ep.1 わるだくみ
転生した先はどこか知らない白い大きな邸宅だった。
僕とサキは一緒にいて、庭先の豪奢の二つの椅子の上に向い合せで座って、広い春の僕の家の庭を眺めていた。
ちちち、と鳥が鳴いて、そこで、ようやく僕らは転生したことに気づいたんだ。
転生した先で見る、リアルのサキは一段と小顔で、かわいくて、唇がぷるるんとして、ピンク色で、なんだか、トップアイドルといる自分を自覚して少しドキドキした。
そんなサキは、きょろきょろと回りを観て、僕の顔を見て、一瞬驚いた顔をして、それから、思いついたように、安心したように少し微笑んだ。
かわいい笑顔だ。さすがトップアイドル。笑顔がすごい。
「転生したわね」
「確かにこれは転生だね。神の言ってたこと間違いない」
そこから、僕らは、少し、これからのことを話し合った。
サキはきれいな唇に指を添えて言う。
「ここは、m~。君をみつめて。の世界で、4つの大陸が存在していて、その大陸のひとつ、ラーマシーナなのよね?」
「そうだよ。それで、ゲームの舞台は、王都学園が、舞台の恋愛シュミレーションゲームなんだ」
「ふうん。主人公は、女の子で、15歳の黒髪の日本人転生者で、異世界自由転校券というフリーパスをもらって、このラーマシーナの王都学園、シェルフィード学園にやって来るのよね?」
「そうらしいな。そこで、入学式のときに、倒れた病弱の王太子を助けたことで、一躍注目を得て、そこから、王太子と恋愛関係を育てながら、逆ハーレムを作って行くというのが、このゲームの本来ある物語だよ」
一応、ゲーム内のことを二人で確認していると、気づいたように、サキが言った。
「ところで、あなた、身長高くなったわね。それにすごい美形っ」
「そうか? 自分では気づかないけど」
「私は前のあなたが気に入ってたから、ちょっと残念」
「そうか?」
「でも、悪業くんは悪業くんで変わらないよね? だから、姿が分かっても、私はあなたのことが好きだよッ」
サキは照れ臭いことを言う。
ほんとに僕のことが好きなのかな?
よくわからない。
まあ、いいや。設定の確認だ。
「ふふふ。僕は身長190センチの足のすらりと長い、赤髪の少し影のある美形キャラで、植物を育てる研究を学園でしながら、ヒロインと出会い打ち解けていくキャラなんだよな?」
「そうね。それでも、そのうちに、自分が魔王であるという事実に気づき、苦悩して自殺も考えたりするんだけど、ヒロインに助けられて、最後はヒロインとハッピーエンド。BADルートでは、魔王として目覚めて、学園を火の海に変えて、そのうちに世界を闇で支配する魔王になって終るのよね?」
「うん。そうだ」
そのとき、サキがきょとんとして言った。
「なんで私たち、ゲームしたことないのに、こんな情報わかるのかしら?」
「わからんけど。たぶん、神様が情報を入れてるんだと思うけど」
「このまま、ゲーム通りに、ヒロインに告白されたりするわけ」
「うーーーん」
サキが言った。
「そんなのつまらないわ」
カノジョはなぜか、本来、ゲームの中で存在しない櫻扇大乱48のトップアイドルという、転生する前のそのままのカノジョで、そんなカノジョがゲームに不満だという。
「つまらないって、それじゃあ、サキ、どんなことしたら楽しいの?」
「そりゃ、悪の限りよっ。徹底して悪いことをして、徹底して楽しみまくるのよっ」
ハハハっ。サキは相変わらずだな。でも、僕もそう思うよ。恋愛シュミレーションなんてつまんないっ。徹底して、恋愛シュミレーションの中で悪さしてやれっ!!!!
「ふふふっ。悪業くん。ノリノリねっ。やっぱり、私の共犯者ね」
「当然だろ?」
「学園は明日からなのよね?」
「そうみたいだ。今日は3月31日。明日が入学式の4月1日だな」
「そこで動きましょう」
「最初何をやろう?」
そこで、僕と、サキは、ヒロインをかどかわして、恋愛シュミレーションをぶちこわし、悪の道に勧めるための計画を建てたんだ。