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第10話 ナーガの魂

メデューサ、惑星ミヌエトに墜落した宇宙船の中にいた最強の怪物。その時のエーテルボディの人がチームを組んでも倒せなかった。ただ宇宙船にいたメデューサさんは、中にいた人間の魂と僕は会話することができたため、最終的に協力することができた。そして最後は宇宙船の中に埋葬される事を選んだ。


「私が実際にマザー地表に捜索に行って交戦し確認したが、正確にはメデューサではなかった。しかしメデューサと同類であり、戦闘能力も私が見る限りほぼ同等だった。軍ではその怪物をナーガと命名した。問題は首都近郊に、そのナーガが複数体いることだった」


アイトさんが息を呑む。ああ、ミガディさんがやつれている訳だ。宇宙船にいたメデューサさんは一人だけだった。そのメデューサさんと同等の強大な敵が何体もいるとなれば、エーテルボディであっても力不足だろう。


「サノくんもアイトくんも宇宙船にいたメデューサの強さは分かっているだろう。しかしその時と違ってメデューサと互角に戦えるはずの第五世代のエーテルボディがある。私はそのボディを使い、マザー地表にてメデューサ、いや、ナーガと相対した。しかし、結果としては敗退した。確かに最新のエーテルボディは潜在能力ならナーガと互角かもしれない。逆に言えば、ボディとの適合度が低ければその力を十分に発揮できない。事実、私を含め今マザー地表にいる第五世代のエーテルボディの使用者は、まだ体に熟練しきれてないため、ナーガに後れを取ることになってしまった。第四世代のボディよりはマシだが、第五世代であっても、ナーガと1対1で戦うには正直厳しい状況だ。マザー地表で創作活動を行うためには、ナーガ1体に対して第五ボディが2体、できれば3体欲しいところだ。現に今は第五ボディでチームを組んで、ナーガ除去に取り組んでいる。そしてその間に第四世代が探索を広げている最中だ」



メデューサさんと互角に戦えると言われた第五世代のエーテルボディだったけど、あくまで理想論であり、実際にはまだ1対1は難しい。そんなメデューサと同等の怪物ナーガが何体も地上にいて襲いかかってくる。不眠不休の超人的なスペックを持つエーテルボディであっても難儀な事だろう。そう思うと、ついつい顔が渋くなる。同じような顔つきになったアイトさんが、恐る恐るといったていで、ミガディさんに尋ねる


「調査の結果、地表に残された人たちがどうなったか分かったんですか?無事な人が見つかったんですか?」


少しの間、沈黙が流れる。ミガディさんの顔が、さっきより険しくなったように感じる。


「まず、エーテルボディの人数に限りがある以上、ガバナー研究施設や爆発した研究所がある首都に絞って調査を行っている。これまでの調査結果だが、首都の中心部以外で多くの遺体が見つかっている。それらは腐食もなく、ミイラのような状態だった」


そうか、遺体を分解する虫や微生物まで、毒素で全滅したのか…… ん?“中心部以外”?


「首都中心部では、そうした遺体は見つからなかった」


「え?じゃあどこかで生きて……」


「中心部とその近郊では、ナーガを含めその他にも怪物が探索部隊に襲いかかり、幾度も戦闘になっている。調査の結果、怪物の正体はガバナーが開発したエーテルボディに魂を入れられてしまった人たちの可能性が高いと判明した」



アイトさんが手で口を抑える。そして僕は察してしまう。あの墜落した宇宙船と同じなんだと。あの宇宙船には僕たち探索隊を襲うモンスターがいた。一つは生物系だったが、もう一つは人の魂が入ったエーテルボディを(まと)う敵。メデューサを筆頭に、ロイヤルガード、テンプルナイツ、ビショップ、それらはみな宇宙船の乗組員の魂が入った、宇宙船が製造したエーテルボディになってしまった元人間たちだった。僕はエーテルボディの特殊能力で、直接魂と会話することでそれを知った。


ちょっと待った。メデューサさんは、宇宙船が墜落したのはガバナーによる人為的なものだといった。まさか……


「アイトくんには少し酷な話だったようだ。ちょっと休憩しよう。温かい飲み物を用意してくる」


そういって部屋をまた出ていったミガディさんの言葉を聞いて、アイトさんが真っ青な顔をしていることに僕はようやく気付く。アイトさんにとって、宇宙船での探索はつらい経験だったはずだ。ようやくそれが決着したのに、それより更に過酷な状況を聞いて、そのつらい経験が蘇ってしまったのかもしれない。アイトさんだけでも地球に戻した方がいい。


「ごめん、アイトさん。こんなキツイ話に巻き込んでしまって。アイトさんは地球に戻った方が……」


それを聞いた途端、キッとした顔で僕は睨まれる。今までアイトさんに向けられたことがない、悲しみと怒りに満ちた顔で。なぜか僕は初めてアイトさんの顔をキレイだと思ってしまった。


「勘違いしないで下さい!私はミガディさんや、地上を探索していた人の事を考えて、それであまりに悲しくなって……だって、ヒドイじゃないですか!命をかけて地上に生きている人を探しに行ったら、亡くなっているどころか、怪物にさせられて、しかも襲いかかって来るなんて!地上に残された人達もつらすぎます。魂を取られて、怪物にさせられて──── ヒドイ! あまりにひどすぎます!」


そう叫ぶアイトさんの目から涙がこぼれ落ちる。ああ、僕もヒドイと思う。あのサギ女神も最悪な女だったけど、更にひどい。ひどすぎる。誘拐されて強制的にエーテルボディに入れられた僕やアイトさんも、一つ間違えば同じような境遇になったかも知れない。やるせない気持ちになって思わず上を向くと、アイトさんはまた僕に抱きついて来た。そして顔を僕の胸に埋めて嗚咽をこぼす。僕は黙ってアイトさんの背中をなで続けた。

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