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【完結】咎人とアズライト〜国を捨てた魔法士は、記憶を失う転生者と旅をする〜  作者: 文月ナオ
第四章 魂の追求者

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68話 理不尽な侵略

 第零区画の最深部への入り口は、カインとリザが到達した場所よりもさらに地下。

 幾重にも張り巡らされた結界と、物理的な鋼鉄の扉で閉ざされていた。


「……ここか」


 カインは扉の前に立ち、無造作に右手を掲げた。

 詠唱はない。

 ただ、圧倒的な魔力を一点に収束させ、解き放つ。


風杭ウィンド・パイル


 ドォォォォンッ!!


 轟音と共に、鋼鉄の扉が飴細工のようにひしゃげ、吹き飛んだ。

 爆風が地下通路を駆け抜け、待ち構えていたキメラたちを紙切れのように吹き飛ばす。


「行くぞ」


 カインは歩き出した。

 走る必要すらない。

 彼の前には、敵など存在しないも同然だからだ。


「相変わらずデタラメだね」


 リザが呆れたように呟き、カインの背後に続く。

 その横には、コレットもまた、強い眼差しで前を見据えていた。

 彼女の胸元で、アズライトの栞が青く輝いている。もう、怯えるだけの少女ではない。

 自分の足で、自分の意志で、戦場に立っている。


 第零区画の最深部は、異様な光景だった。

 無機質な金属の通路に、培養槽が並び、その中には得体の知れない肉塊が浮かんでいる。

 ガリレオの実験の成れの果て。

 命を冒涜する光景に、カインの眉間に皺が寄る。


「……殺せ! 侵入者を排除しろ!」


 奥から、武装した研究員たちが現れた。

 彼らもまた、自身の体を機械化したり、魔獣の因子を埋め込んだりした「強化人間」だ。

 魔法と科学の悪魔合体。彼らが一斉に、カインに向けて魔法や銃弾を放つ。


 だが、それらは全て、カインに届く前に消滅した。


術式乖離コード・デタッチ


 魔法は霧散し、物理攻撃は風の障壁に弾かれる。カインは足を止めず、ただ指先を振るった。


氷結界アイス・バインド


 パキィンッ!


 一瞬にして、通路全体が氷の世界へと変貌した。

 襲いかかってきた研究員たちが、足元から凍りつき、絶叫する間もなく氷像と化す。

 殺しはしない。だが、二度と動けないように完全に無力化する。


「……ひッ、ひぃぃぃッ!?」


 生き残った一人が、腰を抜かして後退る。

 カインはその男の前に立ち、冷徹に見下ろした。


「ガリレオはどこだ」

「最、最深部の……制御室に……!」

「そうか」


 カインは男を無視して通り過ぎる。

 リザとコレットも、氷漬けになった異形たちを悲しげに見つめながら、後に続いた。


「……ひどい」


 コレットが呟く。


「こんなことのために、魔法が使われるなんて」

「ああ。だから終わらせる」


 カインの声は静かだった。

 だが、その奥には沸々とした怒りが煮えたぎっている。

 魔法は、人を幸せにするためにある。

 かつて、荒地を花畑に変える魔法を見て感動した時のように。

 誰かを傷つけ、命を弄ぶためにあるのではない。

 その信念を踏みにじるガリレオの所業は、カインにとって許しがたい冒涜だった。


「……急ぐぞ」


 カインは歩調を早めた。

 この奥に、元凶がいる。

 そして、ジークが残した「答え」もまた、そこで待っているはずだ。

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