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第3話 デート?

図書室を出た後、太郎はぼーっとしたまま帰路についていた。


「ねえねえ、聞いてる?」


隣を歩く花子が、太郎の目の前で手を振る。


「え?あ、ああ...」


「もう、まだボーッとしてるの?」花子は呆れたように首を振る。「せっかくチャンス作ってあげたのに」


太郎は複雑な表情で花子を見た。


「お前な...」太郎は言葉を探す。「急にデートなんて言い出して...」


「デート?」花子が目を丸くする。「ただの買い物だよ?」


「え?」


「あ、もしかして太郎、勘違いした?」花子がくすくすと笑う。「まあ、太郎にとってはデートみたいなものかも

ね」


太郎は顔を真っ赤にする。


「う、うるせぇよ!」


「でもさ」花子が真面目な顔になる。「これはチャンスだと思わない?美咲のこと、もっと知れるかもしれないよ」


太郎は黙ってうなずく。確かに、花子の言う通りだ。


「...ありがとう」


小さな声で呟いた太郎に、花子は明るく笑顔を返した。


「いいって!友達でしょ?」


その夜、太郎は眠れなかった。


(俺...ちゃんとできるかな...)


不安と期待が入り混じる中、太郎は日曜日を迎えた。


朝から悩みに悩んだ末、太郎は黒のジャケットにジーンズという、無難な格好で家を出た。


(これなら浮かないよな...)


駅前に到着すると、すでに花子の姿があった。


「おはよ!」


花子が笑顔で手を振る。パーカーとスキニーパンツ姿だ。


(よかった、俺だけ気合い入れすぎてなくて...)


ほっとする太郎。


「美咲はまだ?」


「うん、もうすぐ来るんじゃない?」


その時、駅の改札口から一人の少女が現れた。


「あ!神崎!」


太郎が思わず声を上げる。


美咲は淡いピンクのカーディガンにフレアスカート姿で颯爽と歩いてくる。


(か、可愛い...)


太郎は思わずドキリとする。


「おはよう、結城さん、鳴海くん」美咲が二人に笑顔で挨拶する。


「おはよー!」花子が元気よく返事する。「じゃ、行こっか!」


三人で歩き始める中、太郎は緊張で固まったままだった。


(どうしよう、なに話せばいいんだ...)


そんな太郎を見かねたように、花子が話を振ってくる。


「ねえ太郎、この前の授業のこと覚えてる?先生が突然歌い出したやつ」


「え?あ、ああ...」


太郎は必死に記憶を辿る。


「あれは面白かったよね」美咲が笑顔で言う。「鳴海くんも笑ってたよね?」


「え?俺が?」


「うん」美咲がくすっと笑う。「いつもはあんまり表情変わらないのに、あの時は結構笑ってた」


(俺のこと、見てたんだ...)


太郎は少し嬉しくなる。


「へー、美咲って太郎のこと、よく見てるんだ?」


花子が意味ありげに言う。


「え?そ、そんなことないよ...」


美咲が慌てて否定する。その頬が、少し赤くなっているような気がした。


(気のせいか...?)


太郎は自分の期待を抑えようとする。


そうこうしているうちに、三人は大型ショッピングモールに到着した。


「わぁ!」花子が目を輝かせる。「可愛い服いっぱいだね!」


美咲も嬉しそうに頷く。


「鳴海くんは、どんな服好きなの?」


突然の質問に、太郎は慌てる。


「え、えっと...」


(やばい、なんて答えればいい!?)


その時、突然の出来事が起こった。


「きゃっ!」


美咲が小さな悲鳴を上げる。彼女の足元には、小さな子供が転んでいた。


「大丈夫?」


太郎が反射的に子供を抱き起こす。


「うう...」


子供は涙目だったが、怪我はなさそうだった。


「よかった」美咲がほっとした表情を見せる。「鳴海くん、優しいね」


「え?いや、これは...」


太郎が戸惑っていると、突然子供の母親らしき人が駆け寄ってきた。


「すみません!ありがとうございます!」


母親は深々と頭を下げる。


「いえいえ」


太郎は照れくさそうに頭をかく。


当然のように子供に対応した太郎は、美咲に「優しい」と言ってもらったことですこし自信を持ち始めていた。

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