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第10話 校外学習実行委委員会

「春の校外学習の実行委員を募りたいと思います」

教卓の前で陽葵が何か言っている。春の校外学習って簡単に言えば遠足のことだろう? 実行委員会を立ち上げるほどのことでもなかろう。


「やりたい人はいますか?」

シーン。それはそうだ。わざわざ実行委員になってまで働こうなんて奴がいるわけない。

「仕事内容は難しくありません。今回の校外学習は体験学習を予定してますので、何を体験するかを決めるのがメインの仕事になります。私と一緒に決めてくれる人はいませんか?」


 クラスの生徒が体験学習という言葉に反応して少しざわめくいたが、実行委員をやろうという人物はいないようだ。

「いないようですので私の方から指名してお願いしてもいいでしょうか?」

なるほど。仕事ができそうな人物を指名するのか。これなら変な奴を選ぶこともなくスムーズに進められるな。


「では、林郷さん。お願いできますか?」

小百合なら間違いなく実行委員をこなせるだろう。誰もが納得のいく選出と言える。

「ごめんなさい。今、生徒会の仕事が忙しくて協力できそうにもありません」

「それはそうですね。年度初めですからね。わかりました」

 

 えらく簡単に諦めたな。小百合意外に適任者がいるのか?

「では、葛城君お願いします」

「はあ? 何で俺が?」

ちょっと待て。俺が実行委員会なんてできるわけないだろ?

「俺には無理です」

「では決定ですね。実行委員は葛城君にお願いします」

「いや、無理だって」

「大丈夫できます」

何か強引に決められたぞ。てか何で俺には拒否権がねえんだ? 大体クラスの代表で何かするなんて今までやったことないぞ。


「何で葛城なんだよ」

当然のように不満の声が上がる。よくわかるぞ、その気持ち。

「なら、あなたがしますか?」

「いや俺は」

「では決定でいいですね」

簡単に諦めるなよ!


 放課後、俺は陽葵と教室にいた。

「実行委員会てここでやるのか?」

「そうよ」

「副室長はどうした?」

「いないわよ」

「どうしてだ?」

「校外学習実行委員会は室長と実行委員であるあなただけなの」

「はあ? どういうことだ?」

「副室長は他の仕事があるのよ」

これは全く予期してなかった展開だ。マリーが知ったら大変だぞ。


「言っとくが俺は何もできねえぞ。期待しないでくれ」

「大丈夫よ。希望をランダムに言ってくれたら私が全てするから」

それではあまりに済まない気がする。でも、何をしていいかさっぱりわからん。


「なるほど陶芸は可能ね。バスで1時間行ったら陶芸ができる場所があるから。予算的にも何とかなりそうだし」

本当に陽葵はテキパキ仕事ができるな。


「料理関係も可能だけど、四朗君て料理に興味があるの?」

「マリー、いや桂木真里が料理を全くできないからいつもの仕返しにと思って」

「ふふふ、そうなんだ。それは面白そうね」

陽葵は笑いながら賛成している。


「でも、それを知っているってことは桂木さんの手料理を食べたことがあるんだ」

「あ! え? それは」

「隠さなくても大丈夫よ。複雑な関係そうだけど、桂木さんが四朗君に夢中だってことはわかるもの」

陽葵は笑顔で俺を見つめながら言った。


「で? 四朗君はどうなの?」

「どうって言われても」

「よくわからないけど林郷さんも関係しているみたいだし大変ね」

俺は頭を掻きながら生返事をした。あまり深く追求されるとマリーが異世界人であることを言ってしまう羽目になりそうだからな。


「俺からも一つ聞いていいか?」

「何?」

「何で俺を選んだんだ?」

「四朗君が好きだから」

「ええーーー! そ、そんなこと急に言われても困るというか何というか」

「嘘よ。何パニクってるのよ」

「からかうなよ」

俺はこの手のジョークに弱い。それはパニックにもなるわな。陽葵って真面目キャラかと思っていたが、結構砕けたキャラなのかも知れない。


「ところで、さっきから変な物が飛んでるんだけど」

「変な物?」

俺は教室中を見渡した。

「ほら、そこに飛んでる小さな雲みたいなの」

確かに飛んでいる。空の雲の超小型版。何だこれは?


 陽葵が捕まえようとするとそれはひょいと逃げた。まるで意思があるように。

「これは明らかに人工物ね」

俺の脳裏にマリーが浮かぶ。

「私たちの会話を聞いてたのかしら?」

「そ、そうかー。だったらストーカーの仕業かな?」

俺は棒読み台詞で言った。


「いくら逃げても私の動体視力には勝てないわ」

陽葵が雲を捕まえた。凄い!

「ちょっと離しなさいよ!」

マリーの声だ。


「カップルの会話を盗み聞きするのはいけないことよ」

「何であなた達がカップルなのよ!」

「じゃあ、これからカップルになろうかしら」

「何ですってー!」

「四朗君好きよ」

「△※●%◇$@▼◎」

陽葵さんからかいすぎ。


「ところで四朗君。捕まえた雲なんだけど中心部にボタン電池のような物があったわ。プロペラもなかったのにどうやって飛んでいたのかしら?」

え? これはもしかしてやばい? 人類の科学を超えてるもんな。異世界がバレるぞ。


「このボタンを調べて・・・・」

ドカン! ボタンが急に爆発した。もう少しましな証拠隠滅方法はなかったのかよ!

「陽葵さん、大丈夫か?」

「ありがとう。私はこれくらいで壊れることはないわ」

その通りだと思う。


「いてててて。俺は大丈夫じゃなさそうだから今日は帰るわ」

もちろん、この場を逃げる口実だ。

「ええ! 大丈夫なの? 送ってこうか?」

「大丈夫1人で帰れるから」

今の状況で陽葵とマリーを会わせるわけにはいかない。第一マリーと同じ家に住んでることがバレたら大変だ。


 俺はわざと足を引きずりながら教室を出るのであった。

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