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第6話 浮気などしていない!

 マリーにとてつもない忠告をした陽葵は相変わらず俺のそばで行動している。いやどちらかというと以前より近い位置にいるような。マリーをも牽制してくれているのだろうか? まさかな。

「私あの人嫌いよ」

俺が陽葵のことを考えていたのがわかったのかマリーがぼそりと言った。


「いい人だと思うぞ」

「やっぱり! おかしいと思ってたのよ! これははっきり浮気よね?」

マリーが突然大きな声を上げたので周りの生徒が一斉にこちらを向く。


「恥ずかしいから止めろ」

「恥ずかしくてもいいわよ。浮気を発見して怒らない妻なんていないわ!」

「誰が妻だ」

マリーはぷいっと顔を横にすると教室から出て行った。


 この様子を見ていた陽葵が俺の方へとやって来た。

「大変ね」

「ははは」

「いつもあんな調子なの?」

「いつもはもう少し・・・・いや、あんな感じです」

俺は正直に言った。この際だ嘘を付いても仕方あるまい。


「もし、今の状態が嫌ならはっきり言った方がいいわ。協力してあげるから」

「ありがとうございます。でも迷惑掛けちゃうし。あいつ本当に常識ないから」

ここで言う常識だがこれは人類としての常識を遙かに超えている。なにしろ異世界人なのだ。しかも現代社会では少ないお姫様でもあるのだから常識がなくて当然かもしれない。


「私は大丈夫よ」

と微笑んでいる。マリーの正体を知ったらさぞかし驚くだろうな。せっかくなので気になることを聞いてみることにした。

「ところで陽葵さん」

「あら? 名前で呼んでくれるの? 私クラスメイトに異性に名前で呼ばれるの始めて!」

いつもより可愛い声を出している。

「ごめんなさい。名字を知らなかったので」

「冗談よ」

陽葵は今まで見せたことのない笑顔を見せた。こんな可愛い表情もするんだ。


「私の名字は日向。日向陽葵よ。よく『ひまわり』って読み間違われるけど、『ひゅうがひまり』だからよろしくね」

「こちらこそ!」

俺も爽やかさを強調して言ってみた。なんか気分がいい。高校入学以来暗かった俺だが、一気に心が晴れやかになった感じがする。


 俺が嬉しそうな顔で陽葵を見ていると、その背後に見てはならないものを発見してしまった。教室の入り口からそっと顔を出して俺の様子をじっと観察しているマリーの姿だ。「嘘だろ?」

これはやばいことになったぞ。恐らく家に帰ると処刑台が用意されているパターンだ。以前も同じようなことがあったからな。


「どうしたの?」

陽葵が怪訝そうな顔で俺を見ている。

「何でもない」

こう言うしかあるまい。家に帰ったら殺されるなどと言えたものではない。

「もしかして許嫁さんに怯えてるとか?」

「ははは、まさか」

図星である。もし、俺が明日登校してこなかったら今の言葉を思い出してください。


 そして運命の放課後。その日一日はなぜかマリーが近寄ってこなかった。完全に怒っているのだろうか? まさか本気で俺が浮気をしていると思っているんじゃないだろうな? だとしたら死刑の線も出てくる。そして俺は教室の異変に気付いた。あれ? マリーがいないぞ? まさか先に帰ったのか? なぜそんな早くに帰る? やはり処刑台を作るためか? 俺が頭を抱えて跪いていると、

「四朗君、一緒に帰りましょう」

と小百合の声がした。


「小百合! 会いたかったぜ」

「どうしたのよ?」

意表を突く俺の言葉に小百合が驚いた表情を見せる。考えてみたら付き合いは長いが会いたいなどと感情を込めて言ったのは、これが始めてかも知れない。ふと我に返った俺は赤面して下を向いた。


「どうせ原因はマリーでしょ?」

「ああ」

俺は今日の出来事を小百合に話した。

「確かにマリーが1人で帰るなんて怪しいわね」

俺たちは本当にゆっくり歩いて帰路についた。マリーが本気になったらいくら小百合といえども太刀打ちできないだろう。なにしろ黒魔術を使うのだ。一般人ではどうすることもできない。


 家の前まで来ると俺は小百合に、

「もしもの時は俺の持っているマンガを全てお前に譲る」

と遺言した。

「俺の分まで達者で生きろよ。じゃあな」

「私も一緒にあなたの部屋に行くわ。いいでしょ?」

「ダメだ。そんなことをしたら小百合にも被害が及ぶ!」

「私にいい考えがあるのよ。さあ行くわよ」


 俺が部屋に入ろうとドアを開けると案の定部屋の真ん中に大きな椅子が置かれている。それは赤く重厚な作りの椅子だ。

「おかえりなさい。遅かったわね?」

「これは何だ?」

まさか電気椅子ではないだろうな?

「椅子よ」

「それは見たらわかる」

「電気が流れる椅子よ」

やっぱり電気椅子じゃねえか。


「何でこんな物があるんだ?」

「あなたに使って貰おうかと思って用意したの」

これはかなり怒ってるな。だが、俺は何も悪いことはしてないぞ。何で死刑にならねばならんのだ。とも言えず俺が無言で部屋を出ようとすると、

「どこへ行くつもり?」

とマリーの声が聞こえてきた。

「ちょっと学校に忘れ物をして」

あれ? 体が動かないぞ? それどころか体が勝手に椅子の方へ移動し始めた。


「ちょっと待ってくれ! お前は誤解している」

「ふうん。どんな誤解かしら?」

「俺は浮気などしていない!」

「それが遺言でいいかしら?」

「いいわけないだろ!」

俺が叫んだ時、小百合が部屋に入ってきた。もう少し早く入ってこいよ!

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