第20話 借り物競争の行方
校庭に興奮の渦が巻き起こっていた。借り物競争の開始の合図が鳴り響き、生徒たちが一斉にスタートラインから飛び出す。太郎と花子は運営側として、競技の進行を見守っていた。
「よし、順調だな」太郎が満足げに頷く。
花子も笑顔で応じる。「うん!みんな楽しそう」
競技が進むにつれ、次々と面白い場面が繰り広げられる。「赤い物」を探すでは、青組の生徒が紅組チームの赤いハチマキを奪って走り、会場を沸かせた。
「まさか、あんな展開になるとは」太郎が驚きながら言う。
「昨日の日付が書いてある物」を探すのに生徒たちは慌てて持ち物を確認し始める。
「教科書」の項目では、教室まで教科書を取りに走ってきた生徒が勝利を収めた。
競技は白熱し、生徒たちの歓声が校庭中に響き渡る。太郎と花子は忙しく立ち回りながら競技を進行していく。
「えぇ!!!」と大きな声を上げた男子生徒にみんなの注目が集まる。
太郎ら三人は「気になってる人」の項目が出たのだと察した。
会場がざわめく中、生徒たちが慌ただしく動き回るっている。太郎の目は自然と神崎に向けられていた。彼女は少し緊張した様子で、周りの状況を静かに見守っている。
その時、大きな声を上げた男子生徒が神崎に近づいてくる。太郎の胸が締め付けられる。
(まさか...神崎を...?)
男子生徒は神崎の前で立ち止まり、何かを言う。神崎は少し驚いた表情を見せるが、次の瞬間、微笑んで頷いた。
二人が手を取り合って審判の元へ向かう姿を見て、太郎は複雑な思いに襲われる。安堵?それとも後悔?自分でもよくわからない。
(神崎...)
太郎は思わず神崎の方に目を向けたまま、自分の立ち位置を忘れそうになる。しかし、すぐに自分が運営側だということを思い出し、慌てて視線を逸らした。
男子生徒と神崎が1位でゴールのテープを切ると、項目が発表された。
「お題は気になってる人でした!」
その一声に回りはうるさいほどの歓声が。
男子生徒が「体育祭で実行委員の手伝いとかしてて気になってるだけだから!」とみんなに弁明をしている。
その姿を見て、美咲は少し顔を赤くしていた。
(そのまま告白とかじゃなくてよかった...)
太郎はそんな美咲を見てなんとも言えない感情が渦巻いていた。
競技が終わり、「大成功だったね」花子が嬉しそうに太郎の肩を叩く。
太郎も満面の笑みで頷く。「ああ、みんなの笑顔が見られて良かった」
そんな二人の様子を、神崎が少し距離を置いて見つめていた。彼女の表情には、複雑な思いが浮かんでいる。
借り物競争が終わり、生徒たちが三々五々解散していく中、東雲翔子が太郎たちの元にやってきた。
「お疲れ様」東雲が微笑みかける。「とても面白い企画だったわ」
「ありがとうございます」太郎と花子が同時に答える。
東雲は意味深な笑みを浮かべながら言った。「やっぱり気になってる人はすこしいじわるだったわね。ただ、盛り上がりは一番ね」
その言葉に、太郎は思わず神崎の方を見る。神崎もその場にいて、静かに聞き入っていた。
「さて、打ち上げパーティーでは、もっと面白いことが起きるかもしれないわね」東雲が去り際に言い残す。
三人は複雑な表情を浮かべながら、その言葉の意味を考えていた。借り物競争は終わったが、彼らの心の中では、まだ何かが始まろうとしていた。
体育祭はまだ終わっていない。そして、その後に控える打ち上げパーティー。太郎の胸の中で、期待と不安が入り混じる。これから何が起こるのか、誰にもわからない。ただ、何かが変わる。そんな予感だけが、確かに存在していた。




