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第12話 家庭訪問

 今日の休日はマリーがいない。何でも裏の世界に用事があるとかで出かけていったのだ。芽依はと言うとマリーがいないのを確認すると友達と図書館で勉強してくると言っていなくなった。更に俺の両親も夫婦水入らずで映画を見に行っている。つまり俺は完全に一人。自由の身なのだ!


「キュピ」

忘れていた。こいつらがいたんだった。3号はなぜか俺の近くに寄ってきて甘えてくる。それを2号が怖い目つきで睨んでいる。これは何だな。浮気が見つかって2号の攻撃を避けるために俺の所に来ているパターンだな。全く懲りないやつだ。


 俺は上質な3号の毛をさすりながら、今日一日何をしようかと考えていた。すると。ピンポーンという音がした。呼び鈴だ。誰が来たんだ? 今、家には俺しかいない。ということは俺が出るしかあるまい。まさかしっぽアクセサリーを玄関に行かせることもできないし。俺は重い体を動かすと階下へと向かった。


 俺が玄関に行くと、

「葛城さんのお宅ですか?」

と若い女性の声がした。どこかで聞いたような声だ。

「はい、そうです」

と言って何の躊躇もなくドアを開けた。


 ドアの向こうには陽葵が立っている。

「え? 何で?」

「家庭訪問よ」

「どういうことだ?」

「いいからいいから」

そう言うと陽葵は強引に玄関の中へと入ってくる。


「ちょっと」

俺は慌てて制しようとしたが問答無用状態だ。

「上がらせてもらうわね」

陽葵は勝手に靴を脱いで中へと進んでいく。

「ちょっと待てよ。どういうことだ?」


「ふうん。ここがダイニングキッチンね?」

「何がしたいんだ?」

陽葵の行動が理解できない俺はこう聞くしかなかった。

「それで? 同棲中の許嫁の部屋はどちらかしら?」

「そんなの見てどうしるんだ?」

「だからどの程度の同居なのか知りたいだけよ」

陽葵は辺りをキョロキョロ見ながら答えた。


「同棲じゃないって言ってるだろう」

「じゃあ、隠すことないでしょ?」

「第一そんなの調べてどうするんだ?」

「もし夫婦同然の生活をしてたら学校側に伝えるわ」

冗談じゃない。同棲だって判断されたら退学じゃねえか。せっかく高校生になれたのに今までの苦労が水の泡だ。いや、正確に言うと苦労や努力はしていない。


「とりあえず俺の部屋に来てくれ。そこで話そう」

陽葵は大人しく俺について2階へとやってきた。

「へえ、ここが四朗君の部屋か。意外と片付いてるわね」

陽葵は姑のように俺の部屋を隅々まで見て言った。


 俺は座布団を出しながら陽葵を見る。制服姿以外の陽葵を見るのは初めてだ。

「そんなに見つめられると恥ずかしいな」

「見つめてない!」

ちょっと凝視しすぎたか?


「どうせ私のスカート姿が意外だとか思ってるんでしょ?」

「ああ、てっきり普段はパンツルックだと思ってた」

「やっぱり。私だって女の子よ」

お前はボクシングチャンピオンだろ? と言いたかったが二人きりの部屋で陽葵を怒らせたら、今日が命日になるかも知れないので止めた。


「だって始めて好きな人の家に行くのよ。スカートをチョイスするに決まってるじゃない」

「だからそういう冗談はよしてくれ。真剣、心臓に悪いから!」

「ドキドキするんだ?」

「違う!」

全くこいつは俺をからかうのを生きがいにしてるのか? 大体、俺のことを調べてどうするとつもりなんだ? まさか本気で先生に言うためとも思えん。


「あら? 四朗君てこんな趣味持ってるんだ? このしっぽふわふわで気持ちいいわね」

げ! 3号いつの間に。

「キュピ」

ゴロゴロ。

「う~ん。可愛い! て何これ?」

あちゃー。どうするこれ?


「このしっぽアクセサリー、甘えてくるし鳴くし」

「はははは」

「誤魔化さないでよ」

これは言い逃れは不可能か。

「わかった言うよ。それはマリーの父親だ」

「は? 何言ってるの?」

それはこう言われるわな。ごく自然な展開だ。どうせ陽葵にはマリーが異世界人だと知られてるんだ。何を知られてもよかろう。俺は半ば居直った気持ちになる。


「ところで家の人はいないの? できれば挨拶がしたいんだけど」

「挨拶?」

「だって彼氏の家に始めて来て挨拶もしない彼女なんておかしいでしょ?」

「誰が彼女だ!」

本当にこのギャグが好きだな。


「残念だが。両親は映画に行ってていないぞ」

「そうなんだ。だったら桂木さんは?」

「いない。用事とかで朝から出かけてった」

「そっか」

陽葵は上を向いて何かを考えている。


「てことはこの家にいるのは私たちだけってこと?」

「マリーの父親と母親がいるぞ」

陽葵は3号をつまみ上げて言った。

「このしっぽのこと?」

「そうだ」

「四朗君てもしかしたら中二病?」

「違う!」

陽葵は大声で笑い転げている。


「でもさ、彼氏の部屋で二人きりなんて危険な匂いがするわね」

「だったら早く帰れ!」

陽葵がまた笑い出す。何なんだこいつ。

「まあ、四朗君が誘惑に負けて襲ってきても一発殴ればいいだけなんだけど」

それはそうだ。


 俺が陽葵に手こずっていると、部屋の一部が渦巻き状に光り出し、

「ただいま~」

と言うマリーの声が聞こえた。はははは、もうどうにでもしてくれ!

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