第37話 行方不明?
陽葵の別荘から帰ってからというもの小百合は俺に冷たい。まだ怒ってるのか? 窓の外を見てはため息をついている。これは誤解を解いた方が良さそうだな。
「小百合。どうした? 窓の外ばかり見て」
俺はこれ以上ない爽やかな声で言う。
「誰のせい?」
やはり怒ってた。
「マリーはしっぽだったんだから仕方ないだろう?」
「それがどうしたのよ」
これはかなり怒ってるぞ。何とかご機嫌を取らねば。
「そうだ。今度の休みにケーキでも食べに行かないか? 美味しい店を聞いたんだ」
「日向さんにでも聞いたの?」
思った以上にひねくれたな。
「ネットで調べたんだ」
「今、聞いたって言ったわよね」
しまった。変に嘘をつくとすぐに見破られるか。
「実は芽依に教えて貰ったんだ」
「じゃあ、そう言えばいいじゃない」
「ごめん、これ以上怒らせたくなかったから」
「ふうん」
少し語気が柔らかくなったか?
「何、小百合の機嫌を取ってるのよ」
このタイミングでマリーかよ。
「小百合、いい加減四朗を諦めたら? 同じベッドで寝たことがないのあなただけだし」
煽るな!
「そうね。諦めようかしら?」
え? 今なんて言った?
「おい小百合、嘘だよな?」
「ごめん、ちょっと1人にしてくれる?」
「やった!」
マリーがガッツポーズをしている。
「じゃあ向こうに行きましょう。小百合は1人で心の整理をしたいらしいから」
「おい、そんなに強く引っ張るなよ」
俺は無理やり小百合から離されてしまった。それにしてもまさかあんな言葉を小百合から聞こうとは思ってなかったぞ。どこまで本気で言ったんだ? 考えてみたら俺が優柔不断なばかりに今まで小百合の気持ちを踏みにじっていたよな。これは何とかせねば。何しろ小百合は俺の本命だからな。
そう言えば別荘から帰って以来陽葵も話しかけてこないな。これまたどうしたんだ?
「これで一番のライバルを排除できたわね? 後は陽葵か。でもあいつは四朗が金の力に負けなければ大丈夫よね? それにお金なら私の方がたくさん持ってるに決まってるし。芽依はまだ子どもだから、四朗がロリコンでない限り大丈夫よね?」
陽葵がこっちを見て目をそらす。何があったんだ? 気になるがここは気付かなかったことにしておこう。下手に声を掛けるとややこしいことになりかねない。今は小百合が優先だ。
その日は放課後恒例の文化祭実行委員会もなかった。珍しいことだ。もしかして本当に嫌われてしまったのか? 別にいいけど。ちょっとあの豪勢な生活は惜しい気もする。いやいかん。ここで変なことを考えると墓穴を掘りそうだ。とにかく小百合と2人で話す機会を得たい。
「ごめん四朗。今日は先に帰って。用事を思い出したの」
マリーがそう言うとどこかへ去って行った。これはチャンスなのでは? よし、小百合を捜そう。
まずは生徒会室へ行ってみるか。
「すみません。林郷さん居ますか?」
「今日は具合が悪いとか言って帰ったわよ」
生徒会室にいた先輩が教えてくれた。確かこの人生徒会長さんだったよな?
「あなた葛城四郎君でしょ?」
「はい、そうですが」
「林郷さんはこれ以上ない素敵な女性よ。それを振るなんてもったいないわ」
「そんな振ってなんか」
「はっきり言ってたわ。変な子に振り回されてると宝は手に入らないものよ。気を付けなさい」
はっきり言ってた? 振られたってことをか? でも生徒会長さんの言う通りだ。俺のあやふやな態度がこんな結果にしてしまったんだ。小百合を捜さなければ。
俺は学校中を捜したがどこにも小百合の姿はなかった。ん? さっき先輩が帰ったって言ってなかったか? じゃあ、学校を捜しても居るわけないか。俺って本当にバカだな。小百合のいそうな所。俺の家か? あいつ俺が家に居なくても関係なく居座ってるからな。そうだ。芽依に電話して聞いてみるか?
「もしもし。お兄ちゃんどうしたの?」
「小百合が来てないか?」
「来てないよ」
「そうか」
「小百合さんがどうしたの?」
「どこにも居ないんだ」
「きっとお兄ちゃんに愛想を尽かして消えたんだよ」
ズキ!
「芽依的にはライバルが減って嬉しいけど、小百合さんが居ないと夷を持って夷を制すの作戦が使えなくなるよ」
何を言ってるのだ? とにかく我が家に来てないのは分かった。となると自分の家に帰ったのか?
「もしもし、林郷さんのお宅ですか?」
「あら? この声は四朗君ね。どうしたの?」
「小百合って帰ってますか?」
「まだだけど。どうかしたの?」
「ちょっとお話ししたいことがありまして」
「やだ、毎日話てるじゃない」
小百合のお母さんが笑っている。
これは困ったぞ。どこに行ったんだ? 俺は当てもなく小百合が行きそうな場所を彷徨った。どこに行ったんだ? これだけ捜してもいないなんて。途方に暮れる中、俺は家に向かっていた。疲れもあったが一旦家に帰って作戦を練り直そうと思ったからだ。それにしてもなぜこうなるんだ? まさか警察に頼むことにはならないだろうな? 一抹の不安を感じながら家路に向かう俺であった。




