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第25話 お買い物デート

 日曜日の第2弾。今日は芽依とデートの日だ。マリーの提案では小百合とデートする予定であったが用事があるそうなので順番を入れ替えた。

「お兄ちゃん、今日は楽しみだね」

無邪気に喜んでくれるのは嬉しいが、手に持った雑誌が不安でしかない。女性用のファッション誌だ。まさか本当にお買い物デートにするつもりじゃないよな?


 俺と芽依は大都会の駅で電車を降りた。目の前にはデパートと書かれたビルが聳え立っている。俺はそれを無視して歩き出すと、

「お兄ちゃんどこ行くの?」

芽依が俺を止めた。

「今日行くのはこのデパートだよ」

やはり高い服を買うつもりなのか?


「言っとくが俺はお金など持ってないからな!」

「時給980円のバイトを1日4時間。14日間働いたから54880円。マリーさんとのデートで12080円使ったから残り42800円あるよね?」

「何でそんなこと知ってるんだ?」

「芽依はお兄ちゃんのことは何でも知ってるのだよ」

怖い、怖すぎるぞ芽依!


「だが、お前に服を買ってやるとは言ってないからな!」

「そこは芽依の腕次第だよ」

何だその自信は? 絶対に買わんからな。


 デパートの中は思っていた以上に混んでいた。

「おい、せっかく都会に来たんだゲーセン行こうぜ」

どう考えても高い服を買わされるよりゲーセンでコインゲームをして貰った方が安く済む。

「今日は行かないよ」 

なかなか頑固だな。ゲーム好きの芽依なら飛びつくと思ったんだが。


 芽依は俺の腕を引っ張って女性服のフロアに連れて行った。かなり本気だな。油断するとやばいことになるぞ。

「お兄ちゃん、これなんかどうかな? 雑誌に載ってた服なんだけど」

「ダメだ。似合わん。高い。もう少し背が伸びてからにしろ」

「もう」

これだけ言えば諦めるだろう。それより早くこの場所から離れたい。俺には不似合いすぎるだろう。


「お兄ちゃんこっちも可愛いよね?」

意外と忍耐強いな。普通なら怒り出すところなのに。

「言っとくが買わないからな」

「どうして~?」

芽依が俺の胸に顔を埋め甘えた声で言った・。


「こら! 止めろ。みんなが見てるだろう!」

「買ってくれる気になった?」

「ならん」

「ふうん」


 芽依は突然俺から離れると、

「お兄ちゃん、酷いよ~」

と泣き出した。

「おい! 止めろ! 恥ずかしいだろ。めっちゃ目立ってるし」

「買ってくれる?」

芽依が上目遣いで俺を見る。はっきり言って可愛いが、ここで買ってしまってはこの手を何回も使われそうなので断る。


 その時、芽依が急に泣き止み俺から少し離れた。

「あれ? 葛城さん。偶然だなあ。お買い物?」

「まあね」

「僕も夏服を買いに来たんだ。今はお母さんの買い物を待ってるところ」

クラスメイトの男の子か?

「ところで僕の書いた手紙読んでくれた?」

「読んでないよ」

「どうして? 一生懸命書いたのに」

「あれラブレターだよね? 芽依は好きな人がいるから誰とも付き合う気がないの」

「ええーーー!」

少年が肩を落として去って行く。


「芽依、お前もしかしてモテるのか?」

「今週貰ったラブレターはたったの10通だよ」

何という意外な事実。確かに可愛いのは認めるが。


「もしかして芽依?」

今度は女の子の声?

「あ、里沙ちゃん」

「芽依ちゃんもお買い物?」

「そうだよ。今、買って貰おうと工夫してるとこだよ」

里沙ちゃんとやらは俺を見つけじっと見てくる。


「こちらの方が芽依ちゃんのお兄さん?」

「そうだよ」

「初めまして」

一応挨拶をしておく。


「芽依の将来の旦那さんだね?」

「その通りだよ~!」

学校で何を言ってるんだ?

「幸せにしてあげてくださいね」

「俺たちは兄妹だから」

「血が繋がってないんでしょ?」

どこまで話してるんだ?


「お兄ちゃん、この服芽依に似合うと思う?」

「似合わねえ」

この言葉に里沙が激しく反応した。

「ええ! 酷~い!」

「え?」

「凄く似合ってるじゃないですか?」

「そ、そうだね」

俺はたじろいでしまう。当然ながら俺は女性にきつく言われるのに弱い。俺の周りに強い女性がたくさん居るのが原因であることは言うまでもないのだが。


「お兄ちゃん、これ買って~」

「え? それは」

友達が居なければ速攻で否定するのだが。

「買ってあげてください。妹兼恋人が可愛くなるんですよ。こんな最高なことはないじゃないですか?」

「わかった」

「40000円になります」

店員の声が遠くに聞こえるほどショックを受けた俺ははしゃぐ妹の後ろをトボトボと歩くのだった。 

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