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見たことのある道

明日投稿出来るか怪しいんでもういっちょ投下。うーん、今からこんなペースで書き続けられるかな(汗)

「じゃあ行くか」


 イガさんとヴィエラに声をかけて街道を歩く。転移前に多少の食料は用意してきたが、何にも過ごせるほどの量ではないし、出来る限り野営も避けたいところだ。少しでも早く行動して街に辿り着かなくては…


 とは言っても俺はそれほど心配していなかった。この世界に馴染みのないイガさんはともかく、ヴィエラは魔王と呼ばれていた存在だし、俺もアホみたいに魔力の器が大きくなっているらしいし、いざとなったら魔法ぶっぱでなんとかなると思っていた。


 心配なのは食料と街までの距離、いざとなれば街道から逸れて森で動物を狩って食料とするのもいいが、必ずしも食べられる動物がいるとも限らない。魔物に食い尽くされていれば終わりだし、その魔物も食える物も言えば食えない物もいる。楽観は出来ない状況である。


 一日目は歩けるだけ歩いて街道沿いで結局野営することとなった。基本的には2時間毎に見張りを交代し、俺⇒イガさん⇒俺⇒ヴィエラ、という風に、過去野営経験のある俺が多めに負担するつもりではあったが、ヴィエラの闇魔法で俺達の周囲を夜の闇に溶け込ませられるということで、早速試してみた。


 中にいる側としてはなんとなくモヤがかかったような状態で、周りから見えているんじゃないかと思ったが、試しにイガさんとヴィエラの周囲だけに魔法を展開してもらい、俺が少し離れた場所から確認してみたが、見事に見えないし、気配も感じなかった。便利だな闇魔法。俺も使えるらしいし、今度教えてもらおう。


 よくよく聞いてみると、闇魔法は直接的な攻撃や放出には向いておらず、この魔法のようにある一定の空間に作用させるのが基本なんだとか、相手の視界を奪ったり、自分の気配を絶ったりする目的で使うのがメインだという。なんとなくイメージと違って少しガッカリである。


 だが今までの四属性以外に魔法の選択肢が出来たのは大きい。発現させる魔法のイメージが固まらないことにはすぐに使えるようになるわけじゃないだろうが、そこは練習あるのみである。


 二日目もひたすら歩いた。しばらく歩いている内にチラホラ人と擦れ違うことがあったが、挨拶をしても微妙な表情をされるだけで、特に声をかけられることもなかった。昔は擦れ違う際に挨拶くらいは交わしていたと思うが……


 と、一つのことに気付く。それは俺達の風体だ。


 俺の格好は召喚前に刀を打っていた時のツナギの作業着(作務衣じゃないよ!!)だし、イガさんはラフなTシャツ、ジーパンである。ヴィエラに至ってはこれでもかというほど真っ黒なローブで顔が見えないほどスッポリ被ったフード。確かに奇妙と言えば奇妙な組み合わせである。


 しかも残念なことにこの世界ではヴィエラの格好が一番普通(?)であることだ。ツナギなんて見たこともないし、ジーパンなんてもっての外である。


 ……うん決めた。街についたらまず防具だ。


 幸いと言ってよいかは微妙なところだが、俺とイガさんには地球から一緒に持ってこれた刀がある。イガさんの刀は親父が打った刀だし実用性にも耐えるだろう。俺は二刀持っているが、一刀は親父愛蔵の備前。よく手入れもされているが、もう一刀は自分が初めて打った刀である。愛着はあっても実用性としてはどうだろうか。ヴィエラはまぁ武器いらんだろ。だって魔王だし。


 そして思考を戻した俺はふと立ち止まった。


 あれ? この道なんか見たことあるような……?


「どうしたボウズ?」

「いや、なんとなくこの道昔通ったことあるような気がして……」


 既視感に見舞われて記憶を探ってみる。が、なんせ二十年以上も前の話だし、この世界自体も俺が死んでから三年経っているという話だ。あまり記憶も役に立たないかもしれない。


「そうか、まぁ仮に通ったことのある道だとしても、結局はこの道沿いに行くしかないんだろ? だったら思い出せないモンはいったん置いといて、街に辿り着いてからでもいいんじゃねえか?」

「うんまぁ確かに」


 言われてみればその通りである。今は思考のために立ち止まるより、歩いて街を目指す方が先決だ。


 結局二日目も街には辿り着けず、野営することにした。しかしヴィエラよ。お前絶対料理出来ないだろう。昨日から焼いた肉しか食ってないぞ。しかもちょっと傷んでるくさいし。


 三日目の昼を過ぎたくらいだろうか、視界の端に大きな建物の影がうっすらと見えてきた。そこから二時間くらい歩いたところで俺は記憶を取り戻す。


「そうか! この街道は王都とカナリアの街を繋ぐ街道だ!! 道理で見たことがあると思った」

「王都? つーと城があんのか。だったらあそこで色々情報も集められるんじゃないか?」

「うん、あと俺達の服も日本に住んでた時のままだし、変に目立つから服も買った方がいいかな」

「あぁそうか……ん? ボウズ、服を買うとは言っても俺達金なんて持ってないぞ?」

「はっ!」


 せっかく王都が目前に迫っているのに無一文であることをすっかり忘れていた。そうなると宿を取ることも出来なくなる。


「えーっと……つかぬことを伺いますが、ヴィエラさんはお金持ってたり?」

「残念だが我は金銭を必要としたことがないのでな。それにゼデンス大陸では通貨というものは浸透しておらん。よって我に期待するでない」

「ですよねー……」


 仕方ない。まずは王都の冒険者ギルドで登録をして簡単な討伐やお使いの依頼を受けて金を稼ぐしかない。


「しっかし流石に歩いて疲れたしな。俺としちゃ一回風呂に入りたいところだ」

「あ、こっちでは一般市民の間では風呂の文化ないっす。多分貴族くらいになれば館にあったりしそうですけど」

「なん……だと……?」


 あ、今イガさんのテンションがすっごい落ちた。


「風呂とはなんだ? 聞いたことのない言葉だが」

「あーそうか、簡単に言えば囲いを作ってそこに人肌より少し高いくらいの温度の湯を溜めて、その中に浸かるんだよ。まぁ湯浴みだったり行水だったりはこっちでもあるし、それののんびりバージョンとでも言えばいいかな」

「ふむ? そうなると服が濡れるだけであまり意味はないように感じるが……」

「違う違う。服を脱いで入るんだよ。それで身体の汚れを落とすのと同時に、体内の血行を良くして疲れを取る。一石二鳥の文化と言ってもいい」

「ほほう、面白そうな物もあるではないか。よし、ないなら作れば良いではないか。我も風呂に入ってみたいぞ」

「なん……だと……!?」


 あ、今イガさんのテンションがすっごい上がった。


「そうか、ないなら作ればいいんだよな! おいボウズ、とっとと王都とやらの冒険者ギルドに行って金を稼ぐぞ。それなりに稼げば五右衛門風呂くらいは作れるだろ!?」

「ま、まぁお湯を張る場所さえあれば俺の魔法でお湯も出せなくはないし……」

「よし!! そうと決まればラストスパートだ!! ほら行くぞ!!」


 異様なテンションである。流石にちょっと引いた。ヴィエラはというと、「ほほう、そんなに良い物なのか」と若干誤解されている模様。まぁいいか、俺も風呂には入りたいし。


 そうしてやたらとテンションの上がったイガさんと先頭に、俺達は大陸の名を冠する王都オルデンスに辿り着いた。


 まずは冒険者ギルドで冒険者登録、それから金を稼いでレッツ!バスロ○ン! である。


「なんか忘れてる気もするけど……」

「おーい、早く来ないと置いてくぞー!」

「あ、ちょっと待ってよイガさん、っていつの間にそんなところまで!? 早すぎ、早すぎだから!!」

「まったく騒がしい奴等よ」


 いや、ヴィエラさん、イガさんのすぐ後ろにいる貴方も相当早いですからね?

風呂は男のロマンである。桃源郷的な意味で。(ゲス顔)

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