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第38話 小百合はどこに

 夜の10時、小百合は俺の家には現れていない。もう一度小百合の家に電話してみることにした。

「小百合帰りました?」

「帰ってないわよ。てっきり四朗君と一緒にいると思ってたわ」

これはおかしすぎるだろう。


 俺は家を飛び出し小百合を捜しに出かけた。駅前、コンビニ、ゲーセン、俺は思い当たるところを全て歩き回ったが、小百合の姿はどこにもない。この時間だと殆どの店はもう閉まっている。


「四朗! いきなり一人で飛び出して行かないでよ」

マリーの声だ。

「お兄ちゃん、ちょっとは相談して欲しいな」

芽依も来たのか。


「ごめん、小百合が心配だったんだ」

「小百合のことなんてほっといたらいいでしょ!」

「そうはいかない。俺のせいでどっかへ行ったんだからな」

「仕方ないわね。小百合の居場所を教えてあげるわ」

「何でそんなことが分かるんだ?」

「お母さんの黒魔術で捜して貰ったのよ」

「黒魔術で分かるのか?」

「分かるわ。小百合が出す微量の脳波を探知してこのタブレット上の地図で表示するの」

「それって絶対に異世界の見つけ方じゃないよね?」


 まあ、たとえツッコミどころいっぱいの方法でも小百合の居場所が分かればいいか。

「この近くにある神社の境内にいるわね」

「どこだ?」

マリーが持ってきたタブレットに赤い点が点滅している。俺たちは急いでそこに向かった。


 小百合が賽銭箱の前に座っている。

「小百合!」

「四朗君?」

「どうしてこんな時間にこんな所にいるんだ?」

「ごめんなさい。どうしても一人になりたくて」

「お母さんも心配してたぞ」

「それなら今お母さんに電話したわ。今夜は四朗君の家に泊まるって」

え? そんな大胆なことを言ったのか?


「それで? お母さんは何て言ってた?」

「いいわよって」

本当かい! 男の家だぞ!


「さあ、見つかったんだから帰るわよ」

マリーが少し不機嫌な顔で俺の腕を引っ張った。

「悪い。俺と小百合だけで話をさせてくれ」

「そんなことできるわけないわよ! そうよね芽依」

「う~ん」

てっきり速攻で反対すると思っていた芽依が迷っている。どういうことだ?


『ここは迷うところだよ。このまま小百合さんとお兄ちゃんの関係を悪化させた方が良いのか。一旦、小百合さんとの仲を復活させてマリーさんに対抗させた方が良いのか。ここは冷静に判断するのだよ芽依。小百合さんよりマリーさんの方が行動的だよね。と言うことはお兄ちゃんを無理やり奪いに来るのはマリーさんの方ってことか。でもこれ以上お兄ちゃんと小百合さんの心の絆が強まるのもまずいし。ならこの方法が一番だよね』


「マリーさん、ここはお兄ちゃんに任せた方がいいよ」

「でも!」

「大丈夫だよ。お兄ちゃんを信じようよ」

「そんなのダメよ」

「いいからいいから芽依に任せて」

芽依がマリーの背中を押して去って行った。


『芽依、ここは?』

『この木の陰でお兄ちゃんと小百合さんを見張るのだよ。あまり仲がよくなりそうだったら飛び出すよ』

『なるほど』


 二人が立ち去るのを見届けた俺は小百合に向かって話しかけた。

「小百合、俺が悪かった」

「何のこと?」

「わかったんだ。俺は小百合の気持ちを考えずに行動していたことが」

「え?」

「小百合がいなくなって初めて分かったんだ。俺の優柔不断な態度で随分苦しませてしまったな」

「四朗君、それ本気で言ってるの?」

「勿論だ」

「嬉しい」

小百合が顔を手で覆った。もしかして泣いているのか? 俺はそっと小百合の横に座る。


「今日、小百合を捜し回っていろんな場所に行ったんだ。その時、生徒会長さんに言われたよ。『変な子に振り回されてると宝は手に入らないものよ』って。その時、その通りだと思ったんだ」

「じゃあ、マリーと別れてくれるの?」

「ああ」

俺は無意識のうちに小百合の肩を抱き寄せ、

「そのつもりだ」

と告げた。


 カッコーン! 大きなタライが俺の後頭部を直撃する。

「マリーね? どこにいるの?」

「ここよ」

マリーが木の陰から姿を現した。


「恋人の会話を盗み聞きするなんて最低な行為ね?」

「誰が恋人よ」

「今、四朗君はあなたと別れると言ったのを聞いてなかったの?」

「そんなの巧みな技術で言わせただけじゃない」

「何ですってー!」

「突然いなくなって心配させて男心を掴もうなんて姑息な手段ね」

「私がいなくなったのは計画的だと言ってるの?」

「勿論よ。そんな手段を使わないで正々堂々と告白して振られなさいよ」


 あまりに迫力のある会話に口を出すことができない俺は、タライのダメージが大きすぎたことにしてそっと聞き続けるのであった。

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