偽者? 本物? 前編
さてついに再開第一弾です。
--退屈である。
身体の自由を奪われているわけではないので、身体を動かしたりは出来るのだが、いかんせん狭い場所(二畳半くらい)に大の大人が三人も詰め込まれている状態である。流石に動き回るほどのスペースもないので、よくて座ってるか寝転がっているのが関の山だ。
ちゃんと晩飯も食わせてくれたし、牢に入れられている割には待遇は悪くない。ちなみに久しぶりに野菜もあったが、ちょっと萎びてた。なんかほうれん草っぽかったけどなんだろあれ?
夜になると静かなものだが、逆に小さな物音が聞こえてくる。壁をカリカリ引っかくような音もするし、うめき声のような物も聞こえてくる気がする。まぁ自分達以外にも先客がいるのだから当然か。
「とりあえず今は大人しくしてるしかないだろうけどさぁ」
なんとなく寂しくなって声に出してみる。
「ここに入る前にも言ったが、身の危険を感じるようなら我は一人でも帰るぞ。ずっと入っているつもりもない。良くて三日といったところだな」
あ、コイツまたフード被り直してやがる。また監視のおっちゃんに怒られるぞ……
「確かにずっとこのまま、というわけにもいかんだろうな。オレも我慢出来て三日がいいところだと思うぞ。それまでにどうするかは考えておこうぜ」
と、イガさんも言う。うん確かにこのまま牢に入ってても意味はない。ミリィにも会えないなら尚更だ。
かといって、金を稼ぐなら仕事の入りやすい王都で冒険者家業に勤しむ方が……とも考えると、簡単に三日立ったらプリ○ンブレイク。というわけにもいかない。
「うーん、参ったな……ん? 誰か来る?」
コツ、コツとリズム良く床を鳴らして歩いてくる音がする。音はこちらに近づいて来ており、なんとなく優雅さを感じさせる足音だ。
程なくしてその人物が俺達の牢の前で立ち止まる。どうやら俺達に用があるみたいだが……なんか見覚えのある顔である。
「ミリシア王女様、これ以上近づくことはお止めください。この者達は今のところ動きはありませんが、それでも得体の知れない奴等です。何かあってからでは遅いのですから」
「良い、私も武に覚えがないわけではありません。もちろん警戒はしますが、心配は無用です」
王女……だと? おいおい、一体俺達が何をしたっていうんだ? まさかヴィエラのことがバレたとか?
「案内ご苦労様でした。貴方も役目があるでしょうが、少し外しなさい」
「はっ、いえ! しかし!!」
「これは命令です。心配なさらずとも私のことは団長が見張っているはず。そうおいそれと問題が起きるようなことはありません」
「はっ!! 命令とあらば!!」
そういって監視役が入り口に戻る。団長ってあのいかついオッサンが近くにいるのか……特にやましいことはないが、王女相手に下手なことは言えないかな?
「さて……身分証もなしに街に入ろうとしたというのは貴方達で間違いありませんね?」
「そうだが……礼儀がなってなくてすまないが、さっき王女様と呼ばれていたが、アンタはこの国の王女なのか?」
「質問しているのはこちらですが……まぁいいでしょう。その質問は肯定します。私はこの国の王女、ミリシアと申します。以後お見知りおきを」
そういって一礼を返してくるミリシア王女。うーん、金髪美人が挨拶すると様になるな。様になるんだが、なんとなくぎこちないような気もする。
「それで、私は名乗らせていただきましたが、貴方達の名前を教えていただけませんか? それから私の用件を告げたいと考えておりますので」
「失礼した。俺はキサラギ、こっちのオッサンがイガラシ、それでこの全身黒ずくめがヴィエラ。こう見えても女性だ」
「では貴方が……?」
「ん?」
王女が俺のことを真っ直ぐに見つめる。なんだ? 探るような、それでいて何か悲しんでいるかのような目だ。
「えっと、俺?」
「ええ、貴方はキサラギと仰いましたね。失礼ですがそれは家名で?」
「あぁ、キサラギは苗字だ。名前はコウ、コウ=キサラギだ」
「みょうじ……? いえ、なんでもありません。ではキサラギさんとお呼び致します。貴方に尋ねたいことがありますがよろしいですか?」
「あ、あぁ。俺に答えられることなら」
俺に質問? ヴィエラのことじゃないのか。
「貴方は門番にミリィという女騎士がいないか聞いたそうですね。その名をどこで?」
「あぁそのことか、でもなぁ、団長っていうオッサンに指摘されたばっかりだしなぁ……」
「回答の正否はこちらで判断します。貴方はただ聞かれたことに答えてくれればよいのです」
うーん、なんとなく感じるところもあるし、この際だ、一度打ち明けてみるか。
「……分かった。だがこれは他言無用に願いたい。王女様を信じていないわけじゃないが、こっちにも事情ってものがある。それに信じらるか信じないかはアンタ自身で判断してくれ」
「承知しました。他言無用にすることを誓いましょう」
そういって王女は右手を握って胸に当てる。あれ? この仕草どこかで……
「頼む。王女様に言うようなことじゃないが、王様にも内緒にしておいてくれ」
そう切り出し、俺は話し出す。
「ミリィについてだったな。彼女は聖剣の勇者アランと共に旅に出た女騎士だ。王都騎士団の有望株だということで王様より直接旅に同行することを命じられた。俺はその時にアランの隣にいたしがない魔法師だよ。確かその時には王女様は同席していなかったと記憶している」
「っ!!」
王女が息を呑む音が聞こえる。同時に彼女の目がキツくなる。これは怒気? というものだろうか、もしかして怒ってる?
「どうかしたか?」
「……いえ、続けてください」
「分かった。俺達は三人で旅を続け、アルラーンというエルフの里でシャルというハーフエルフと出会った。知ってるかとは思うがハーフエルフは純血を尊ぶエルフからすれば異端だ。彼女は少なからず迫害されていた。だからこそ俺達は彼女を旅に同行させることにした。彼女の治癒能力が秀でているからという理由でパーティに誘った形だな」
一息置く。なんだろう、なんとなく息苦しい。
「だがそれはアラン、ミリィ、俺の三人の中では建前でしかなかった。迫害されている彼女が一人で生きていけるようになったら、無理して旅には同行させず、彼女が望みさえすればどこかの街で腰を落ち着けてくれればと決めていた」
そして旅を続けるうちに、一度その話をしたんだったな。
「……実際その話をした時には内臓が破裂するかと思った」
「アレは強烈でしたものね……?」
「そうなんだよ……おかげでその日晩飯が食えなかった」
ん? なんかおかしいぞ?
「あれ? なんで王女様がそのことを知ってるんだ?」
「その質問には後で答えます。話を続けてくださいませんか?」
なんだろう? 怒気はやわらいだようだが、どんどん悲しげな表情になっていく。俺なんかしたか……?
「それから俺達四人は魔王城に辿り着いた。最後の雑談を終えていざ魔王と勝負!! と思ったら肝心の魔王は敵意を持たずに俺達と話し合うことを提案した。アランは今にも飛び掛りそうだったが、俺は魔王の威圧感に押されて話をすることにした」
まぁその魔王がここにいるんですけどね。
「そして最悪の存在が現れた……フラッグっていう堕ちた神だ。奴は聖剣のことを楔と呼び、アランの振るった聖剣を手刀で迎え撃って折りやがった。アランも身体を大きく切り裂かれちまったしな……そのまま全員殺されそうになったところで、俺はシャルをアランに突き飛ばして魔王に助けを求めた。コイ……奴はある約束と引き換えにアラン達を助けてくれると言ってくれた。俺はそれに賭けてフラッグを挑発し、時間を稼ぐことが出来たんだが……結果としては死んでしまった」
「……死んでしまった? 死にかけた。ではなく?」
「あぁ、むしろここからが話の本題になると思う」
一拍置いて、俺は話を続けた。
思った以上の文字数になってしまったorz
申し訳ありませんが、前後編に分けます。




