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第14話 真剣に詰みました

 次の日からこの3人は陽葵のことを露骨に非難するようになってしまった。

「四朗君、今日は陽葵にどれだけ話しかけられたの?」

小百合は毎日のように俺の部屋にやってくる。

「3回くらいかな? 今日は実行委員会なかったから」


「実行委員会って四朗と陽葵だけよね?」

マリーが疑いの目で俺を見る。

「どうしてそんなこと知ってるの?」

小百合が鋭い質問を投げかけている。

「それは秘密よ」

そうだよな。変な雲で盗聴してたとは言えないよな。


「お兄ちゃんは騙されやすいから心配だよ」

芽依も俺の部屋に入り浸りだ。益々俺のプライバシー空間はなくなっていく。

「陽葵さんは絶対お兄ちゃんを狙ってるよ」

「そんなわけないだろう」

「絶対にそうだよ。でなきゃあんな短いスカートでいきなり家に遊びに来たりしないよ」

いい加減短いスカートから離れろ。


「でも、どうして四朗君のことを意識したのかしら?」

「バカね小百合は。四朗が格好いいからに決まってるじゃない」

「そう? 四朗君はごく普通の顔立ちよ」

小百合! 何てこと言うんだ? 地味にきついぞ。


「今は揉めてる場合じゃないよ。お兄ちゃんを奪われる前に作戦を立てるべきだよ」

いつの間にか作戦会議になってる。

「もし、四朗が陽葵に話しかけたら死刑て言うのはどう?」

マリー、それは解決になってないぞ。


「芽依が毎日保護者としてお兄ちゃんの学校に付いていくのがいいよ」

高校側が許可せんだろ。

「校外学習の実行委員会がある限り四朗君と陽葵を離すのは苦しいわね」

小百合が部屋をうろうろしながら言った。


「そうだ!」

マリーがいきなり大きな声を上げる。

「四朗と陽葵を会わせなければいいのよ」

「実行委員会があるから無理だって言ってるでしょ?」

「だから四朗が学校に行かなければいいってこと」

何だと? どういうことだ? 嫌な予感が脳裏を駆け巡る。


「例えば足を怪我して歩けないとか」

ちょっと待て!

「冗談だよな?」

「本気に決まってるじゃない」

マリーが鉄パイプを持って近付いてくる。一般家庭のこの部屋に何で工事現場にありそうな鉄パイプがあるんだ?


「小百合、何とか言ってくれ」

ここはいつも冷静な小百合に助けを求めるに限る。

「なるほど一理あるわね」

何言ってるんだ!

「お兄ちゃん、芽依が尽きっきりで看病してあげるから安心だよ」

こいつらクレイジーか! 俺は慌てて部屋を飛び出した。


 俺は近くの公園に行くとブランコに座った。ほとぼりが冷めるまでここにいるか。でも、このほとぼりって冷めるのか? 夕方の空が赤く染まっている。逃げ出してやってきた状況じゃなかったら綺麗な夕焼けに見えるんだろうな。


「こんな所にいたんだ~」

「ギャー!」

これはホラー小説だったのか!? 怖すぎだろ!


「そんなに驚くことないでしょ?」

「あれ? 陽葵?」

俺が後ろを振り向くと、そこには陽葵がいた。

「何でお前がここにいるんだ?」

「私の家はこの近くなのよ。ほら、あそこに見えるアパート

「へえ、そうなんだ?」

意外な言葉に驚いたが、無理やり足を骨折させられるよりはインパクトに欠けるな。


「私のアパートに遊びに来る?」

「止めとく。そんなことをしたら足の骨折では済みそうにないからな」

「何言ってるの?」

「何でもない。気にするな」

陽葵には今の俺の状況を理解することはできないだろうな。


 陽葵は俺の隣のブランコに腰を下ろした。

「四朗君の周りの女の子達って、みんな四朗君のことが好きなんだね」

「そうかもな」

「で? やはり一番は林郷さん?」

「いきなり何言い出すんだよ!」

「もう照れちゃって」

「からかうなって」

俺は恥ずかしくて思わず下を向く。陽葵の奴何考えてるんだ?


「でも、四角関係は行けないわ」

「芽依は入らないだろう?」

「そうかな? もしかして四朗君のことを一番好きなのは芽依ちゃんかもよ」

「妹は妹だ。それにあいつはまだ中1だし」

「女の子はすぐに成長しちゃうよ-」

何が言いたいんだ。俺は思わずため息を一つついた。


 俺は彼女を何人も欲しいとは思わない。相思相愛の人が1人いればいい。どうしてこうなるんだ?

「あの人達に疲れたら、いつでも私が彼女になってあげるからね」

「だから俺はその手の冗談は苦手だって言ったろ」

「冗談じゃなかったら?」

「止めろって。俺は本来騙されやすい性格なんだ。だから紛らわしいことは言わないでくれ」

「ふうん。騙されやすいんだー。いいこと聞いちゃった」

「変なこと考えるのはよせよ」


 大体、陽葵とこうして話しているのをあの3人に見られたら大変だぞ。真剣に鉄パイプで足を殴打されかねん。

「ところで四朗君。さっきから私たちの周りを飛んでいるこの小さな雲って」

「ギャー!!!」

終わった。陽葵と2人でいるところをマリーにチェックされてしまった。小さな雲からは日本刀を研ぐ音が聞こえてくる。小百合も相当怒ってるぞ。一体どうすりゃいいんだ? 真剣に詰んでしまった俺であった。

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