第63話 自ら死を選んでしまったー!
うおおおぉぉぉーーー!!! やってしまった! マリーと2号が帰ってきたら絶対に殺されるよな? どうすりゃいいんだ? 俺は肩を落とし俯いて考えた。
逃げるか? 逃げるしかないのか? 絶対にすぐ見つかるよな? また飛竜が空を舞って俺を探すよな?
俺は頭を抱えて首を大きく振る。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
そうだった。この部屋には芽依がいるんだ。あまり動揺した姿は見せられないか。
「ああ、大丈夫だ」
「あのね、お兄ちゃん。ありがとう。芽依は感動したよ」
「どうしたんだ急に?」
「お兄ちゃんは芽依のことを守ってくれたんだよね?」
確かにその通りだ。無我夢中だったとはいえ妹を守ったんだった。よく考えたらかなりいいことをしたんだよな?
「お兄ちゃんが芽依を命がけで守ってくれるなんて思わなかったよ」
うおおおぉぉぉーーー!!! そうだったー! 俺はこれから死刑になるんだー!!
「それにお兄ちゃん。ごめんなさい」
「どうして急に謝るんだ?」
「お兄ちゃんに冷たい態度を取っちゃったよ」
「ああそのことか」
「本当はそんなことしたくなかったんだよ」
「ん? どういうことだ?」
芽依は下を向いてもじもじしている。言いにくいことなのか?
「これは言っちゃいけないことなんだけど‥‥‥」
言っちゃいけないこと?
「もうじき死ぬかもしれないから言うね」
うおおおぉぉぉーーー!!! その言い方は止めてくれ!
「芽依たちがマリーさんを止めようと必死になればなるほどマリーさんはお兄ちゃんのことを放そうとしないと思ったんだよね。それで小百合さんが、私たちが諦めたと思わせようと考えたんだよ。そうすればお兄ちゃんを冷静に見つめて『これでいいのかな?』と思うかもしれないでしょ? かなりの賭けだけどね。ほらマリーブルーってやつに賭けたんだよ」
よくわからんが、マリーが意地になれば結婚は決定だもんな?
強引に結婚式を挙げるだろう。
「ところで芽依。お兄ちゃんは逃亡する。これからも元気で暮らせよ」
「ダメだよ。黒魔術を使われたら逃げきれないよ」
「そんなことはわかっている。だが殺されると分かっていて、ここに留まる奴はいないだろう?」
「じゃあ、芽依も一緒に行く」
「それはダメだ。芽依まで危険な目に遭わせることになる。それに学校もあるだろ?」
「お兄ちゃんと一緒なら死んでもいいよ」
うう、何と健気な言葉なんだ?
俺は思わず芽依を抱きしめそうになって辞めた。
「どうして辞めるの? ここは『ありがとう芽依』と言って抱きしめるところだよ」
「そんなことをしたら一人で逃げる決心が緩んでしまう」
「それでいいんだよ。芽依とお兄ちゃんは一緒にいる運命なんだから」
そう言うと芽依は俺の腕に抱き着いてきた。
そしてやや低めの声で、
「もう離さないよ」
と言った。
「急に大人っぽい声で言うな!」
まったく予想以上に色っぽい声だったぞ。ただでさえ見た目は可愛いんだからこういう態度は止めてくれ。
そういえば俺と芽依は兄妹だが血は繋がっていない‥‥‥。ぶるんぶるん。俺は大きく首を振った。
「いいんだよお兄ちゃん。芽依のことを真剣に愛しても」
「バカ言うな!」
「でもお兄ちゃんの顔真っ赤だよ」
俺は慌てて顔を抑える。
「冗談だよ」
「変な冗談を言うな!」
と怒鳴っては見たが、顔が赤くなっていないという自信はない。
芽依は嬉しそうな顔で俺を眺めている。
「やっぱり芽依のことが好きだったんだね?」
どういう意味だ? やはり顔が赤くなっていたのか?
俺は慌てて芽依を腕から離すと、
「とにかく一人で行く。小百合にはお前から伝えてくれ」
「どうせ死ぬんだったら、芽依の目の前で死んでよ」
え? 予想外な言葉だぞ。
「いや死ぬとは限らないというか」
「確実に死ぬよ」
うおおおおおーー! なんて言葉を発するんだ!
はっきりと言われると恐怖心が増してくるではないか。
そうだよな。マリーや2号が本気になったら俺のような一般人何てありをつぶすより簡単だよな?
「ここに居るほうが安全だよ」
「なぜそう思うんだ?」
「女の勘だよ」
それって全く根拠がないってことじゃねえか?
その夜、俺は覚悟を決めて身辺整理を始めるのだった。




