第20話 俺の最期
陽葵は少し悩んだ末に小百合に切り出した。
「林郷さん。あなたは生徒会があるから忙しいんじゃなくて」
「忙しくても頑張るわ」
「時間的に無理だと思うけど」
「たぶん大丈夫よ」
「でも生徒会の仕事に影響が出るのは明らかよね? それでもいいの?」
「うっ」
陽葵がニヤリと笑う。
「次に桂木さんね。あなたはこういう仕事をしたことがないわね」
「それがどうしたのよ?」
「やはり経験者がいいと思わない?」
「私なら経験がなくてもやれるわ。それにどうしてもって言うのなら実行委員経験者の四朗を加えて3人でやりましょう」
陽葵は再び腕組みをして考える。
「3人じゃダメなのよねえ」
「どういうこと?」
「わかったわ。この話はここまで。後で人選をどうするか考えましょう」
陽葵って結構強引な性格だな。絶対に俺と2人でやろうとしてるだろ。
そして放課後。俺はすぐに帰る支度をして教室を出た。陽葵に捕まったら大爆発しかねない。よし、廊下にはいない。生徒玄関まで無事に来られた。あと少しだ。俺は靴に履き替えると急ぎ足で歩いた。校門まで後10m。もう大丈夫だろう。
「そんなに急いでどこに行くの」
「ギャー! 陽葵?」
「何そのお化けに出会ったようなリアクションは?」
今の状況だとお化けより怖い。陽葵の態度次第では日本滅亡だぞ。
「ははは」
「せめて何か言い訳しなさいよ」
そんなこと言われても水爆を頭に付けてるとは言えまい。
「偶然出会ったことだし一緒に帰りましょう」
絶対に偶然じゃないと思う。
「部活はいいのか?」
「私部活に入ってないわよ」
「へー、そうなんだ。でも、ボクシングチャンピオンなんだろ?」
「この学校にはボクシング部がないのよ」
「そうだったのか」
確かに他の部活に入るよりはジムで訓練した方が良さそうだな。
「さあ、行きましょ」
陽葵がさりげなく俺の腕にしがみつこうとする。
「あー!」
「どうしたのよ急に?」
「お前は死にたいのか!」
「?????」
「とにかく今の俺にくっつかないでくれ!」
「何? 私とやるっての? 手加減しないよ」
「そういうことじゃなくて」
もうダメだ。どう転んでも無事に済みそうにない。
「こうなったら意地よ。絶対に抱きついてやるんだから」
「×△◎※□!◆」
「日本語になってないわよ」
「お願いだから抱きつかないでくれ! 何でも言うこと聞くから」
「何それ? でも何でも言うこと聞いてくれるのね」
「いや、今のはなし」
「もう遅いわよ」
陽葵は満面の笑みで考え込む。
「2人でデートとかぁ。旅行もいいわね。やっぱり結婚かしら?」
それ確実に死ぬだろ! でも言えない。
「わかった。私にハグして」
「俺の話聞いてるか? 抱きつかないでくれって言ったんだ!」
「だから四朗の方からするのはいいでしょ?」
「それもダメだ」
う~ん。もどかしい。いっそのこと今の状況を言っちゃおうかな?
「何か隠してるでしょ?」
「べ、別に何も」
「私に隠し事をしても無駄よ。付き合い長いんだから」
「まだ1ヶ月だ!」
取り敢えず俺は陽葵と歩き出した。変な判定されないだろうな? 別に手を繋いでいるわけでもないから大丈夫だよな?
「こうして2人で帰っていると付き合いの長さを感じるわね?」
「だから出会って1ヶ月だし、付き合ってもいないだろう!」
陽葵がむすっとする。だが仕方のないことだ。俺はまだ死にたくない。
随分町中までやって来た。ここまで来るともうすぐ家だ。頭上から変な警告音も聞こえていない。何とか切り抜けたか。俺はほっと胸を撫で下ろした。この後は駅前を通ればゴールまで300mだ。
さすがにここまで来ると通行人も多くなってくる。前方からは他校の女子が明るくトークしながらこちらに向かってくる。
「四朗、お願いがあるの。私の前を歩いて」
「ん? どうしてだ?」
「いいから」
急にどうしたんだ? やはり男と歩いているのが恥ずかしいのか? そうか。前から来る女生徒は知り合いなのかも知れないな。俺は言われたとおり陽葵の前を歩いた。
「これでいいのか?」
「ふふふ」
「ん? 何笑って・・・・」
俺の背中に何かが勢いよくぶつかってきた。
「ええええええーーーーーーーー!!!!!! 陽葵! 何してんだ?」
陽葵が俺の背中に抱きついている!
「油断したわね。もう離さないんだから」
「おい、止めろって!」
ピピ、ピピ、ピピ。やばいこれはアウト判定だろう!? ピピ、ピピ、警告音が止まない。ピピピ、ピピピピ。それどころか速くなってるじゃねえか!
ピーーーーーーー! もうダメだ! 俺は咄嗟に頭を抱えた。こんなことしても何の意味もないのだが。
ポカン! 俺の頭上で大爆発が起きる。ん? これは大爆発と言うより小爆発か?
「何これ? 頭の上で風船でも破裂したの?」
「え? どういうこと?」
俺はわけの分からんまま立ち上がり頭を撫でる。特に異常はないようだ。次に体を隈なく見る。全然大丈夫だ。
「どうしたの? 放心状態だけど」
「いやマリーが頭上に水素爆弾を仕掛けたって言うから」
「何言ってるの?」
「俺が陽葵といちゃついたら大爆発するって」
「騙されたのね。単純なんだから」
おのれマリー! すっかり騙されちまったぜ。俺は怒りのあまり陽葵の手を握って帰宅するのだった。




