第3章
ミサキ一行は、目指していた町が滅びた事により、行く当てが無くなっていた。
ジェダが遠くでなにやら機械らしきものをいじっている。
「ねぇ、なにやってんの、ジェダ。」
「あぁ、これか?これは魔力式端末っていってだな、いろいろな情報が見られるんだ。こいつで今次の目的地を調べているんだ。」
「ねぇ、どこ行くの?不安だよ…。」
「あ、アイちゃん。次はな、君が住めるような町を探そうと思うんだ。ずっと旅をしているなんて、耐えられないだろ?」
「うん、でも受け入れてくれるのかな…?」
「何でそんなに弱気なんだよ。心配しなくても俺らがいるから大丈夫だ。」
「う、うん。ありがとう。」
「へへっ。」
「ねぇジェダ。ちょっとこっちに来て。」
「ん?なんだよ。今さらビビってんじゃねぇだろうな?」
「そんなんじゃないから。」
ジェダはミサキのところへ向かう。
「ねぇジェダ。何で人間にそんなに親切なの?他の魔族とは接し方が全然違うじゃんか。」
ミサキの言うとおり、ジェダはアイには誰よりも優しく接していた。ミサキよりも。さらには魔王よりも。
「ん?何の事だ?俺はいつだって皆の味方だぜ。だから甘やかしてなんかねぇよ。」
「いや、誤魔化しても無駄だよ。ジェダが嘘をついたって、僕には分かるんだから。それにジェダ、最近元気ないし、何か隠しているんじゃないの?」
「はぁ、まったく。お前はいつも余計なことに首を突っ込んで、バカみたいだな。でもそうさ。俺は今までお前に隠してた事がある。」
「やっぱりそうなんだね。だったら聞かせてほしい。ジェダの悩みを。」
「はぁ、仕方ねぇな。じゃあ話すぜ。」
今からおよそ120年前、俺は卵から孵った。
竜の魔物は、基本卵から生まれるのだ。
昔の彼には、今のように角や尾はなく、人間と見比べても、見分けがつかないような見た目だったらしい。
生まれたばかりの俺は、とても弱く、親もその場に居なかったから、一人で大地を彷徨っていたらしいぜ。そんな俺を拾ったのは、人間の少年だった。
彼の名は、「シュウ」。後から聞いた話だが、あいつは、病気の母のために、薬草を採りに来たんだと。
「こんなところに子供がいるじゃないか。キミ、大丈夫かい?」
「ばぶー?」
「あ、そうか。まだキミは喋れないんだな。こうして見てると、なかなかに可愛い子じゃないか。家まで連れていってあげよう。しかし、誰がこんな酷いことを。この子には何の罪もないのに。」
シュウは幼い魔物を抱え、家までの道のりを行く。
「あ、そうそう。名前を付けてあげなきゃね。
うーん、そうだなぁ。とりあえず、『ジェダ』でどうかな?」
「ばぶー?」
「ははっ、ほんと可愛いなぁ、キミは。今日からキミは僕の弟だからな。」
シュウは家にたどり着く。早速あいつは、母親にジェダの事を伝える。以外にも、母親は温かく迎えてくれた。
「良かったね、ジェダ。キミはもう独りじゃないよ。」
「ばぶー。」
それから、しばらくは平穏な日々が続いた。
95年前。
俺はもう25歳。その頃俺は、今のように角や尾が生えてきていた。そのときからだろうな。俺が、自分が魔物だと、他と違うと気付いたのは。だが、村人達はそんな俺を否定することなく平等に接していた。魔王と勇者の功績もあったのだろう。そして、あの日も俺は、いつものように村の子供と遊んでいた。
「タッチ!へへっ、ジェダ兄ちゃんが鬼だね。」
「くっそー、覚えてろよお前!許さねぇからな!」
「へへーんだ。捕まえてみろー。」
「後悔すんじゃねぇぞ!」
子供達の笑い声が響き渡る。平和な時間。こんな時間が永遠に続けばいいと思ってた。だが、
「ゴオォーーーー!!!」
「なんだ!?」
一瞬にして村は炎に包まれた。その時俺は、反応できなかった。だが、反射で子供達をかばった。
なぜか、俺には炎は効かなかったんだ。きっと、俺が炎を使うからだろうな。
「なに!?怖いよジェダ兄ちゃん!」
「大丈夫だ。俺が守ってやるからな。」
そのとき、目の前に俺の恩人であるシュウが現れたんだ。
「ジェダ、大丈夫か!?」
俺よりも10も年上だったからな。俺よりも安心できるからか、子供は皆あいつの所へ行ってしまった。
「おい、お前ら!俺から離れるな!」
しかしもう遅かった。あいつらは炎に焼かれて死んでしまったんだ。俺は、あいつらを守れなかった。
「あ、あぁ…おい、大丈夫か!おい!返事をしろ!おい!」
「もう無駄だよ!あいつらは死んだんだ!」
シュウが涙を流してこちらに訴えていた。しかし、そんなことを気にしている余裕はなく、俺は子供達に訴え続けた。でも、やはり返事は無かった。
「くそっ、何で………!」
「分からない。でも今は逃げよう。ジェダ。」
その言葉を聞き、俺は逃げる決意をした。その時だったんだ。
目の前に、竜が現れた。一目で分かった。アイツがこの事件の黒幕だと。
「おお、やっと見つけたぞ。混血の竜よ。」
「なんだお前、俺の事を探しに来たのか……?」
「あぁ、そうだ。人間どもに騙されているお前を救いにな。」
「どういうことだ!彼らは何もしていない!」
「あぁ、可哀想にな。こんな村、焼き尽くして正解だった。」
「お前、なにを言っているんだ…!あいつらは何もしていない!それどころが俺を助けてくれたんだ!あいつらが俺を騙しているわけない!」
「あぁ、まだそんなことを。何度も言うがお前は騙されている。魔族は本来、人間よりも優れた生物なのだ。つまり、魔族の在り方は、『共存』ではなく『支配』なのだ。支配されるだけの生き物に同情をするんじゃない。」
「なに言ってるかわかんねぇよ…!お前らはそうやって、こいつらの笑顔を奪うのか…!そんなの、許すわけねぇだろうが!」
「はぁ、そうか。お前はもうすっかり人間に染まってしまっている。これは魔族としての在り方を叩き込まないとな。」
「黙れ。誰がお前などに…!」
その時、シュウが言ったんだ。
「ジェダ。お前のせいでこうなったんだ。認めろよ。お前さえいなければ、こんなことにはならなかったんだ。だから、今すぐソイツと一緒に死んでくれ。頼む、罪を償ってくれ。」
そう言うとあいつは俺に剣を向けてきたんだ。
あいつは俺のほうを、鬼のような目で睨んでいた。
そして、あいつが俺に斬りかかった瞬間、あいつの体は、全て消し炭になっていた。
その時。俺の味方はどこにもいないと、信じていたものにも見放されたと分かった。そして、どんなに大切なモノも一瞬で消えてしまうのだと。俺のなかで何かが壊れた気がした。その後、俺の目の前は蒼い炎で覆われた。その後の記憶はない。いや、覚えていられない程の出来事だったんだろうな。
目が覚めると、魔王城の独房に閉じ込められていた。正直どうでも良かった。生まれてこなければ良かった命なんだからな。3日ほどは放置されていたが、ある日突然独房を出るよう命じられた。
仕方なく出てみると、そこにはあん時の竜がいた。で、ありきたりだが、ソイツに働くよう命じられた。でも俺は、やはり魔族を信じることが出来なかった。
だから、もちろん断った。で、また独房に入れられた。たぶん80年ぐらいだっただろうな。その間も、しつこく勧誘を続けてきた。だが、当然断り続けた。で、ある日、お前が現れた。その時お前何て言ったか覚えてるか?
「いや、覚えてないよ。そこまで大した事じゃなかった気がするから。」
「そうか。でもそんな純粋なお前の声を聞いたとき、俺はお前の『友達』になってやろうと思うようになったんだ。もともと子供は嫌いじゃなかったからな。それで俺は魔王軍として働こうと決意した。全てはお前を独りにしないために。何も信じられるものがないお前を。だから、魔族の中でも、お前なら信じられる。」
「………あのさ、ジェダ。80年もどうやって生きてきたの?ご飯とかも。」
「飯はなかったぞ。だがなぁ、俺は魔法で何とかなってた。」
「ジェダの魔法って、確か炎だったはずだけど?」
「あぁ、でももちろんそれだけじゃない。」
「2種類の魔法を使えるってこと?そんなの聞いたことないよ。」
「まあ基本的に1つしか使えないわけだが、俺は違う。俺は呪いを背負って生まれてきたからな。」
「ふーん?」
「子供には分かりづらかったか?」
「いや、私には分かったぞ。つまりお前らが魔王の息子とその護衛で、そこの竜のキミは呪われている。ということだな。」
振り返ると勇者がいた。
「!?!?!?!?!?!?」
「ははっ、そう驚くなよ。そうか、お前らは私の事を知っているんだな。だが手加減はしない。お前らをぶっ潰す。それが私の仕事だからな。」
「何で俺らが魔物って分かったんだ?俺らは角も尾も、隠していたのに。最初から知っていなければ盗み聞きなどするわけない。お前、どこで知ったんだ?」
「え?勘。」
「は?」
「いや、だから勘。」
(ねぇジェダ、なんか前とキャラ違くない?)
(ああ、そうだよな。でも、あいつの服装や体格は、どう見ても勇者だぞ。)
(前回の私はな、少しカッコつけていたのだ。だから今回の私が、本来の姿だ。)
「いやお前入ってくんなよ!?」
「いやジェダ、どうでもいいでしょ?とりあえず早く逃げよう?アイちゃんも困ってるよ?」
「アイとは誰の事だ?まさかあのお嬢ちゃんか?
お前たちはあんな少女を騙していたのか?そんなの…私が許さないぞ……!」
「あ、あの…いま、どういう状況ですか?」
「あ、お嬢ちゃん!こいつらから離れるんだ!こいつらは危険な魔物なんだ!だから私の後ろに隠れるんだ!」
その時、勇者はアイのガチビンタを喰らった。
「バチィン!」
「な、何をするんだお嬢さん!?私はキミを守ろうと…。」
「お兄さん気持ち悪い。それに魔物でも、私は気にしないよ。だって、ジェダさんは優しいんだもん。」
「え?気持ち悪い………?私が………?」
勇者は、とてつもないダメージを心に負い、その場に倒れ込んだ。
「今のうちに逃げよう。ジェダ、アイちゃん!」
「あぁ、そうだな。行こう、アイちゃん。」
「うん。分かった。ありがとうジェダさん。」
こうして、ミサキ一行は、勇者からまたも逃走するのだった。
続く。




