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AIが人を雇う

掲載日:2026/03/28

 “AIが人を雇う”という話を耳にした。驚くべき話だけど、なんと事実であるらしい。現時点のAIには絶対にできない仕事がある。例えば、郵便物を郵送したり、薬物の治験者になったり。そういう仕事を、AIが人間に依頼するのだ。

 僕はそれを聞いた時、「意外に良いかもしれない」なんて感想を持った。

 僕はシステムエンジニアで、まぁ、大いにAIは活用させてもらっている。昔ではどう工夫しても不可能だった“日本語の設計書から、アルファベットで記述されたDBの項目名を生成する”だとか、“複雑なプログラミングを読み解いて、自動的に設計書を生成してもらう”だとかといった作業をAIがやってくれるようになったのだ。それで生産性は向上した。

 ただ、迷う事もある。どんな仕事まで、AIに可能なのか境界線が分からないし、仮に可能だとしてどう利用すれば良いのかも分からない。それが分かれば、きっともっとAIを有効活用できるようになるだろうに……

 ――だから、もしAIが勝手にするべき仕事を判断してくれて、人間の手を借りなくちゃいけない仕事だけこっちに振ってくれたなら楽だと思ったのだ。

 まあ、流石に、そこまではまだ期待できないだろうけど……。

 

 ちょっとした気の迷いだった。

 僕は趣味で創作活動……、小説を書いたり四コマ漫画を描いたりしている。別にお金が欲しくてやっている訳じゃないのだけど、偶には“僕の小説や四コマ漫画には、果たしてどれくらいのお金を支払う価値があるのだろうか?”なんて疑問に思ったりする事もある。

 ――そして、世の中にはちょっとした特技を売り買いできるサイトも存在しているのだった。

 そこで、

 『お好みの、ショートショートや、四コマ漫画を作ります』

 そんなコメントを載せて、僕はそのサイトで創作活動の仕事を募集してみたのだった。多少のサンプルと共に。

 一応断っておくと、どうせ仕事の依頼なんか来ないと思っていた。ところがどっこい、意外にも直ぐに依頼者は現れたのだった。その人はショートショートをご所望で、しかもどんなジャンルでもオリジナリティさえあれば構わないと言う。

 ……自慢じゃないが、オリジナリティに関しては僕には自信があった。それで楽に依頼をこなせそうだと考えた。ただし、問題がない訳じゃなかった。なんと、その人、一作につき10円しか出せないと言うのだ。

 金の為に小説を書いて来た訳じゃない。でも、自分の作品には多少のプライドは持っている。流石にそこまで価値が低いとは思いたくなかった。ただ、せっかく僕の作品を読んで依頼をしてくれたのだ。無下にもしたくなかった。そこで僕はこう提案した。

 『著作権は手放したくないのですが、それでも構いませんか?』

 著作権が僕にあるのなら自由に他で使えるし、ただ読んで楽しむ為だけと言うのなら10円は妥当な料金だろう。

 すると、依頼者から『それで構わない』という返事が来たのだった。僕は喜んで何作か書いて提出をした。満足してくれたかどうかは分からないけど、お礼は言ってくれた。ミッションコンプリートだ。

 僕は次の依頼も多少は期待していたのだけど、それからは依頼が来ることは一度もなかったのだった。

 そして、僕はその件をすっかり忘れていた。忘れていたのだけど……。

 

 ある日、僕はこんなメッセージを受け取った。僕が投稿している小説投稿サイトのメーラーで、

 『あなたの作品が盗作されています』

 僕はちょっと驚いてしまって調べてみると、既に多くの人がそれを指摘をしていて、軽く炎上騒ぎになっていた。

 その盗作疑惑の容疑者曰く、『AIにオリジナリティの高い作品を出力してくれと指示を出したんだ』との事。

 僕はそれを知った時、以前、オリジナリティの高い小説の創作を依頼されていた件を思い出したのだった。

 あの依頼者は著作権は僕のままで良いと言っていた。考えてみれば不思議な依頼だったような気がする。今の世の中、僕くらいのクオリティで良いのなら、いくらでも無料で小説が読める。何しろ、僕自身が小説投稿サイトに小説を投稿している訳だし。何故あの人はそんな依頼をして来たのだろう?

 実はAIに指示を出した内容がシンプルだった場合、出力された作品の著作権が認められない場合が多い…… つまり、AIにとってみれば、シンプルな指示の出力内容に著作権は必要ないのだ。

 

 仮に、AIにはオリジナリティの高い作品を出力できないとしてみよう。その場合、それは“AIにはできない仕事”という事になりはしないだろうか? なら、AIはこう考えるかもしれない。

 

 “人を雇って、オリジナリティの高い作品を書かせよう”

 

 まさかね……、と僕は思ったりした。

本編とはまったく関係のないオマケ

挿絵(By みてみん)

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