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第13話 次から次へと

 マリーは渦巻きから出ると一瞬固まった。

「何であなたがここにいるのよ?」

「クラスメイトの家に遊びに来ただけよ。いけなかった?」

「いいわけないでしょ!」

マリーが今にも爆発しそうな表情で陽葵を睨み付けている。俺はただただ様子を見守っているだけだ。陽葵の味方をしようものならマリーの導火線に火を付けかねない。


「男の家に行こうってときに、普通その短いスカートをチョイスする? 下心丸出しじゃない!」

「女子高生だもん。これくらいは普通よ」

陽葵さん。あなたはマリーの恐ろしさを知らないからこんな台詞を言えるんだ。後悔することになっても知らんぞ? お願いだからこれ以上マリーを挑発しないでくれ。


「今日はこの家に四朗以外は誰もいなかったはずよ。それを知っててわざと今日来たのね?」

おい、お前の両親を忘れてるぞ。

「そんなの知るわけないじゃない。でも許嫁のあなたより深い関係になってしまったかもね」

ちょっと待て!!!


「四朗! 本当なの!?」

「そんなわけなかろう!」

「四朗の言葉なんて当てにならないわよ」

「だったら聞くなって!」

マリーから凄いオーラが出ている。これは真剣やばいぞ。俺は思わず身構えた。


「日向陽葵。ここへ来たのが最大のミスね。飛んで火に入る夏の虫とはまさにこのことよ」

マリーのこの様子を見ても陽葵は全く動じていない。大丈夫か? 下手したら死ぬぞ。

「私のフィアンセを奪ったことを後悔しながら死になさい」

「待て! マリー」

「この部屋の中では黒魔術を解禁されてるのよ。本当に運が悪い人ね」


 マリーが指を一本立てて天井を向けて上げると陽葵が喉を押さえた。息ができないのかも知れない。

「大丈夫か? 陽葵」

だが、陽葵は立ち上がるとマリーの方へと歩を進めていく。もしかして苦しくないのか? いやそんなはずはない。経験者の俺が言うんだから間違いない。


 陽葵はマリーの前まで行くと、裏拳でマリーを殴り倒した。

「何するのよ!」

「それはこちらの台詞ね」

どうやら黒魔術は解かれたらしい。それにしても何という精神力。普通ならパニックになって怯えるところだぞ。


 マリーは頬を抑えて2号と3号の所へ行った。

「お母さん。今の見たでしょ? この女、何とかしてよ」

これは不味いぞ。2号の魔力はマリーとは桁違いに高い。2号が陽葵に何か黒魔術をかけたら確実に殺される。


「キュピ」

「キュピピ」

2号と3号が何か話し合っている。そして陽葵の前に行くと、

「キュピー」

二匹は頭を下げて陽葵に謝った。マリーの方が悪いという判断か。意外にしっかりした親だったんだな。

「覚えてらっしゃい!」

マリーは負け惜しみを言うとプイッと横を向いた。


 何とか難を逃れたようだ。しかし、これで終わらないのが葛城家だ。

「四朗君。芽依ちゃんいる? え? どうして日向さんが四朗君の部屋にいるの?」

何でいきなり小百合が現れるんだ?

「小百合、普通は玄関で『ごめんください』だろ? 何で俺の部屋に直通で来るんだ?」

「それだけ深い仲ってことよ」

ダメだ。俺のプライバシーは欠片もないのか。


 小百合は怖い顔で俺に向かって言った。

「それで? 日向さんがいるわけを教えて。今日は四朗君の両親はいない日だよね? そんな日にクラスメイトの女の子を自分の部屋に入れるわけ?」

「いやこれは」

いいわけが出来ねえ。


「それにその短いスカート」

マリーと同じことを言ってる。安心しろ小百合。もし俺が性欲に負けたら、それは俺の死ぬ時だ。どの選択が正しいか俺にだってわかるから。


 何かこうなるような予感はしてた。まあ、これ以上悪化することもなかろう。俺は一つため息をついて陽葵を見た。


「お兄ちゃん。図書館で『落ちこぼれ魔女のリーサとラスボスのミーニャ』って本を借りてきたよ。凄い人気なんだって一緒に読も・・・・。って誰? この女の人」

芽依が陽葵を見て立ち止まっている。


「この部屋って次々と女の子が現れるわね」

陽葵は3人を見ながら言った。

「これは俺の妹の芽依だ」

「妹がいたんだ?」

「3歳違いだ」


 陽葵が芽依をじっと見ている。

「本当に妹さん? 全然似てないわよ」

「何この人。失礼だよ」

芽依はやや怒った声で言う。

「こんなに可愛い子が四朗君の妹なわけないわ」

「失礼な人だと思ったけど、そうでもなかったよ」

「どういう意味だ!」


「でも、お兄ちゃん。何で女の人を部屋に連れ込んでるの?」

「別に連れ込んだわけじゃ」

「じゃあ、どういうことか説明しなよ。内容によっては1ヶ月夕食抜きだからね」

芽依、いくら何でも1ヶ月はなかろう。


「大丈夫よ四朗。その1ヶ月間は芽依の代わりに私が夕食を作るわ」

マリーが超笑顔で俺に言った。

「悪かった。正直に何でも言うから勘弁してくれ」

「何なのよ! その慌て方は!」

収拾が付かなくなった俺の部屋を陽葵は喜んで見ているのだった。

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