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空気で殺気

健康的な青空の下、まったくもって不健康そうな男達は文字通り必死の命がけで頭を巡らせていた。

「……お頭ぁ、このままだと俺達本当に命が危ねえかもしれませんぜ。」

「…ああそうだな……。でもよ、このまま逃げ出したところで、無策じゃ絶対にあの小娘からは逃げきれん。」

「てっとり早くみんなで散り散りに逃げれば……。」

一人の男が追われている時の基本中の基本の常套手段を持ち出したが、彼らの頭領は首を振った。

「自分だけが捕まった時を想像してみろ、誰も助け船を出す奴がいないんだぞ……。」

ごくり…。と輪になって話す盗賊全員の唾を飲み込む音が聞こえた。

「それに何よりだ、捕まえるときに飛んでくるのはあの大砲の弾みたいな威力のパンチやキック、その上逃げ出す俺達には容赦も手加減もねえだろう。お前ら、そんなに走るのに自信あるのか……?」

ある。盗賊だから。

ただし、――――相手が普通の範疇なら。

今度は全員の顔から血の気が引く。

「や、やめておきましょう……!!」

「それがいいと俺ぁ思うぞ。」

いつのまにか口論になっている非常識主従を背景に、盗賊達は大きく溜息を吐く。そして今にも泣きだしたそうな情けない声で言った。

「でもお頭ぁ、逃げずにいるのも同じぐらい命がけなんですぜ…?!」

「おう、それよ……。」

このままでは座して死を待つという、どうしようもないアホウに向けた格言と大して変わらない状況だ。

座り込んでいる頭目は神妙な顔つきで何事か考えている。

「お前ら、俺達は何者だ?」

「は?」

突然の質問に男達は首を傾げる。

「何者かって言うとそりゃ……盗賊ってか……悪党…ってやつですかね。いや、お頭、今はそんなどうでもいい話をしてる場合じゃ……。」

「よーし。じゃあお前ら、盗賊の武器ってのは何だ……!?」

明らかに状況にそぐわないその質問に、男たちは一様に眉間に皺を寄せて訝しげに自分達の頭目を囲む。

「いや、だからお頭……。」

「いいから。」

一番頭を使えるリーダーがこの調子ではどうにもならないと思い、渋々男達は答える。

「盗賊の武器と言えば……ナイフですかね…?」

「鞭。」

「斧。」

「ブーメラン。」

「爆弾。」

「とんずら。」

「正義のそろばん!」

後ろの方、色々とおかしい。最後とかもうどう見てもウケ狙いじゃねーか。

部下のオツムの具合の悪さに、頭目も渋い顔を隠そうともせずに浮かべた。

「……違うわアホ共……。そういう意味の武器じゃねえ、一番頼りにするものって意味だ。」

「はあ。」

余計に首をかしげるばかりで男達は要領を得ない。

「もういい、まどろっこしい。盗賊の武器といやぁ、器用さ・逃げ足・慎重さ、そして何より悪賢さだろうが!!」

「始めて聞きましたぜ…。」

「う、うるせえ!常識だ常識!」

ここで大いに感心される予定だったので、冷めた反応に頭目はちょっと恥ずかしかったりする。

「で、だ!この超危機的状況を乗り切るためには、正攻法なんか使ってたら絶対に無理だ。使うのは俺達のこことここよ。」

頭目は頭を指さし、胸の中央あたりを叩く。

「頭と心を使う。つまりはまあ俺達流に言えば、どんな手を使ってもいいから思いつく限りの卑劣な作戦を考えて逃げようと?」

盗賊おれたちってもんはそれで正解だろが。敵より弱いなら後ろから。それが盗賊のケンカの仕方ってえもんでござんしょう?」

悪辣の見本のように、にやりと笑う頭目に、男達も邪な笑いを返す。

「……ハハハ、違いないですな。さすがお頭、俺達は相手のあんまりの無茶苦茶さに、脳みそってェ偉大な武器があることを忘れていたようだ。」

揃って土気色の顔をしていた男達が目に生気を取り戻す。いつでも男って単純。

「……ところでお頭、具体的にはどうするおつもりか是非教えて欲しいんですが?ちなみに奴は後ろから刺しても死なないどころか怪我一つ無いですぜ。」

咳払いとともに一応覚えはあるがイマイチ聞きなれない声が後ろの方からあがる。

「バカ、興を殺ぐような話をするんじゃねえ。大体殺すまでいかなくてもやり方はいくらでもあるだろ、が……?」

顔をしかめて声の方を振り向く頭目。そこにあった顔に見覚えがあるのは当然として、見覚えはあるがやはり馴染みは無い顔だった。

「階段から落とすだの、殺す必要はないだの、本当に頭のおめでたい連中ですわ。うちのお嬢様はゼロ距離で極光魔法を撃ち込んでも殺せませんよ。彼女を力づくでどうのこうのしたいなら宇宙人の一個師団か彼女の姉君でもつれてくるのですね。」

「ッッ~~~~~~っッッ!!??」

いつの間にか盗賊たちの輪の中に混じりこんでいた無表情メイドの姿を見つけて、飛び退くように男達は一斉に後ずさる。頭目は動くこともできず口をパクパクさせていた。

「あ、あんたいつからそこにィッ!?」

「さて?まあいつからいようとも最初から会話の内容は聞こえていたので関係ないですけどね。」

馬鹿にするように顔をそらし、肩をすくめて言い放った、男達にとっては衝撃的な一言に頭目は脂汗を流して黙り込む。

「で?どうします?やる気なら10秒でミンチ肉の山の出来上がりですが。」

今度は視線を真っ向から捉えた、感情皆無な分余計に怖いスズメの脅しに頭目は3秒で答えた。

「やりませんッッ!!!!!」

どきっぱり。である。

「よろしい。賢明ですわ。私たちはどちらでも構いませんけどね。」

不出来な生徒を見回すスパルタ教師のような、スーパー高飛車なスズメの言葉に、男達は正規軍人なみの直立不動の姿勢で応える。

軍曹殿よろしく、己の前に並んだ男たちを犬の糞を見るような目で見渡したあと、納得したようにゆっくりとスズメは告げた。

「まあ、安心していいですよ。あなたがたにも大変な朗報があります。」

「…………………………(一体どんな悪い知らせだ)。」

その手に鞭を幻視できる気分の、無言の男達にはとてもスズメの言葉を額面どおり受け取れない。額の脂汗とともに冷や汗がだらだらとその背中を伝う。

しかし。

「貴方達を実験台として使うのはやめにします。」

「………………へ?」

予想外に本当の朗報に彼らは我が耳を疑わざるを得なかった。

「今のお嬢様では所詮時間の無駄でしょう。スライム状の赤い何かが量産されるのがオチです。」

「………………………(恐ろしいことを……!)」

だがその通りだと満場一致。(ステラを除く)

ちらりとでも想像するとねばついた冷や汗がさらに止まらない。

しかしスズメの言うことを素直に受け止めると、その想像が現実にならないことになるのだ。生きてることはどんな幸福にも勝る幸運だと今だけは混じりっ気なしに思えた。

「そ、それじゃあ、俺達はこのまま憲兵に突き出されて終わりですか?」

希望をこめて頭目は尋ねた。盗賊として終わりに近い質問だとわかってはいるが、それでも憲兵の方がまだどんなにかマシだ。少なくとも彼らには自分たちの知る物理法則と常識的思考回路が通用する。

うっかりスルーしてしまったが、スズメが口にした極光魔法というものは、噂で聞くと一国軍の正規兵の精鋭法術師一個中隊クラスの結界がないと防げないとか、対魔術装甲の現役戦車を跡形もなく蒸発させるとかいう誰も見たことがない情報に尾ひれが付きまくった、一介の盗賊にとっては言ってみれば都市伝説と区別のつかない眉唾話であり、一体そんなものどこの大賢者さまが使えるんだァ?と普段なら一笑ですます馬鹿げた話だ。

イメージするなら突然頭上に巨大隕石が落ちてくるようなもので、それを生物個体で耐えるなど魔王だか何かそのへんのジョーク的なあれだろう。

あまりにも大げさなたとえだがまあ、そんなおどかしを言えるぐらい常人ばなれした不死身という意味で受け取るなら、そのぐらいはあってもあの娘は不思議じゃない。

盗賊達の人生哲学で言えばそういういわゆる化け物とはたとえその時味方でも関わりあいにならないのが一番であるので、一刻も早く一般常識の通用する世界に、可愛い自分の精神を退却させて欲しい。

ただ、スズメの口から返ってきたのは朗報を通り越して意外すぎる決定だった。

「……いえ、憲兵の類にもあなた方の相手をさせるつもりはありません。我々はあなた方を解放して差し上げます。」

「…………は?」

口を半開きにした盗賊達はスズメの言葉の意味がわからないかのようにお互いを見合わせ、そのまま風見鶏のようにスズメに首の方向を戻した。

「あなた方の罪を問わないと言っているのです。」

「「「「「―――――――――――な、何ィッッ!!!????」」」」」

呆気にとられながらも意味だけは何とか理解した盗賊達から、私設応援団もかくやの大合声が放たれた。

一拍置いて頭目が隣の男の顔をぶん殴る。

「あばばらっ!?」

っと意味不明な奇声をあげて男は吹っ飛んだ。

「―――――ッッッッ何しやがるッッ!!!?」

上下関係などかまわず殴られた男は怒涛の剣幕で頭目の胸倉を掴みあげた。無理ないが。

「い、いや、夢かと思って……。」

「アンタ実はアホなのか一応賢いのかキャラをはっきりさせろよ!!?」

だが衝撃的と言えるスズメの発表に、それ以外の男たちは喜びのあまり全国優勝を果たしたアカデミーのチームメイトかのように互いをもみくちゃにしている。

「うおおおおおおおお!!!おいスタッフ、酒持って来い酒ぇ!!ビールはどこだぁっっ!?気が利かねえ!!」

「いや、はなっからあるわけねえだろがそんなもん!!!?」

「っていうかスタッフって誰だァ!?お前の目にはまじで何が見えてんだよ!?怖えェよッ!!?」

まさに狂喜乱舞。彼らが一体何を言ってるのか当方にはまったくちっとも意味がわかりません。

ただ、そんな中頭目ただ一人だけは多少の冷静さを保っていた。

(待て、おかしい…。明らかにおかしすぎるだろが何だこりゃ……!?)

疑念を確かめるべく言い出した側の様子を観察するにしても、スズメの無表情からは何も読み取れないので、自分達がスズメに驚かされた後、こちらもいつの間にか混ざっていたステラに問う。

「あんた!本当にいいのか!?あんたにとったら俺達は初陣の獲物みたいなもんだろうっ!?そんなもん逃がしちまうなんぞ今どき糞甘ったれのボンボンでもやらないぜェ!?」

まるで解放される事が嬉しくないと言っているような頭目の言葉に、部下達から「何言ってんですかいお頭!」とブーイングが上がるが、彼から見れば部下達のそれはぬか喜びに過ぎないものなので痛くも痒くもない。

ただ、ステラの顔が自分を向いたときには二歩ぐらい後ずさった。

「……うっさいなぁ、私だって不満だけど、こっちにだって事情があるんだからしょーがないじゃん……!!」

(怖ッ――――!?)

頬を膨らませたステラは、目に入ったら石の裏のダンゴムシでも一々皆殺しにしそうな殺気を放っている。

そんなにおじさん達を殴りたかったのかい君は?と、目から汗がでそうな質問が頭目の脳裏に浮かんだ。

(……しかし、事情、事情か……。)

やはりと言うべきか、きな臭い単語が出てきたものだ。

今の言葉は、ステラには我慢して自分達を逃がさなければいけない事情がある、という意味に聞こえた。おそらくそれは……

「ただし、私達はただであなた方に自由をくれて差し上げるつもりはありません。あなた達は一般庶民に害をなす悪党。それを見逃すのは本来の私達の行動理念に反します。」

未だ興奮の醒めない男達に聞こえるようにスズメは声を張った。

その普段と違って力のある声に、内容はいまいち耳に入っていない部下達も何事かとスズメの方を見やる。

今のスズメの言葉の中にも十分重要な言葉があったが、部下たちはただただ阿呆のようにぽかんと口をあけているばかりなので、こいつらには続く言葉を待って聞かせる方が早いだろうと頭目は頭痛がしそうな思いで判断した。

「交換条件です。私達はあなた方を解放する。その代わりに、あなた方にも私達の要求を聞いてもらいます。」

「やっぱりかよ……。」

予想通りの内容に頭目は座り込みたい気分だった。

「こ、交換条件……?」

言葉の響きと、自分達が自由を得る為にはもうワンステップ必要だという事実に、盗賊達に一回ぬか喜びさせられた分余計にどんよりした空気が漂う。

「当然だ……。盗賊が何もせずに、何のリスクも負わずに何かを得ようとしてどうする……。そんな反吐が出るような甘ったれた考えから一番遠いのが俺達だろうが。」

部下達にも聞こえないほど小さく、誰に言うでもなく、頭目は呟いた。

「安心していいですよ。私達からすれば今回は非常に良心的な要求ですから。」

再びやる気のなさそうな力の抜けた声に戻ったスズメが言った。

しかし、スズメのそういったポジティブな発言が全く当てにならないという事を、既に男達は肝に銘じていた。

「いや、もうそういう逆サプライズな前フリはいらないんで、さっさと用件を言っちゃって下さい。」

頭目に次ぐ副リーダーらしき、まだ若めの男が先を促す。

「そうですか……。では。」

鬼が出るか蛇がでるか、恐怖しか感じられない言葉の続きに、男達が唾を飲む。

「我々の要求は、しばらくの間あなた達のアジトで面倒を見てもらう事です。」

「………へ?そんだけ?女の子一人と妖精一匹ぐらいなら……」

「いや、待て、よく考えろ……?」

言葉の軽い響きに拍子抜けした男が楽々できる内容だと考えかけたのを、隣の男が諫める。

冷静になって頭を働かせ男達は気づいた。

(そうか…っ…!面倒を見る相手が、……この無茶苦茶なコンビなのか……!?)

しばらく平穏な生活の望めそうにない結論に、青ざめた男達。想像すると今のうちからもう重い疲労を感じる。

「そんなに悩む必要がありますか?そう難しい要求ではないでしょう。」

「………いやー…どうだろなー……?」

無感情過ぎて皮肉かどうかもわからないスズメの言葉に返した男の呟きが、全員の思いを代弁していた。

確かに捕まることを考えたら比ぶべくもないのだが、……ないのだが、しかし……。この二人を交えた生活を考えると……。

踏ん切りがつかないままぐったりとしている男達の中で、頭目ただ一人が鋭い目をして口を開いた。

「一つ聞いてもいいか?」

「……何でしょう?」

突然の質問にも当然の如く無表情なスズメだが、声からは少しだけ意外そうな雰囲気を感じた。(気がする。)

「どうしてあんた達はわざわざ俺達を見逃してまで俺達の所へ転がりこもうとするんだい?」

「私達、既に路銀が尽きてしまっていまして。街に着いても生活の目処が立たないのですよ。」

「嘘だね。」

スズメが言い終わるかの所に間髪入れず、頭目は言い切った。

「俺達の首には賞金がかかってる。今いくらだったかは知らねえし、そんなに高くもなかったはずだが、これだけ雁首揃えりゃしばらくの宿代ぐらいにはなるだろう。そうなりゃあ冒険者ギルドに行って依頼を受けさえすれば、そこの嬢ちゃんの力なら幾らでも討伐依頼の類をこなせるはずだ。」

「あなた方の首に賞金がかかっているとは知りませんでした。それにしては弱すぎますし、何分わたくしども、田舎者ですので。」

スズメの皮肉にも、頭目は涼しい顔で続ける。

「そうかい?ここより田舎ってなるともうほとんど人間領じゃないようなとこだがな?まあいい。それじゃあ今からあんたらは、俺達と取引する必要もなくふん縛って最初の目的通り憲兵に突き出しゃいいわけだ?」

(あ、煽ってどうすんですか、お頭ァッ……!?)

男達から悲鳴じみた叫びが上がる直前、開いた口から声が出るギリギリのタイミングで、副頭領の男が部下達を手で制した。

「……………。」

結果、スズメの沈黙が頭目には答えとして返ってくる。

「どうやらそれでもあんた方はそうしたくないらしいね?何でかなァ?」

いつの間にか頭目の口元には、盗賊の頭領に相応しい嫌らしい笑いが浮かんでいた。

「かっかっか、聞くまでもねェなあ。街に行きたくない連中が盗賊のアジトに転がり込もうなんて理由なんぞ、今も昔も一つしかねェ。十中八九そういう奴らは何かに追われてんだよ!見つかっちまったら致命的な何かになあ!?」

獲物を追い詰める蛇のような目がスズメを見据える。

「違うかい?妖精さんよォ。」

「答える必要がありますか?」

確信を持った頭目の推測だったが、スズメは表情も答えも涼しいものだ。

むしろ頭目にはその顔が不敵な笑みを浮かべているようにすら思える。

「いーや?だがこういう前提が成り立つとすると俺達の交渉のやりやすさが大きく変わってくるんでねぇ?」

スズメの方は表情が変わらないが、ステラがひたすら黙ってこっちを睨んでいるので恐らく自分の推測は正しいのだろうとも思う。

いや、スズメが会話に加わってからは、ずっと不満そうに殺気をこめて自分たちをにらんでいるので気のせいかもしれないが。

しかしだとするとこの交渉において懸念するべき心配が一つ消えるのだ。

「ただあんたらの言い分を信じて家に入れちまうと、あんたらの気が変わった瞬間アジトの場所や内装まで通報されちまう危険がある。そんな事をやらかすぐらいならここで捕まった方がなんぼかマシだ。だが、あんたら自体が誰かに追われてて、目立つ事をしたくないってんなら話は別だ。盗賊のアジトは絶好の隠れ家だ。そうそう手放す意味がないだろう。」

頭目はにやりと会心の笑みを浮かべた。

「これでようやく互いの手札が釣り合い、お互いに利益の見込める対等な取り引きになったわけだ。まあ、それでも力関係を考えるとあんたらの方が結局大分有利な感は否めんがね。このまんま憲兵に突き出された時点で壊滅の危機なんだ、よしとするさ。」

スズメは聞いている間瞳を閉じていたので、余計に感情のない人形のようだった。

しかし、その言葉は賛辞を送っているようにも取れた。

「ふむ。一介の盗賊程度にしては意外にまともな取り引きになりましたか。もっと馬鹿だと思っていたのでアジトも役に立つかは信用できないと思っていましたが。」

ただやはり、瞳を開いた彼女の顔には、一片の容赦のようなものは見受けられない。

「で?私達はまだ答えを聞いていませんが?」

「こちらにも少なくない利がある。受け入れん訳にはいかんだろう。」

握手こそないが、二人の曲者の利害が一致した瞬間だった。



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