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第41話 どうした? 陽葵

 翌朝学校へ行くと俺は教室の窓から良く晴れた大空を眺めた。まさか生きてこの場所に来ることができようとは。『俺ってもしかして強運の持ち主なんじゃないか?』などとバカなことを考えていると背後から視線を感じた。俺が振り返るとこちらを見ていた陽葵が慌てて視線をそらした。


 何だ? 別荘から帰って以来、陽葵の様子がおかしい。声を掛けた方が良いのだろうか? いや、折角離れかけているのだからわざわざ近付かない方がいいだろう。俺は再び大空を眺めた。また視線を感じる。俺は気付かれないように横目で陽葵を見た。じっと見つめている。どうしたんだ? 何かあったのだろうか? とても気になる。


 俺はよせばいいのに陽葵の所まで行って声を掛けた。

「どうしたんだ? 最近様子が変だぞ」

陽葵は慌てた様子であたふたとしている。

「別に普通だもん」

『だもん』? 絶対におかしい。


「最近、文化祭実行委員もないし、話しかけてこないし、何かあったんじゃないか?」

「それはええっと、ええっと~」

陽葵はキョロキョロしながら狼狽えている。何だこいつ?

「ごめんなさ~い」

何で急に謝る!


「私そんなつもりじゃなかったの」

「何の話だ?」

「確かに四朗のベッドに潜り込んだのは確かだけど」

こら! 教室で何を言い出すんだ!


 ざわざわ。教室がざわつき始めた。

「あの時、服も脱ぐつもりだったけど恥ずかしくて」

「声がでかい!」

『陽葵と葛城が一線を越えたらしいぞ』

『ええー! これってヤバいよね』

「陽葵、とにかく教室を出るぞ。こっちに来い!」

俺は慌てて陽葵の腕を引っ張った。


 誰もいない階段下まで来ると俺は陽葵の手を離した。

「あんなことして私嫌われたよね?」

陽葵が手を顔に当てて泣き出す。

「ちょっと待て! 何で泣き出すんだ?」

「だって四朗に嫌われたら私生きていけないもん」

今度は俺の胸に顔を埋めて大泣きを始めた。こんなの見られたら大事だぞ。


「分かったから顔を上げろって」

「嫌よ。嫌われたくないもん」

離れない方が嫌われるぞ。いくら人が居ない死角的な場所だとしてもこの階段を利用する人はいる。人の気配を感じて見に来たらどうする。


「わー! 四朗嫌いにならないで!」

「大声を出すな!」

階段を上る人の足音が停まった。ふと見ると数人の女子がこちらを覗き込んでいる。

「これが違うんだ」

覗き込んでいた女子が特ダネを掴んだ記者のような顔で走っていった。これは真剣ヤバいぞ。噂になったら小百合やマリーの耳に入る可能性大だ。


「いいから離れてくれ」

「やっぱり嫌われてる~」

「違うから離れるんだ」

「四朗に嫌われるくらいなら四朗を殺して私も死ぬ!」

「もう少しこうしてていいよ」

ボクシング日本チャンピオンの陽葵に殴られたら本気で殺される。ああ、最悪の状況だ。どうしてこうなる?


「青春してるわね?」

ええーーー! マリー!

「マリーさん、どうしてここに」

「クラスメイトの女子に聞いたのよ」

噂広まるの早過ぎだろ! さっき覗き込んでいたの他のクラスの女子だぞ!


「私も居るわよ」

小百合まで! 俺は慌てて陽葵を突き放そうとした。

「さっき嫌ってないって言ったよね?」

陽葵は意地でも離れない。どうしてこんなに力が強いんだ?


「あら、いつまでひっついているのかしら?」

小百合が腕組みをして横目で俺を睨む。

「やはり昨日殺っておくべきだったわね」

マリーが魔術を唱える準備を始めた。

「ちょっと待ってくれ! こいつが離れないんだ」

「こいつが離れない? やっぱり嫌いになったんだ」

「違う! あっ違わない」

「違わない?」

「いや、違う?」


「四朗、今日帰ったら深刻な話があるわ」

マリーが低い声で言った。

「私もお邪魔するわね」

小百合もいつになく低い声だ。2人はそれだけ言うとどこかへ行ってしまった。


「これはまずいぞ」

小さな声で呟く。

「どうしたの四朗? 元気がないわね」

「誰のせいだ!!!」

真剣、家出も考えなきゃ行けないレベルだぞ。どうすりゃいいんだ? 余計なことを考えず陽葵を無視するべきだった。


 チャイムが鳴ったので教室に戻ると全員が俺と陽葵を見ている。これは転校を考えるレベルになったかも知れないな。俺はマリーと小百合に目をやった。2人はフンとそっぽを向く。多分逃亡して転校決定だ。遠くの地で1人暮らをしていけるかな? ため息が止まらない俺であった。

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