表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/49

第32話 始まりの大捜索

ブリーフィングルームでは、多くの軍や政府、そして研究の関係者が集まっていた。部屋にいる人間がどこからでも内容が確認できるように、中央には円筒形のモニタが設置され様々な情報が流れていく。


今回のマザー地表探索には、いよいよ最新鋭の第5世代エーテルボディ50体が一斉に投入される。まだ侵食型エーテルボディについては上層部のみ伝えられるのみで、部署全体には正式に公開されていない。しかし地上にはその侵食型エーテルボディによる怪物が確認できただけでも千体を越える数が活動しており、それらは第4世代エーテルボディと同等か、一部にはそれ以上の戦闘能力を有するものも存在していた。


特にナーガ型と命名されている蛇の怪物は完全に第4世代の戦闘能力を上回り、地上探索部隊は常に苦戦を強いられている。しかもこのナーガは少なくともこれまで20体が確認されており、都市中央の要所を徘徊している。現在は多対一に持ち込むことで対応しているが、どうやらその数が増えているという報告もある。


しかしここにきて第5世代エーテルボディであれば、適合度さえ上がれば1対1でもナーガを相手にすることが可能とわかった。現在予想されているナーガの数を上回る第5世代を一気に地表に投入する事で、これまでとは比較にならない効率で地表の捜索が出来る。それが新たに設定されたミッションであった。


第5世代50名に加え、今回新たに第4世代を追加で100体。これに現在地上で活動している約500体の第3・第4世代エーテルボディが加わる。この最大戦力を一斉投入することで、今まで届かなかった首都中心部への到達、そして可能であればパウダー発生源の破壊まで行う。それが今回の作戦だった。


「50体の第5世代、壮観だね」

「できれば第5世代でナーガの掃討も行いたいものだな」


エーテルボディを開発した軍と研究の共同チームからは、自信の声があふれる。しかしそれに関わった一人でもあるタウズンは、誰からも聞こえないように小さく嘆息した。



グランドスイーパーと名付けられたマザー地表での過去最大級の探索、その計画が軍作戦本部から説明される。ノルメック幕僚長という、背が低くて顔が大きくて髪の毛が薄くてお腹が出ている人が総指揮官だ。顔も体型も個性的でインパクトが強い。そのそばに付き添っているダランイーバ主席幕僚という、中肉中背であまり特徴がないおじさんが参謀らしい。どちらも名前を覚える自信がない。


地球のだるまに似ているノルメック幕僚長の顔がモニタに映し出され挨拶が始まる。この作戦がどれだけ大事で偉大な事なのか、そして成功させなければならないし成功間違いなし、という内容を20分に渡ってくどくどとしゃべっている。さっさと終わってほしい。次にちょっとキツネザルに似た参謀のダランイーバに画面が切り替わり、ようやく作戦の具体的な説明が始まるかと思いきや、このダランイーバという人も前振りが長い。さっさと本題に入ってくれ。



長いので要約すると、第5世代エーテルボディ5人と第4世代エーテルボディ10人で1チームを組んで個別の捜索を行う事になる。新たに地表の転移先となったマゼランポイントA10を出発点として、10チームがそれぞれ独自ルートに沿って首都中心部を目指すわけだ。都市中心部にはガバナー研究所やパウダー生産工場などの重要拠点が今も何らかの形で残っていると推察されており、それを確認するのがグランドスイーパー計画のミッションとなる。


この計画に当たり第4世代のエーテルボディも新たに100名が追加されるが、これは第5世代のサポート要員としてである。あくまで首都中心部を目指すのは第5世代であり、第4世代の人たちは斥候や物資搬送などの補助的な役割がメインとなる。


会議中、一部からはまだ見つかっていないマゼランポイントも捜索対象に入れたらどうかという意見も出た。しかしA10からマザー首都中心部までの短い距離を考えると、未発見のマゼランポイントを探す戦力と時間もすべて首都中心部の探索に注力した方が良い、という事でそれらの意見は却下された。


その後、現在の地表で捜索の妨害となる『怪物』について、詳細報告が行われた。侵食型エーテルボディという名称は使わず、『怪物』という名称で通すようだ。マヌエアリーフからの捜索者に敵対する地表の怪物は3種類おり、発見順にスパイダー、バルログ、そしてナーガである。


スパイダーは人間の手足が2対備わったような蜘蛛のような怪物で、壁を自在に動きまわり、時には地中に隠れている事もある。4本ある腕の先端は刃物になっていて、これを使って壁を登ったり攻撃してきたりする。基本的に正面から襲っては来ず、壁の上や土の中から不意打ちしてくる。しかしスパイダーの戦闘力は軍用エーテルボディの第2〜3世代程度であり、現在はほぼ問題なく除去できる。


バルログは関節が大きな球体の、人間と同じ二足歩行の怪物である。スパイダーと違って手だけでなく足の先端も刃物となっており、こいつも不意打ちを得意としてくる。性格の悪い怪物ばかりだ。バルログ本体の戦闘能力は第3世代よりやや上であり、第4世代のボディなら対処は可能であるが、不意をつかれたり複数が相手だった場合には注意が必要となる。


そしてナーガ、問題はこいつである。巨大なヘビの体に人間の頭部、そして両腕が大蛇という蛇の怪物だ。ヘビ独特の動きは見切ることが難しく、そしてとにかく力が強く動きも早い。また両腕の大蛇が最大の武器であるが、この腕が長くて変則的な動きをしてくる上に、噛み付きや巻き付きに加えて牙から毒を吐くなどの多彩な攻撃をしてくる。その戦闘力は第4世代を遥かに凌駕し、第5世代であっても適合度が80%を越えてようやく相手ができるという難敵である。ただしナーガ自体の数は20体程度しか確認されていない。今回、50体の第5世代を投入するのは、このナーガへの対策という意味合いも強い。


今回の作戦『グランドスイーパー』では、戦闘よりもターゲットである建物の情報を持ち帰る事が優先される。とにかく1チーム、いや1人だけでもいいから、未到の地となっている首都中心部にたどり着く事、そして今も稼働している建物がどのような状況なのかを確認する事が目標だ。キツネザルに似た参謀は長々と何度もこんな内容のことを繰り返し述べていた。あ、参謀の名前忘れてしまった。



長い長い1回目のブリーフィング後、チーム分けが発表され、僕とアイトさんはミガディさんをリーダとする探索部隊に配属された。他にはリオという柔道着が似合いそうな全身が筋肉の塊の30歳くらいの男性と、カンタルという僕と同い年でこれまた逆三角形の立派な体格の男の人が同班になった。二人とも軍の大尉で、使うエーテルボディは『ガーディアン』という防御特化型になる。ゴースト体での挨拶しかしていないけど、二人ともミガディさんの後輩という事で、地球から来た僕たちにも丁寧に挨拶してくれた。ただ僕は軍人でもないしどう見ても一般人のような見た目や体形だし、アイトさんはそもそも女性なので、二人にはあまり良い印象は持ってもらえなかったようだ。まぁ仕方ないよな。


でもミガディさんが言うには、このチームメンバーは全員が第5世代エーテルボディとの適合度が70%を越えており、総合力として一番手という事だった。ちなみに二番手はあの惑星ミヌエトにもいたヘリオスチームだった。



次の日もまた、2回目のブリーフィングが行われた。昨日とは違う部屋に集まると、そこはまるで学会のような雰囲気の緊張感にあふれる空間になっている。中央には一段高い円形状の舞台があり、そこにやはり大きな円筒形モニタが浮かんでいる。いかにも主賓というか重要人物が座っている席もあり、そこには全員が軍服…… いや、よく見ると白衣のような服装の人たちが集まっていた。あれは……研究部だろうか。


時間が来たようで、ゴースト体のミガディさんが一段高い中央の舞台に上がった。どうもこのグランドスイーパー計画に参加するエーテルボディ使用者の中で、ミガディさんが一番地位が高いらしい。


「今回のグランドスイーパーでは、首都中心部におけるガバナー研究所本拠地とその関連施設、そして事故を起こした研究所に絞って調査を行う」


そうしてまだパウダーに汚染されていない時代の、首都中心部の地図が浮かび上がる。そこにマゼランポイントA10の位置が追加されると、10チームの進行ルートが表示される。目標である中心部から見て、A10地点はちょうど東南200kmほどの位置にある。24時間歩き続けられるエーテルボディならのんびり行っても3日あれば余裕で到達する距離だ。まぁ実際には怪物と戦ったり、進路を見失ったりするから、そう簡単にはいかないだろうけど。そもそも光も電波も届かないあの地表だと、移動するだけでも大変なのは前回の捜索で身に沁みている。



そしてブリーフィングから一週間後、いよいよグランドスイーパーが実行された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ