第40話 もう疲れたぞ
今日は休みだが、月曜日になったら小百合にどう言えばいいんだ? 芽依は正直に言えばいいって言ってたが、絶対に追求されるよな? それに1週間経てばまたマリーに拷問のような質問をされてしまう。その時はどう言えばいいんだ? 今度小百合って言ったら100%殺されるぞ。
その時、玄関から聞き慣れた声がした。
「四朗君、居る?」
げ! 小百合じゃねえか。どうして急に来るんだよ。ここ数日来なかったのに。
ガラ。
「四朗君、居るんだったら返事してよ」
「わりー」
どう言えばいいんだ?
「それで四朗君、どうなったの?」
「え?」
「マリーのことよ」
早速聞かれたぞ。
「ああ、そのことな。ええっと」
「別れたんでしょ?」
「そのことだが」
「何?」
死ぬのが怖かったと言えばいいんだよな? 早く言わなきゃ。
「どうして小百合がいるわけ?」
「マリー! あなたこそどうしているのよ!?」
「残念ね。四朗は私を選んだの」
「嘘でしょ? 四朗君」
「別にマリーを選んだわけでは」
「キュピ!」
げげ! 2号と3号が物凄い形相で俺を見ている。下手なことを言うと即死だぞ!
「死にたくなかったので・・・・」
俺はそっと2号を指さした。因みに3号はそれほど怖くない。
「ははあ、そういうこと。マリー、あなた四朗君を脅したわね?」
「あなたに洗脳されてたから正しい道に導いてあげただけよ」
小百合は俺の方に向き直っていった。
「ここではっきり言って。私にするの? それともマリーにするの?」
これは困ったぞ。小百合と言えば殺されかねない。いや確実に殺される。でも、ここでマリーと言ったら今度こそ小百合は俺の元からいなくなるだろう。俺も男だ。たとえ死んでも好きな人の名を告げるまでだ。
「小百・・・・」
「キュピーーー?」
何で3号が俺の周りを回り出すんだ? しかも『言ってみ?』といった風に笑みを浮かべながら俺を見ているぞ。
「どうしたの? 四朗君」
小百合も俺の状況が分かっているだろうに。どうして答えさせようとしているんだ?
「四朗、はっきり言ってあげなさい。いつまでも期待を持たせるのはかえって可哀想だわ」
どうしたらいいんだ。
その時、芽依が部屋に入ってきた。
「これ以上お兄ちゃんをいじめないで!」
おお! まさしく天使様!
「お兄ちゃん、これを持って」
芽依が俺に細長い紙を渡してきた。
「何だこれ?」
「白魔術のお札だよ」
おふだって・・・・。そんな物効くのか?
「さあ、早く自分の本心を言うのだよ」
「え? え? いいのか?」
「早く言って」
「本当に大丈夫なのか?」
「芽依を信じて」
「じゃあ、俺の好きなのは小百合だ!」
「何ですってー!!!」
芽依が叫んだ。
「え? こういうことじゃないの?」
「そこは芽依の名前を言うとこでしょう!」
「キュピー!」
おお! 息ができない!
「芽依! このお札って」
「おかしいな? 黒魔術を弾くはずなのに。やっぱり芽依が適当に作った物じゃダメなのかな?」
「そんな物ダメに決まってるだろうが!!!」
俺は死にそうになりながらも必死のツッコミを入れた。
「ごめんなさい。今のは嘘です。どうかお許しください」
少しだけ息ができるようになった。
「四朗君、情けないわよ」
小百合が俺を軽蔑した目で見ている。
「この状況でどうしろっていうんじゃい!」
これまた心の底からツッコんだ。
もう嫌だ。本気で疲れたぞ。俺はこの3人に向かって提案した。
「お願いがある」
「何よ?」
「お前ら3人で戦ってくれ。勝った人を全力で愛すると約束する」
「本当ね?」
「ああ」
「行くわよ小百合。覚悟しなさい!」
「望むところよ。今日こそ決着を付けてあげるわ」
「この2人が戦って疲れたところを芽依が仕留めるのだよ」
「本当に戦うんかーい!」
「痛い!」
芽依が叫んだ。
「大丈夫か!?」
「芽依はもうダメだよ。最期はお兄ちゃんの胸の中で終わりたい」
そう言うと芽依は俺に抱きついてきた。
「大丈夫か! しっかりするんだ!」
そして30分。
「絶対になんともないわよね?」
「芽依ちゃん、いつまで四朗君に抱きついてるつもり?」
「え? どういうこと?」
俺の頭の上に疑問符が浮かび上がる。
「四朗は単純すぎよ!」
芽依がにやっと笑っている。もしかして死にそうというのは嘘なのか?
「四朗君、私ももうダメだわ」
小百合が寄りかかってくる。
「ちょっと! 小百合まで何してるのよ!」
結局、戦いはうやむやの内に終わってしまった。一時はどうなることかと思ったぞ。
「お兄ちゃん良かったね?」
芽依が小さな声で呟く。もしかして全ては目にの計算通りなのか? お前はこんなに頭が良かったのか? 俺はおバカキャラだった芽依をもう一度見た。




