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第3話 犬猿の仲

「納豆フラペチーノください」

「申し訳ありません。その様な商品はございません」

マリーは納豆にこだわり続けている。いつから納豆好きになったんだ?


「マリーって相変わらず変わってるわね」

小百合が小さな声で呟いた。本来なら全員に向けてのメッセージなのだろうが、俺の母親に変なイメージを植え付けたくないという配慮から小さな声にしたのだと予想される。


「キュピッ・・・・」

「お前は注文するな!」

俺は慌てて3号を鞄に押し込んだ。店員の若いお姉さんはほんの少し違和感を憶えたのか変な顔で俺を見ている。俺は愛想笑いでそれを誤魔化した。


 全員が注文を終えて席に着くとちょっとしたグループ的な存在になる。何しろ6人もいるのだ。テーブル1つでは足りず、2つのテーブルをくっつけて使用することになった。

「小百合はホットコーヒーでいいのか?」

「ええ、コーヒーが大好きなの」

絶対に嘘である。普段は超甘いものばかり食べてるくせに。遠慮と見栄でコーヒーにしたのだろう。


 それに比べマリーは超完熟メロンフラペチーノというこの店で一番高価なドリンクを注文している。こいつには貧乏な我が家に対する遠慮というものはないのか? まあ仕方ないのかも知れない。何しろマリーは向こうの世界ではお姫様らしいからな。何不自由なく育てられたのだからこうなるのも頷けるというものだ。因みに父親である3号は王様。母親である2号は妃と言うことになる。「王室全員が城を空けていいのか?」と思うのは俺だけではないはずだ。何でもマリーのお姉さんは異世界で一番強い人物らしく、彼女がいれば城も安泰なのだとか。姉妹でこうも違うものかと思ってしまうが、これに触れるとマリーが激怒するので俺は何も言わない。


「芽依ちゃんもいよいよ中学生ね」

小百合が芽依に話しかけた。

「これで芽依も大人の仲間入りだよ」

中1はどう考えてもまだ子どもだ。


「勉強で分からないところがあったら何でも聞いてね」

「ありがとう小百合さん」

小百合の申し出に芽依は素直に喜んでいる。小百合にとって芽依と同盟関係を結ぶのは必須だ。芽依は敵対関係にあるマリーを押さえる唯一の人物なのである。


「だってお兄ちゃんは当てにならないもんね」

芽依が無邪気な笑顔でとんでもなく失礼なことを言っている。俺だって中学生の勉強ぐらい教えられるぞ。あっいや確実にとは言えんが。

「私だって教えられるわよ!」

マリーが慌てて主張した。


「だって小百合さんの説明とても分かりやすいんだもん」

「大丈夫よ。私が本気になれば小百合なんて目じゃないわ」

何を向きになってるんだ?


「芽依、小百合さんがいいなぁ」

「とにかく小百合はダメよ。結城家への出入りは禁止!」

なるほどこれが目的だったのか。因みに結城とは俺の名字である。


「芽依ちゃん安心して。マリーが何と言おうと芽依ちゃんの勉強を見にいってあげるからね」

小百合の挑発に当然のごとくマリーが反応する。

「何? やるって言うの?」

「ええ、望むところよ」

2人の声がやや大きくなってきている。まだマリーがしっぽアクセサリーの時にこの2人がボクドナルドで喧嘩を始めたときのことを思い出す。二度とあんな恥ずかしい思いをするのはごめんだ。


「2人とも止めろって」

思わず俺は仲裁に入った。

「四朗止めないで、売られた喧嘩は買わないわけにはいかないわ。それが黒の国の掟よ」

黒の国とはマリー一族が統治する国のことだ。

「四朗君。女は例え負けると分かっていても戦わないといけない時があるものよ」

どこかで聞いたようなセリフだな。


 定員を初め他の客もこちらを見始めた。どうにかせねば。そうだ。

「いいのか小百合? 俺の母親が見てるぞ」

「あらやだ。私ったら心にもないことを言ってしまいましたわ。おほほほ」

「何よこいつ。気持ち悪い」

マリーは拍子抜けしたような顔で小百合を見た。


 犬猿の仲のこの2人。俺はこの2人と高校生活を送らねばならないのである。しかも俺たち3人は同じクラスなのだ。ああ、前途多難な未来しか見えねえ。

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