第42話 友情と嫉妬の狭間で
授業が終わり、教室に静かな時間が流れ始めた。美咲は窓際の席で、ぼんやりと外を眺めていた。その瞳には、何か物思いに耽るような色が宿っている。
「ねえ、結城さん」
美咲が小さな声で呼びかけると、近くまで来ていた花子が返事をする。
「どうしたの、美咲?」
美咲は少し躊躇いながらも、口を開いた。
「最近、太郎くん...東雲先輩の話ばかりだよね」
その言葉に、花子は意外そうな表情を見せた後、すぐに理解したように頷いた。
「そうだね。確かに東雲先輩の話題が多いかも」花子は少し考え込むような仕草をしてから続けた。「私たちももうちょっとかまってほしいよね」
美咲は少し慌てたように否定する。「か、かまってほしいっていうのは、ちょっと...」
花子はくすりと笑う。「美咲ったら、素直じゃないなぁ」
美咲は顔を赤らめながら俯く。その表情には、言葉にできない複雑な感情が浮かんでいた。
突然、花子が明るい声を上げる。「そうだ、太郎を誘って遊びに行こうよ」
「え?」美咲は驚いて顔を上げる。
「大丈夫だって。みんなで楽しめばいいんだよ。どこに行こうか?」
二人は頭を寄せ合い、行き先を相談し始める。カラオケ、映画、遊園地...様々な案が飛び交う中、美咲の表情が少しずつ明るくなっていく。
「あ、太郎だ」
花子の声に、美咲は慌てて振り向いた。確かに、太郎が教室の入り口から入ってくるところだった。
「よし、確保しちゃおう!」
花子が立ち上がり、勢いよく太郎に近づく。
「太郎ー!」
花子は太郎の腕に抱きつくようにして、体を寄せた。
「うわっ!」太郎は驚いて声を上げる。「な、なんだよ急に」
「ねえねえ、今度美咲と三人でで遊びに行こうよ」花子が甘えるような声で言う。「太郎、暇でしょ?」
「え?あ、ああ...」太郎は戸惑いながらも、嬉しそうな表情を隠せない。「別に...暇だけど」
花子はさらに体を寄せる。「じゃあ決まりね!」
太郎は顔を赤らめながら、どう対応していいかわからない様子だ。しかし、その表情には確かな喜びが浮かんでいる。
一方、美咲はその光景を複雑な思いで見つめていた。太郎と花子の距離の近さに、胸が締め付けられるような感覚を覚える。
同じように太郎と接したいが美咲には勇気がない。ただ、もどかしそうに二人を見つめるばかりだ。
しかし、そんな美咲の様子を見逃さなかった人物がいた。
「美咲もおいでよ!」
花子が明るく声をかける。
「え?」
「ほら、みんなで行くんだから」
そう言いながら、花子は美咲の手を引っ張る。
「ちょ、ちょっと...」
美咲が戸惑っていると、花子は太郎の腕を離し、今度は美咲を太郎に押し付けるように近づけた。
「ほら、美咲も太郎と仲良くしなさい」
「えっ!?」
美咲と太郎の声が重なる。二人の体が接近し、互いの体温を感じられるほどの距離になる。
「ちょっと待ってってば!」美咲が真っ赤な顔で抗議する。
花子は二人の反応を見て満足したようにうなずく。
「よし!じゃあ、遊びに行く予定を立てましょう!」
しかし、太郎が少し心配そうな顔をして口を開いた。
「でも、テストは大丈夫なのか?」
花子は一瞬焦ったような表情を見せる。「もう、太郎ったら!そんなこと言わないでよ」
「え?」太郎は首を傾げる。
花子は大げさなため息をつきながら説明する。「これはね、最後の息抜きなの。テスト前だからこそ、リフレッシュが必要なのよ」
「なるほど...」太郎は半信半疑といった様子だ。
花子が続ける。「もう暑くなってきたし、プールとかどう?」
その言葉に美咲は俯き、太郎も驚きながらも、どこか嬉しそうな表情を隠せない。
「プール...か」太郎が呟く。
花子はニヤリと笑う。「太郎、エッチな顔してる」
「そ、そんなことないよ!」太郎は慌てて否定するが、その顔は明らかに期待に満ちている。
美咲は小さな声で言った。「でも...水着...」
花子が思い出したように言う。「そっか、水着用意しなきゃいけないんだ。今度にしよ」
花子は、太郎の表情が残念そうなのを見て、くすくすと笑い出した。
「太郎ったら、そんなに水着が見たいの?」
「え!? ち、違うよ!」太郎は慌てて否定する。
美咲も太郎の反応を見て、少し複雑な表情を浮かべる。
花子は大きく手を叩いた。「じゃあ、とりあえずカラオケでも行こうか!」
太郎も頷く。「そうだな。カラオケなら準備もいらないし」
美咲も頷いた。「うん...カラオケ行こう」
「よーし、じゃあ決まり!」花子が元気よく言う。「来週の土曜日、みんな空いてる?」
太郎と美咲が頷くのを確認すると、花子は満足そうに笑った。
三人は楽しげな表情で自分の席へと戻っていった。太郎は自分の席に腰を下ろすと、花子と美咲を交互に見つめた。二人の笑顔に、太郎の胸は温かな期待で満たされていた。




