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【完結】咎人とアズライト〜国を捨てた魔法士は、記憶を失う転生者と旅をする〜  作者: 文月ナオ
第三章 【追憶編】黄金の姫

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幕間 異世界で剣聖として無双し突然国を裏切っちゃったけど守るべき存在を見つけたので経験と実力を活かして異世界剣聖ハーレム無双したいと思います。

 ――時は少し遡る。王城崩落の直後。


 ジークは、気絶したアトスとセレーナを両脇に抱え、崩れゆく瓦礫の山を駆け下りていた。

 二人はボロボロだ。特にアトスは精神の摩耗が激しく、いつ目覚めるかも分からない。

 早く安全な場所へ運ばなければ。

 ジークがそう思考を切り替えようとした、その時だった。


 トクン……。


 耳鳴りかと思った。

 爆音と崩落音が轟く中で、それはあまりにもか細く、儚い音だった。

 だが、ジークの耳は聞き逃さなかった。


 転生時、神に願って手に入れた「強靭な肉体」。

 本来はただ単純にかっこよくてロマンがあるというだけの理由で強力な魔法や、派手な力が欲しかったが、魔法の存在しない日本という国からの転生。転生先には転生前の肉体の情報が強く反映され、転生後でもマナを持たない身体で生まれてくることを理由に魔法関連の特権を得ることを拒否された。

 仕方なく選んだ最強の身体。

 だが、それに付随する超人的な五感が、瓦礫の深く底から響く、命の音を拾い上げたのだ。


「……マ?」


 ジークは足を止め、抱えていた二人を安全な岩陰にそっと下ろした。


「ちょい待っててな、お前ら」


 寝ている親友たちに短く告げ、ジークは踵を返した。

 崩落現場へ。地獄の底へ。

 常人なら即死する濃度のマナ溜まりの中を、マナを持たぬ肉体だけで突き進む。


 トクン、トクン……。


 音は地下の最深部、玉座の間の真下あたりから聞こえてくる。

 ジークは無心で瓦礫をどかした。

 巨大な岩を素手で砕き、鉄を捻じ曲げる。指先が裂け、血が流れるが、痛みなど感じない。

 ただ、その音が消えてしまわないことだけを祈った。


 やがて。

 分厚い石板をどかせた先に、わずかな空洞があった。

 そこに横たわる「それ」を見て、ジークは目を見開いた。


「……マジで……?」


 それは、奇跡と呼ぶにはあまりに凄惨で、けれど確かにそこに在る「希望」だった。


          ◇


 ――それから数週間。


 アトス達が運ばれた秘密基地とは全く別の場所にある、ジークが誰にも言わず内緒で作っていた、通称「秘密基地Ver.2」。

 その部屋は粗末ながらも生活に必要な家具が揃えられ、温かなランプの灯りが揺れていた。


「……作っといてよかったぜ〜、秘密基地Ver.2」


 ジークは椅子に深々と座り込み、安堵の息を吐いた。

 その視線の先には、ベッドに腰掛け、窓から差し込む月明かりを浴びている人物がいる。


「でも、良かったのか? あいつらに言わなくて」


 ジークの問いに、その人物は静かに首を横に振った。


「……いいの。知れば、彼らはまた『私』という存在に縛られてしまうかもしれないから」


 鈴のような、けれど芯の強い声。

 彼女は、自分の腹部に手を当てた。そこには傷跡が残っているが、今は丁寧に包帯が巻かれている。


「彼らには、自由になってほしいの。……新しい人生を歩んでほしい」

「いや、俺は? 俺も一応、三人のうちの一人なんですけど」


 ジークが不満げに口を尖らせる。


「……お兄ちゃんはいいの。脳天気なんだから!」


 彼女は悪戯っぽく笑い、ジークの方を向いた。

 その呼び名に、ジークは苦笑して頭を掻いた。


「そりゃないって……労わってくれよ〜」


 窓から夜風が吹き込み、彼女の髪をさらりと撫でた。

 月明かりに照らされたその髪は、夜闇の中でも鮮烈な黄金色に輝いている。

 まるで、夜に差す一筋の陽の光のように。


「お兄ちゃん、まずはどこに行く?」

「俺は、真剣に考えた。もう、この国という俺を縛るものは無いのだ。つまり俺は……自由フリーダムッ!」


 ジークは立ち上がり、高らかに宣言した。


「俺に足りないものはなんだ? 金か? 金はまあないが。

 実力は? 足りてる! ほぼ最強、なんなら無敵に近い!

 ビジュアル? どこからどう見ても俺はイケメンだ。異論は認めん。

 背が高い、声が渋い、髪がツヤツヤ、良い匂いがする、頭の形がいい感じ、頼り甲斐がある、兄貴肌、優しい、思いやりがある、気が利く、いただきますとごちそうさまでしたが言える、唐揚げにレモンを勝手にかけない、なんかこう……良い雰囲気を出してる。

 持っているものばかり!! だが……そんな完璧超人な俺でも持ってねぇもんが……あんだよな……。

 何か分かるか?」


(今言ったこと……ほとんど持ってないと思うんだけど……)


「そう! 俺が持っていないもの、それは……【んLoveラヴ】」


 ジークは唇を噛んでねっとりと言う。


「……んらぶ?」


 ジークが前髪を弾いてなびかせる。


「探しに行くぜ。俺の妻たちを」

「……たち?」

「……んハーレムッ!! そう! ここから始まるんだぜ!! 俺の異世界転生ハーレムライフがなぁ!!」


 ジークは両手を広げる。

 金髪の少女はクスッと笑う。


 二人の旅にはどんな困難が待ち受けているのだろうか。

 それは、アトスもセレーナも知らない秘密の物語。

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