第45話 続・俺の将来
どこへ行く当てもなく俺は走り続けている。とにかく少しでも遠くへ逃げなくてはいけない。一体どこに行けばいいんだ? 上空高く飛竜が飛んでいるのが見える。周りにはたくさんの人がいるが誰一人として騒ぐ者はいない。やはり飛竜が見えているのは俺だけなのか。
思わずホテルを飛び出してしまったが、外に出ないほうがよかったのかもしれない。だがホテルの部屋にいるといざと言う時に逃げ道がない状態となる。しかも日葵まで巻き添えにしてしまう可能性も否定できない。何しろ日葵はマリーにとって目の上のたん瘤的存在であり、今回のことも「日葵さえいなければ」と逆恨みしているかもしれないのだ。
俺が再び夜空を見上げると飛竜が2匹に増えている。いよいよヤバくなってきたようだ。電車で少しでも遠くへ行くか? しかし俺の持ち金は680円でどこまで行けるのだろうか? 山手線ならずっと乗ってられるぞ。う~む、我ながらばかげた発想だ。一周したら元の場所に戻ってくるではないか。そんな呑気なことを言ってる場合じゃない!
そうだ! 突然俺の脳が覚醒する。飛竜から逃れるのなら地下鉄に乗ればいいんだ。善は急げとばかり俺は地下鉄乗り場へと向かう。地下鉄のホームは平和だった。当然飛竜の姿は全く見えない。俺は安堵の気持ちから疲れがどっと出てホームのベンチに座り込んだ。
『これからどこへ行けばいい? 地下鉄って真夜中は締まるんだよな?』
俺は誰に話すともなく小さな声で呟く。
「葛城四朗さんですね?」
サングラスをかけた黒いスーツの男に声をかけられた。一体誰なんだ? 全く見覚えがないぞ。
「どちら様ですか?」
思わず敬語で聞いてしまう。それくらい怪しい風貌の人物なのだ。
「あなたのお知り合いの方からご依頼をされて捜しておりました」
男は低い声で言った。
俺の顔が少しひきつる。俺を探している人物って日葵かマリーに違いない。日葵だったらいいがマリーだったら最悪だ。
「誰からの依頼ですか?」
「依頼主の名前を申し上げることはできません」
「どうして?」
俺は少し焦る。これって殺し屋のセリフじゃねえか?
俺は慌てて立ち上がると男は俺の行く手を阻んだ。
「無駄ですよ。周りをよく見てください」
そう言われた俺は周りを見回した。黒のスーツを着た男が数名俺を取り囲む形で立っている。
「頼む。誰に頼まれたか教えてくれ」
「残念ですがそれはできません。ただヒントを差し上げましょう。とても身分の高い人です」
マリーの可能性が高くなった。俺は一か八かで走り出そうとしたが、すぐに捕まってしまった。
「無駄なあがきはやめてください。ことと次第によっては黒魔術を使って殺してもよいと言われていますので」
完全にマリーじゃねえか! これは終わったな。俺は抵抗するのを諦めた。
俺が連行されて地下鉄から地上へと上がると夜空に大きな女神の立体映像が見えた。この女神どこかで見たことがあるぞ。
「娘を悲しませる行為は許すことができません」
まさか2号いやマリーのお母さんか? これは非常にヤバすぎる。2号の魔力なら俺は瞬殺されてしまうぞ。
「そんなに娘が嫌いですか?」
「そんなことはありません」
「だったらなぜこのような行為をするのですか?」
「ごめんなさい。そんなつもりはなかったんです」
もうプライドも何もあったものじゃない。今は1分でも長く生きる道を探すだけだ。
「娘は真剣にあなたを愛しています。その気持ちが受け止められないのであればこの場で消えてもらうしかありません。一国のプリンセスがコケにされたとあってはピピプル家の名誉にかかわります」
かなり大きなことになってるぞ。今回は本気で最期かも。
「信じてください。俺はマリーのことを嫌ってなどいません。周りの人物に振り回されているだけです」
「それは本当ですか?」
「もちろんです」
俺は必死の眼差しで2号を見つめた。生きるか死ぬか今はそれしかないのだ。
少しの沈黙が続いた後、2号がゆっくりと口を開いた。
「わかりました。それが本当なら今すぐ娘と結婚式を挙げなさい」
「えええーーー!!!」
「今、驚きましたか?」
「いえ、滅相もない」
俺は慌てて両手を振る。
「プリンセスの結婚となると準備が必要です。1か月後に式を挙げますが、それでいいですね?」
「はい、わかりました」
俺の言葉を聞くと2号の映像は消えていった。とりあえず今日が命日になるのは避けられたようだ。しかし、これから俺はどうなるのだ? 俺はマリーと結婚して女王の婿として異世界に住むことになるのか? 俺の頭はパンク寸前だ。




