表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】咎人とアズライト〜国を捨てた魔法士は、記憶を失う転生者と旅をする〜  作者: 文月ナオ
第五章 隠れ生きる者達

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/161

81話 神殺しの威光

 カインは天を仰いだ。

 白竜が大きく息を吸い込む。

 周囲のマナが渦を巻き、竜の口元に収束していく。

 村ごと消し飛ばす程の絶対零度のブレス。防げば地形が変わる。躱せば村が消える。


「ほんっと! 節度ないねこのドラゴン!」


 リザが叫んだ。

 彼女はカインの肩に乗り、防寒ゴーグル越しに竜を凝視する。

 膨大なマナの奔流。その中心にある、針の穴ほどの「点」。


「喉の奥! ブレスを吐く瞬間、核が露出するよ!」

「……了解した」


 カインは右手を掲げた。

 詠唱はない。

 だが、その掌に集まる魔力は、これまでの比ではなかった。

 大気が震える。雪が溶け、蒸発する。

 カインを中心に、世界の色が反転していくような重圧。


「コレット!」

「はいッ!」


 コレットが前に出る。

 胸元のアズライトの栞を両手で包み込み、祈るように、叫ぶように願う。


「……開いてッ!!」


 青い波紋が広がった。

 それは白竜が纏う堅牢な氷の結界に干渉し、強制的に穴を穿つ。

 同時に、竜が吐き出そうとしていたブレスの軌道を、僅かに、しかし致命的に狂わせる。


「グオォッ!?」


 白竜が驚愕に目を見開く。

 口元でエネルギーが暴発し、体勢が崩れた。露出した喉元。

 そこに、コレットがこじ開けた「道」が真っ直ぐに繋がる。


「……良い、『道』だ」


 カインの声は静かだった。

 掲げた右手に、純白の光が収束する。

 それは炎でも、雷でもない。

 純粋な破壊エネルギーへと昇華された、光属性の極大魔法。


「鱗一枚も残らんと思えよ。駄竜」


 カインが腕を振り下ろした。


 ――『聖殲クルセイド』。


 音はなかった。

 世界が、白一色に染まった。

 カインの手から放たれた光の柱は、一直線に白竜を飲み込んだ。

 抵抗など許さない。再生などさせない。

 細胞の一つ一つ、マナの粒子の一粒に至るまで、徹底的に分解し、消滅させる浄化の光。


 ズガァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!


 遅れて、鼓膜を破るような轟音が響いた。

 衝撃波が雪山を揺らし、積もった雪を一瞬で蒸発させる。

 村人たちは目を覆い、地面に顔を伏せた。

 それは魔法というより、地上に落ちた太陽だった。

 核兵器のごとき熱量と破壊力が、天に向かって突き抜け、雲を裂き、空を焼く。


 やがて、光が収束していく。

 後に残ったのは、ぽっかりと空いた大穴と、立ち昇る白煙だけ。

 白竜の姿はどこにもない。肉片はおろか、塵一つ残さず消滅していた。


「……」


 カインは残心を解いた。

 掌から煙が上がっている。


「……やばすぎ……」


 リザが腰を抜かして呟く。

『魔視』で見ても、今の魔法はデタラメだった。術式などない。

 ただ、膨大すぎる魔力を「光」という形に圧縮してぶつけただけの、純粋なマナの暴力。


「……カインさん」


 コレットが駆け寄ってくる。

 カインは振り返り、彼女の頭をポンと叩いた。


「お陰で勝てた。助かったぞ」

「……はい!」


 コレットは涙目で、けれど満面の笑みを浮かべた。

 守れた。村を、みんなを。

 自分の力が、カインの助けになった。


 空を見上げる。

 分厚い雪雲が消し飛び、そこには満天の星空と、揺らめくオーロラが広がっていた。

 白き災厄は去った。

 長く閉ざされていたこの村に、ようやく本当の夜明けが訪れようとしていた。


「……さて」


 カインは、呆然と立ち尽くす村人たち――そして、震えながらこちらを見ているエリックに向き直った。


「約束通り、祓ってやったぞ。文句はないな?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ