第6章
「おいメビル!開けろ、俺だ!」
ジェダは、古びた小屋の前で、何度も呼ぶ。
「クッソあいつ、肝心な時に…!」
「ガチャ」
「はーい。誰ですかー?」
ジェダを出迎えたのは、子供のような見た目の竜の魔物だった。
「ミサキを何とかしてくれ!早く!」
「おやおや、誰かと思えば、ジェダじゃあないか。」
「お前何してたんだよ!?何度も呼んでるのに出なかったじゃねぇかよ!」
「特に何も。僕はいつも暇なんだよねぇ。」
「んなことはどうでもいい!早くミサキを…!」
「なんだ。怪我してるじゃないか。このままだと死んじゃうねぇ。」
「マジかよ!?おい、何とかしてくれ!」
「君は昔から、僕ならなんでも出来ると思ってるでしょ。まったく…。僕にだって出来ないことぐらいあるんだよ?」
「じゃあ無理なのかよ…!?」
「まぁ僕には無理だが、どうしようもない訳じゃない。とりあえず上がっておくれ。」
「………。」
ジェダはメビルの家に上がった。
部屋は散らかっていて、足の踏み場もない。そして、部屋の奥にはエルフの子供がいた。
「おーい。いきなりだけど、この子を頼んだよー。」
「えぇー?せんせーまたー?めんどくさいなー…。」
「そう言わないでおくれよ。僕だって客人の相手をしなければならないんだからさ。」
「しかたないなぁー。もう…。」
「…ところでジェダ、アイリスはどうしたんだい?いつも一緒にいるじゃないか。」
「?」
「君達が『アイ』と呼んでいる人間のことだよ。ほら、少し前からついてきてただろう。」
「………っ!クッソ、あいつ…!」
「どうしたんだい?話しておくれ。」
ジェダは、勇者にとられてしまったこと。そして、勇者から逃げてきたことを話した。
「そう、負けたんだね。らしくないじゃないか。どうしたんだい?」
「アイちゃんに危害が及ぶと思って、アレを使えなかった…。」
「あれがなくたって、君は充分戦えるはずだけどねぇ。それに、君の魔法は炎だけじゃないだろう?」
「うるせぇ。お前に言われてもなぁ、励まされてるようには聞こえねぇんだよ。」
「すまないね。でも私は戦えないし、君の方が強いのは確かだ。」
「でも俺みたいな半端者は………
「おーい。せんせー、とりあえず処置を始めるねー。」」
ジェダの話を遮って、奥にいた子供が声を発する。
「分かった。ありがとねーいつも。」
「おいメビル。ずっと気になってたんだが、あいつは誰なんだ?」
「ああ。そういえば君は知らないんだったね。彼はルキアっていってね。回復魔法の使い手なんだよ。」
「回復魔法!?ってことは、あいつも王族の血を引いてるのか!?」
「たしかに、回復魔法は魔王の特権だね。でも、彼は王族じゃないけど、回復魔法を使えるんだ。」
「おい、どういうことだ?何で使えるんだよ。」
「彼が上位種だからだよ。結合によってうまれた魔法が回復魔法だったわけなんだ。」
「ちょっとまて…。何を言っているか分からないんだが…。」
「やっぱり分かんないよね。だったら説明してあげよう。まず上位種についてだけど…。」
「なんとなく知ってるよ。たまに生まれる、他よりも優れた魔物…だよな。」
「一般的にはそう思われているけど、実際は全然違うよ。」
「どういうことだ?」
「上位種っていうのはね、主に2種類に分けられるんだ。まずは純血の上位種。ルキアはこっちに属する。」
「純血ってことは、もう片方は、他種族との混血だったりするのか?」
「さすがだね、そのとおりさ。でも、混血の魔物が、必ずしも上位種として生まれるわけではないんだ。ほとんどの場合は、どちらの種族よりも衰えていたり、そもそも生まれなかったりする。それでも運の良い子供は、上位種として生まれることがある。」
「上位種ってのは、他の魔物とどう違うんだ?」
「上位種の基準は、『肉体か魔法が他のものよりも優れていること。』だね。結構単純なんだけど、かなり生まれる確率は低い。でも純血の場合は、混血よりもはるかに確率が高い。」
「なぜだ?」
「魔法融合が発生しやすいからだよ。2つの魔法が混ざり合って、新たな魔法が生まれる。それが魔法融合で、似た性質をもつ魔力ほど、混ざりやすい。」
「なるほどな。じゃあ、俺はどうなんだ。」
「君は充分基準を満たしていると思うよ。でも、2つの魔法が混ざらずに一つ一つとして成り立っているのはかなり稀だと思うよ。」
「そうか……でも、俺は…。」
「せんせー?何話してるのー?」
(あいつ、また入ってきやがったな…。)
「いやー彼が少しお馬鹿さんで、上位種のことを知らなかったらしいからさ、教えてあげてたんだ。」
「お前なぁ…。俺は馬鹿じゃねぇよ?」
「何を言っているんだい?知らなかったじゃないか。」
「まぁそうだが…。あ!ミサキはどうなったんだ!?」
「………忘れてたんだね。まぁ、ルキアに任せておけば大丈夫だよ。」
「………本当か?」
「大丈夫だよ。ミサキは私が助けてあげるから。」
「………。」
それから10分ほどたった。
「せんせー。やっと終わったよー。」
「そうかい。ありがとね、あんな見知らぬ子供を助けてくれて。」
「どういたしまして…。だね。」
「なぁ、本当にミサキは大丈夫なのか?」
「当たり前だよジェダさん。私が治療したからねー。」
「おい、何で俺の名前を知っているんだよ…?」
「せんせーが名前を呼んでたからだよ。あと、いつもあんたの話をしてたからね。」
「…そうか。ところで、ミサキは?」
「心配ないよ。もう少しで目を覚ますとおもうから。」
それを聞いて、ジェダは少し安心した。
その頃、アイは小さな部屋の中で目を覚まし、勇者との言い争いをしていた。
「ここはどこなの!?早く出してよ!」
「無理だ。悪いが、君には人質になってもらうよ。」
「なんで!?私は何もしてないのに!?」
「正直、私も心が痛むよ。…でもね、君をうまく利用すれば、奴らを仕留めることができるのさ。」
「………させない。そんなことさせるわけない!」
「だが君に何ができる?私を倒すか?…無理に決まっている。だから、おとなしくここで待っていなさい。」
「…………。」
「じゃあ私は失礼するよ。そのうち、食事を用意するから。」
そう言うと、勇者はどこかへ行ってしまった。
(必ずここから逃げ出さないと…。まだ、ジェダさん に言わないといけない事があるから…。)
続く




