第8話
気がつくと、私はまた真っ白な空間にいた。
先ほどよりも、負の感情が近くに感じられる。
そして、だんだんとその負の感情の根源に近づいていっているような気もする。
だんだんと根源に近づき、だんだんと繋がりができていっている。
ふと、眼前に虹色の球体が現れる。どうやら私は、その球体に引き込まれているらしい。
近づいて、近づいて……伸ばした手が虹色の球体に触れた時。
ブワッと視界に色彩が爆発する。
私は今、巨人となって地面に立っている。
普段は見えない上や後ろなど、360度全方位が見える。
前方にはよく見慣れた2機のミスティカドールが、同じ目線で立っている。
これって……”ナイトイーグル”の視界……?
まるで意識が機体に溶けたように、鉄の巨人に”自分”が満ち満ちている。
もしかしたら動けるかもしれない。そう考えた瞬間、自分の”今の身体”のことが手に取るようにわかった。
腕はここまで上がる。脚はここまで上がる。大体これくらいの速さで走れる。意識すれば、かなり遠くまで見通せる。マナを込めれば、光の弾を放てる……
不意に、”今の身体”との繋がりが切られそうになる。
自分と巨人の繋がりが、マナの流れが千切られそうになる。
……いやだ、やめたくない。まだもう少し、このまま……!
そう願ったその瞬間、私と”今の身体”を繋ぐマナの糸が切れる……と同時に、別の方向から伸びてきたマナの糸が、新たな繋がりを構築する。
『停───を──つ─────!? ど──って─ん──!?』
遠雷のように何かの声が聴こえた気がした。が、その音が意味を成しているのかすらわからない。
そして次は、物理的な繋がりを切られそうになる。
頭から引きちぎられるように、繋がりを断とうとする。
これも、いやだ。まだ、まだもう少し……!
数多のマナの糸が、物理的な繋がりを守ろうと結びつく。がんじがらめに、解けないように、千切れないように。
「バ─ザー──れ───!? ─れは──拘──式!?」
さっきよりは近くに、それでも遠く意味を成さない音を感じる。
これで、一安心……繋がりは、断ち切られずに済んだ。
ここからは、”私”の自由だ。
”私”は、新たな世界へ踏み出すように、1歩、前に出た。