかけられた。そりゃあんだけ派手にやったら仕方ないか。つかあの被害についてはどうしよう。
「無事なの!? さっきの光は何? 群れの中にあんな魔法を使う魔物がいたなんて……これじゃいくらなんでも騎士団も敵うかどうか……」
あ、そっち?
「団長、魔物の中に強大な魔法を使う魔物がいるようです。私も城に戻ってお父様に報告し、一刻も早く民衆に向けて避難の指示を……」
「あー、ちょっと待ったちょっと待った。そのことなら心配いらない」
「何を言ってるの? 貴方は目の前であの魔法を見たでしょう? あんな魔法王都に向けて撃たれたらひとたまりも」
「いやそうじゃなくて、アレ撃ったの俺俺」
「はぁ!?」
いやそんなにビックリされても、ダメですよ王女様がはぁ!? だなんてはしたない。
「うむ……底が見えんとは思ってはいたがこれほどとは……これは闇属性魔法も取り入れれば面白いことになるかもしれんな。クックック」
あ、悪い笑い方してる人がいる。つかなんかキャラ違くね?
「いやー、ボウズのアレは凄かったな。魔法なんて初めて見たがあんなの撃たれちゃたまったもんじゃねえ」
「流石に俺もあんなにえげつないの撃てるとは思ってなかったけどねー」
「何を言ってるのですか貴方達は! あんな、あんな魔法を撃つ人間なんて見たことも聞いたこともないわよ!!」
あ、また地が出てる。部下の前ですよ王女様。
「まぁ魔物は一掃出来たみたいだし、結果オーライってことで。ただ……」
「何? まだ何かあるの!?」
「あー、いや、なんていうか……すまん、やり過ぎた」
「は? やり過ぎた? あれだけの魔物の大群を倒したんですもの、それに何か問題が?」
「えっと、なんていうか……見てもらえれば分かる。と思う」
「今ワシの部下が魔物の残りがいないか確認しに行っておる。それほど遠くはないはずだからもうすぐ報告に来るだろう。話はそれからでも良いのではないか?」
「団長ー! 団長おおおお!!」
言うが早いか、確認に行っていた兵士が戻ってくる。
「戻ったか。で、現場の状況はどうだ?」
「それが……魔物はおろか、現場付近には何もありませんでした!!」
「何もないならそれは問題ないのではないか? 何をそんなに興奮している」
「いえ、言葉通り何もないのです!! 街道を挟む木々も、岩も!!」
「は?」
あ、この人もは? って言った。
「コウ……まさか……」
「ごめんなさいごめんなさい。本当悪気はなかったんです。ただちょっとテンションが上がってやり過ぎただけなんです」
「はぁ……いくらなんでも非常識過ぎでしょう。それに貴方中級魔法師だったじゃない」
「うんもうぶっちゃけ中級とか上級とか関係なくなっちゃったみたい。さっきのも自分で考えたやつだし」
中二病丸出しのな。
「魔力のロスの少ない既存魔法じゃなく、オリジナルの魔法であの威力って貴方どうにかしてるわよ」
「てへっ」
「褒めてません!! 今日という今日はとことん話を聞かせてもらいますからね!!」
そう言って団長の方に向き直る。
「団長、そういうわけですからこの三名の身柄は私が預かります。現場付近の被害状況などは後日報告をお願いします」
「承った。まぁこっちとしても無駄な損害を出さなくて済んだわけだしな。それくらいの仕事は快く引き受けるとしよう」
「お願いします。ではコウ、貴方は私について来て下さい。イヤとは言わせませんからね!!」
睨まれるような視線が痛い。三人揃ってミリィの後ろをついていく。今度は牢ではなく王城に招かれた。
--そしてその後めちゃくちゃ説教された。王女怖い。
こうして俺達の王都での一日が終わった。
どうしよう、早くイガさん無双したいのに最近影が薄い……




