第21話 俺にはプライバシーはないのか!?
俺は家に着くと芽依の部屋に直行して怒鳴りつけた。
「マリー! よくも騙したな!」
部屋の中ではマリーと芽依が変なモニターを見ている。
「何してるんだ?」
「録画の再生」
「え? 芽依の部屋にテレビなんてあったのか?」
「テレビじゃないよ、お兄ちゃん」
「じゃあ、何だ?」
俺は画面を覗き込んだ。あれ? 画面に映ってるの俺じゃね?
「ふ~ん。陽葵と手を繋いで帰ってたのか」
「え? え?」
「そして陽葵のアパートに行ってメイプルクッキーを一緒に食べたのね」
「どういうことだ? 何でそんなことを知ってるんだ!」
マリーはニヤリと笑みを浮かべ俺の顔を見た。
「このモニターにあなたの24時間が映し出されるのよ」
「そんなバカな!」
「黒魔術の一つね」
「俺にはプライバシーがないのか!?」
「ないわね」
当たり前のように言いやがった。
「お兄ちゃん。陽葵さんが好きなの?」
何気に目つきが怖い。
「そういうことはないけど」
「だったらどうして手を繋ぐの?」
「マリーに騙されたのでつい反抗心から」
「どうして陽葵さんのアパートに行くの?」
「俺の好きなメイプルクッキーがあるって言われたから」
ダメだ。怒鳴りに来たのに俺の方が責められてる。
いや、そんな問題じゃない! 俺のプライバシーを守らなきゃ!
「おい、俺の行動を監視するのはよせ!」
「嫌よ」
「これは立派な犯罪だぞ!」
「四朗が浮気性なのがいけないんでしょ?」
俺が浮気性? 浮気なんてしたことないぞ。それを言うなら俺の恋人は小百合であってお前の存在そのものが浮気相手ってことになるからな。と言いたいがこれを口にすると命が危ういので言わない。
「こんばんは」
小百合が突然部屋のドアを開けて入ってきた。
「だから玄関で『お邪魔します』だって言ったろ」
「ああ、そうだったわね。はいはい」
全く聞く耳を持たないようだ。
「で? 何で来たんだ?」
「お父さんの車で」
「そういうことを言ってるんじゃない! 何しに来たんだと聞いてるんだ」
「マリーに呼び出されたのよ」
何ですと? 俺の顔は青ざめた。この状況から見て小百合にこの録画を見せて3人で話し合うパターンじゃねえか。これってやばくね? 確かに今日はやり過ぎた気がする。俺から陽葵と手を繋いだもんな。
数分後、小百合が低い声で俺に言った。
「そうなんだ」
「いや、それはその・・・・」
「そんなに私より日向さんがいいならそうしたら?」
こういう場合なんて答えれば小百合の機嫌が直るんだ? 俺は必死でない知恵を絞る。
「俺はお前以外に誰とも付き合う気はないんだ」
これだこれで決まった!
「いい度胸をしてるわね」
マリーが変な巻物を持って近付いてくる。なるほど、こう言うとマリーが怒るわけか。俺は少し学習した。
「俺はお前たちと一緒にいるこの空間が好きなんだ。自らそれを崩すようなマネをすると思うか?」
「お兄ちゃん、陽葵さんのアパートへ行った人が言う台詞じゃないよね」
ウッ! 鋭いぞ妹よ。
「一人暮らしの女性の部屋によく行ったよね? もしかして変な期待してた?」
「決してそんなことはない!」
中1の発想じゃないだろ!
「取り敢えず四朗は死刑でいいかしら?」
「四朗君、短い付き合いだったわね」
「お兄ちゃん、芽依は悔しいよ」
「ちょっと待て! 俺は陽葵に何もしてないぞ」
「本当にそうかしら?」
「このビデオに全てが映ってるんだろ? だったら分かるじゃねえか」
こいつらに必死で言い訳をしなければいけないなんて、はっきり言って情けない。
「もう一度だけチャンスをあげるわ。今度、陽葵のアパートに行ったら即死刑ね」
「それは大丈夫だ。約束する」
「それにお詫びとして今度の日曜日に私とデートしなさい」
なぜそうなる。ん? このパターンて。
「ちょっとマリー! どういうことよ?」
「そうだよ。どうしてマリーさんがお兄ちゃんとデートすることになるわけ?」
やっぱり。
「いいじゃない」
「よくない!」
小百合と芽依が同時に叫んだ。
「だったらこうしましょう。今週の日曜は私、来週の日曜は小百合、そしてその次の日曜は芽依がデートするってのはどうかしら?」
「断る!」
俺は本能的に叫んだ。嫌な予感しかしない。
「デートの模様はこのモニターで分かるから、暴走したら分かるわよ」
「それもそうね」
「なるほどだよ」
俺の言葉は無視か~い!
「じゃあ四朗。日曜までにデートコースを考えておきなさい」
「何で俺が」
「男の役目よ」
何だこの差別的発言は。
「3人とも同じでいいんだな?」
「いいわけないわよ!」
「お前ら誰のデートコースがよかったとか言うじゃねえか」
「それもそうね。わかったわ。デートコースは私達で考えることにしましょう」
「何にしようかな? 今から楽しみだよ」
これはこれで不安な気もする。




