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競争

 「夏のホラー2024」のテーマは「うわさ」です。


 これを見て思い出す事があった。

 今回の小説家になろうのホラー企画は「うわさ」。この「うわさ」で少し印象深いものがあった話をここで一つ。


 今でこそ運搬業として働いているホンジョウさんだが、かつてはヤンチャな若者時代を送っていた。当時は2000年代で車とかバイクとかでスピードを出すだけ出して日々を楽しんでいた。

 当時車とかバイクを転がす事が流行っていた。だから流行っていた漫画とか映画とかもそれの描写が多くあって、その影響で走り屋紛いな真似もしていた。けれども今ではかなり恥ずかしがっていた。言ってみれば若気の至りとも言えるものが、悪く言えばバカだったと言える。だから、彼は常にと言って良い程「バカでした」と言っていた。

 そんな彼だが不思議な体験をしていた事があった。当時走り屋紛いな事をして、同じような友人ができた。そうした友人がいれば走り屋でよく耳にする噂もある。深夜のある道路で白い軽バンが猛スピードで走っている、という噂だ。最初その噂を耳にしていたホンジョウさんは全く信じていなかった。

 ありえないからだ。軽バンは基本的に軽自動車で走り屋のような真似をしている連中はエンジンや車体、とにかく金をかけて速く走れる車を選んで走っている。だからそれはあり得ないと思っていた。

 ところが噂を聞いてしばらくして、友人が走っている所を見ていたそうだ。それも何度も。ホンジョウさんと同じく深夜に猛スピードで走る事が楽しくてその道路を活用していたのだが、その時に見たのだそうだ。

 その後でも目撃情報が絶えず、ついには噂は広がった。白い軽バンは改造されたエンジンを積んでいるとか、実は新しい新型の車両のテストとか、心霊的なアレとかそうした噂話がいやと言うほど耳に入る。

 信じなかったホンジョウさんも深夜の白い軽バンの走り屋、というような印象を持ち、どんな奴が運転しているのかと思ったが、あまり興味がなかった。


 だから忘れた頃に噂を思い出してしまった。


 思い出したきっかけはホンジョウさんが深夜に例の「ある道路」に入って数分経った頃の事だった。

 あの噂はすっかり忘れていて、とりあえず走る事を楽しもうと考えていたホンジョウさんは徐々にスピードを上げていった。その時、後ろから白い光が見えた。

 最初は「あ、俺と同じで走りに来たんだ」と考えていた。だがカーブに差し掛かった時、ものすごい勢いで追い抜かれた。その時、後ろの車体を見た瞬間、驚いた。追い抜いた車体は明らかに軽バンだったからだ。カーブの所でスピードを殺していたとはいえ、それでも曲がるにしてはあり得ないスピードで追い抜いたのだ。

「ええっ?、何キロ出してんだ!?」と驚きの後に沸いた感情が怒りだった。軽に抜かれた事への怒りが込み上げてついにはスピードを上げ始めた。強くアクセルを踏みしめて60・・・70・・・80・・・とどんどんスピードを上げるホンジョウさん。ハンドルがガクガクと重くなって、ついにはまっすぐの田舎道では100キロを超すスピードになった。どうしても運転手の顔を見たい一心で必死にハンドルを握り、アクセルを踏み込み、そのスピードでピッタリと白い軽バンの横についてチラリと運転席の方を見た。

 一体どんな奴が運転してんだと見た時、ホンジョウさんは凍り付いた。


 黄色の服を着た黒髪の若い女が運転していた。真横に着いたホンジョウさんをジッと見ていた。


 そして笑った。


 徐々にスピードが落ちていくホンジョウさんはみるみる遠ざかっていく赤いテイルランプを見ながらハッと気が付いた。

 よく考えてみれば軽自動車であれだけのスピードはおろか、あれだけのカーブで曲がれるなんて相当な運転技術でもなければ無理な話だ。その上ホンジョウさんは相当必死に噛り付くようにして重いハンドル操作をしている上に100キロ超えるスピードを出しながら余所見しながらの運転は無理だ。

 だが黄色の服の女はあまりスピードを落とさずにカーブを曲がったり、並走していた時はジッとホンジョウさんを見ていた。

 あれが白い軽バンだったのかと気が付いた時、背筋に寒気を覚えて道先にあるコンビニで休む事にしたホンジョウさんはコンビニに入って、自分はバカだ、バカだと思い耽っていた。一先ず缶コーヒーを手に取って支払いをしようとした時、対応していた若い店員が来た。

 若い店員は多分アルバイトで今時の、と言う感じでチャラくて軽い印象のある店員だった。


「お客さん、もしかしてあの道から来た時、白い車を見ました?」


 と聞いてきた。

 ホンジョウさんは思わず「はい」と答えてしまった。若い店員は


「あ~やっぱりか~。あそこで白い車を見た人、大体の人がここにきてお客さんみたいな顔をして何か買うんすよ」


 と軽い口調でそう言った。ホンジョウさんは半ば上の空の様な気持ちでいたから「ああ、そうですか」としか言わなかった。対して店員は続けて


「お客さん、車戻る時に後ろのナンバー見てくださいね」


 と話して会計を済ませた。

 店員の言葉が気になって、後ろのナンバーを見た時、ホンジョウさんは再び凍り付いた。


 ナンバーの隙間やボルト部分に長い髪の毛が絡みついていた。

 しかもその絡みついている髪の毛の色は茶色だった。運転していた女は黒髪だった。


 じゃあこの茶髪は?


 更に不気味に感じたのはアルバイトの店員があんな軽い口調で慣れたように、どことなく楽しそうにも見える対応。何を考えてあんな対応を?


 ホンジョウさんはナンバーを見続けて、その場に立ち尽くしていたそうだ。

 あれ以来、次第に走り屋紛いな真似が減っていき、ついにはハンドルを握る機会が用事がある時だけになってしまった。運搬業で働いているホンジョウさんは今でもハンドルを握るとたまにあの出来事を思い出してしまうそうだ。

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