第39話 マリーと別れる!
あれ以来小百合は俺を見ると、
「いつマリーと別れてくれるのよ」
と聞いてくるようになった。そろそろ行動しないとまたまずいことになりそうだ。
「今夜言うよ」
「本当! 頑張ってね」
よし、今度こそ俺はやる! もう優柔不断な俺とは決別だ!
そして決意の夜。俺はマリーのいる芽依の部屋に向かった。
「マリー、ちょっと話がある」
これに素早く反応したのはマリーではなく芽依だった。
「どうしたのお兄ちゃん。物凄い顔をして」
「今から大切な話があるんだ。マリー、俺の部屋に来てくれ」
俺は颯爽と向きを変えると自分の部屋へと進み出した。
「お兄ちゃん、ちょっと」
芽依が俺の背後に来てそっと声を掛けた。
「何だ?」
「お兄ちゃんの部屋はまずいよ」
「なぜだ?」
「死にたいの?」
何を言い出すんだこいつは?
「俺が何をしようとしてるのか分かってるのか?」
「小百合さんに言われてマリーさんに引導を渡すつもりなんだろうけど大切なことを忘れてるよ」
大切なこと? 何だそれ?
「大丈夫だ。これ以上小百合を悲しませるわけには行かない。俺は決心したんだ」
「凄くいいことを言ってると思うけど、そうはうまくいかないと思うよ」
「何が言いたいんだ?」
「ちょっと。来たんだけど。何の用事?」
「ああ」
俺は慌てて俺の部屋に入った。
「まあ、座ってくれ」
「何よ。改まって」
「実はマリー。俺は決心したんだ」
俺は少し間を取って再び続ける。
「俺と別れてくれ」
「な、な、な」
「俺は小百合一筋にしようと決めたんだ」
マリーは深呼吸をしている。どうやら俺の決意が通じたようだ。
「四朗。言ってる意味が分かってるの?」
でもないか。
「これ以上小百合を悲しませたくないんだ。分かってくれ」
ん? 心なしか息がし辛いような。
「それ本気で言ってるの?」
「ああ、俺の決心は・・・・あれ?・・・・かわらな・・・・」
息ができねえ!
「小百合に唆されたのね? もう一度聞くわ。本気で言ってるのね?」
「ああ」
ウオーーー! 完全に息が止まったぞ!
「それが本当なら四朗を殺して私も死ぬわ」
ええーーー! これはまずいぞ! 俺は体をねじってのたうち回った。角度によっては少しだけ息ができる。
「魔術の効き方が悪いようね。だったら仕方ないわ。とどめを刺させて貰うわね」
どうする気だ? また空中からタライを落とすのか? あれなら何とか耐えられそうだ。
「お母様、お父様。可愛い娘が絶望のどん底に落とされているの。何とかして!」
何だと! それはまずい! マリーの魔術なら何とかなっても魔力が桁外れに強い2号が本気になったら俺はイチコロでやられる!
2号の目が光り出した。俺は苦しみながら2号に手を伸ばしたがどうにもならない。
「さようなら四朗。本気で好きだったわ」
マリーの冷たい言葉が俺の頭に響く。
俺が覚悟を決めたその瞬間。
「待って!」
と言う声と共に芽依が部屋に飛び込んできた。
「マリーさんのお母さん。さっきマリーさんがお兄ちゃんを殺した後私も死ぬわって言ってたよ」
2号の目の光が元に戻った。
「お兄ちゃんは小百合さんに利用されているだけだから、もう少し様子を見た方がいいよ」
「キュピ?」
2号と3号が何か話し合ってる。そして、いつの間にか俺の呼吸も元に戻っていた。
「芽依、どうしてそんなことが分かるの?」
マリーが芽依に尋ねた。
「芽依ね。お兄ちゃんと小百合さんが電話してるの聞いたんだよ。小百合さんがマリーさんと別れてくれないならお兄ちゃんと別れるって言ってたよ」
「やっぱり唆されてたのね」
「それは違・・・・」
芽依が俺の鳩尾を肘でこ突く。ぐ! マジで痛い。
「四朗、もう一度聞くわ。本気で私と別れたいの?」
「いやそれは」
「マリーさん、小百合さんはとても頭がいいからお兄ちゃんをマインドコントロールしてるんだよ。だからすぐには冷めないと思うよ」
「なるほど、それもそうね。わかったわ今日の所は許してあげる。1週間後もう一度聞くわ。その時も小百合を選ぶようなら覚悟をしてよね?」
「わかったよ」
芽依は俺の代わりに返事をして俺を部屋から連れ出した。
「お兄ちゃん、無計画にもほどがあるよ。簡単に別れられるならとっくに別れてたはずだよ」
それもそうか。
「マリーさんが黒魔術を使うから言い出せなかったんじゃなかったの?」
言われてみればそうかも?
取り敢えずは芽依のおかげで命拾いをしたようだ。だが、小百合にはどう報告すればいいんだ? 俺は頭を抱えて座り込んだ。
「正直に言えばいいんだよ」
「え? お前俺の考えていることが分かるのか?」
「わかるよ。芽依はお兄ちゃんの一番の理解者だよ」
そうだ。そうだよな。俺と一番長くいる芽依が俺のことを一番知ってるんだよな。
「芽依、俺はどうしたらいいんだ?」
「それは芽依を選べばいいんだよ」
少しでも頼りになると思った俺がバカだった。




