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ヲタッキーズ108 アキバの冤罪

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第108話"アキバの冤罪"。さて、マルチバースへの技術協力にコロナウィルス合成疑惑がw


背後に潜む闇の商人の暗躍、相次ぐ関係者の死、そして親友を拉致された超天才が信義に拠りとった行動とは?


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 ヲタクの冤罪


絵に描いたような幸せな家庭だ…異次元人だけどw


「シャザ!お皿を並べるの手伝って!アディ!いい加減にゲームはやめて!パパが帰って来るわょ!」

「ママ!お手伝いしたら今夜、パパに頼んでくれる?」

「え。新しいスマホ?ソレは自分で言いなさい」


愛らしい顔で笑顔の裏で胸算用に余念のない娘。


「お姉ちゃんがスマホ?ママ!僕にも買ってょ!」

「私は授業に必要なの!」

「ウソばっか。出会い系ばかりだ」


窓の外で、止まった車から降りてくる夫を見て微笑む妻。

と、ソコヘ突然黒いバンが横付けし覆面男達が飛び出すw


「やめろ!家族がいるんだ!」


叫ぶ父親を羽交い締めにし、力ずくでバンへと連れ込む←


「ジマリ?お前なのか?」


車内で縛られてる男を見て驚く父親。一方、異変に飛び出して来た家族に銃口がラッパ型の突撃銃を向けるテロリストw


音波銃?


「来るな。下がってろ」

「危ない!子供達は家に入って!早く!」

「ママは?」


妻の面前でドアは閉まり、黒いバンは夫を拉致し走り去る。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


史上最年少で首相官邸アドバイザーに就任した超天才ルイナは、トレードマークの車椅子にゴスロリでリモート会議中。


「ルイナ。ホントに感謝ょ。論文を発表するには、貴女の代数統計研究が不可欠だったわ」

「サジラ、どこかで学会発表の予定でも?」

「遺伝子組み換え技術のセミナーが夏にフィレンツェであるわ。来る?」


ケンブリッジ時代のルームメイトとの気安い会話だ。


「夏のフィレンツェ?いいわぁ」

「論文の共同執筆者に名前を貸してくれるなら、招待するわょ。どう?夏のフィレンツェ」

「人類のニーズに合わせてDNAを操作するって、確かにワクワクするけど。世界の終末ってニュアンスも…」


あくまで慎重なルイナ。


「あのね、ルイナ。DNAのデノボ合成がスピーディかつ安定的に行う技術が開発されれば、多くの分野で素晴らしい成果を…え。何?貴方、誰?」

「フィリ・サジラ博士?」


画面に映るサジラの背後に黒服の男達が現れ、居丈高に名を問う声がスル。

振り向いたサジラに何かが示されて、その顔が凍りつく。さらに声は続く。


「ご同行願います」

「い、一体、何の件で?」

「待って。何かの間違いょ私は首相官邸アドバイザーの…」


声は続く。


「存じております、ルイナ。しかし、あいにくコレは間違いではない」

「わかったわ、協力します。でも、せめて私を連行スル理由を教えてくれないと」

「ソレは後ほど」


無理矢理立ち上がらされ画面から消えるサジラ。声が響く。


「ルイナ、助けて!なぜなの?!」

「私にもわからないwでも、調べてみる!」


唐突に画像は消える。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)に立ち上がった捜査本部。


「拉致された男性2名は"秋葉原次元基金(ADF)"のメンバーでした」

「ADFは、以前から異次元テロリストの末端組織ではないかと疑われてた団体です。警視庁(さくらだもん)の異次元テロ対策課によると、この拉致は何らかの異次元テロの前触れかもしれナイとのコト」

「ソンなコトより、ナゼ私のお友達の大学教授が逮捕されたの?ってかアレは逮捕なの?誰が彼を捕まえたの?」


捜査会議にリモート参加中のルイナが噛み付くw


「ルイナ。彼女はADFのメンバーだった。他にも10数名が参考人として呼ばれてて、そのうちの1人に過ぎないわ。落ち着いて」

「ソレは…警視庁(さくらだもん)は、彼女を異次元テロリストだと疑ってるってコト?どーなの、ラギィ警部」

「落ち着いて、ルイナ。どちらにせよ"リアルの裂け目"案件だからSATOとの合同捜査になるわ。協力して頂戴」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


パーツ通り地下にある南秋葉原条約機構(SATO)の司令部。


「カリム・ラピクは自宅前で拉致され、ロナル・ジマリはランチに出たきり戻らなかった…」

「2人は非営利団体ADFの会員です。"リアルの裂け目"の向こう側に広がる、貧しい農村に送る寄付を集める団体と称してますが、その資金がマルチバース征服を狙う異次元テロ組織へと流れている恐れがある」

「レイカ司令官。この拉致は異次元テロの前兆でしょうか?」


SATOは沈着冷静なレイカ最高司令官の下、アキバに開く"リアルの裂け目"からの脅威に敢然と挑戦スル防衛組織だ。


「恐らくね。情報提供者のおかげで、最近は異次元テロも未然に防げるようになったけど…」

「異次元テロ組織は、秋葉原に潜入した工作員に情報漏れのないよう指示を出したようです」

「今回拉致された2人は、異次元テロ組織にとって脅威だったというコトでしょうか?」


ヲタクの最高頭脳を結集して会議は進行スル。


「今回、首相官邸からSATOへのリクエストは、秋葉原に潜む異次元テロ組織の実態解明、そして、本件のハンドラーを突き止めるコト。でも、ソレは簡単なコトではない。ハンドラーは、恐らくADFとは無関係なトコロにいる」

「レイカ。ソレなら私の出番だわ。以前、方程式で組織の隠れた構造を特定したコトがアルの」

「えっと。社会ネットワーク何チャラだっけ?」


ルイナは首相官邸アドバイザーだがSATOの顧問でもアル。


「確か内閣情報調査室(ないちょう)には、ADFみたいな非公然組織の盗聴記録データベースがアル。ビザンチン将軍問題の解決策を使うわ」

「え。ビザンチン将軍?誰?最近、東秋葉原で流行ってる彼シャツラッパー?」

「うーんコンピューティングシステムにおける欠陥コンポーネントを見つける方法ナンだけど…」


だんだん全員、わからなくなって来るw


「ソ、ソレがテロ組織と何の関係が?」

「例えばボートのチーム。ねぇ仮に漕ぎ手の1人がワザと足を引っ張っる裏切者だとスル。この時、ボートの航跡を見れば、誰が裏切者かが特定出来る。この場合、拉致された2人は組織の裏切者だったのカモしれない」

「チームメイトが誰かも浮き上がって来るの?」


期待を込めて訊ねるレイカ司令官。


「YES」

「ボートの行き先はどー?テロ組織の計画とかもわかっちゃうワケ?方程式を解けば?」

「司令官、ソコまでは無理ですょ」


部下に諌められる司令官も珍しい←


「まぁやってみるわ。内調の傍受データが十分にあれば、あるいは…」

「ルイナ。ソッチは任せるわ。コッチは万世橋(アキバポリス)と連携して、拉致された2人の情報を出来る限り集めましょ。ヲタッキーズを呼んで」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ヲタッキーズは、僕の推しムーンライトセレナーダーが率いるスーパーヒロイン集団で、SATO傘下の民間軍事会社(PMC)だ。


「あのね、ムーンライトセレナーダー。確かにサラジはADFの会員かもしれないけど、絶対テロリストじゃないの。彼女は科学者ょ」

「ルイナ。お友達のフィジ・サジリ博士は、生物兵器に関する指示のEメールを"裂け目"の向こう側に送っていたんだって」

「…知らなかったわ」


絶句するルイナ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


拉致現場のラピク宅を訪れるヲタッキーズ。

妖精担当エアリとロケットガールのマリレ。


「夫は、この秋葉原で、私の目の前でさらわれたの!なのにナゼ8年前に"リアルの裂け目"を渡ったコトやマルチバースに散らばる親戚に連絡したコトが問題になるの?」

「奥さん。捜査の一環ですので」

「一環なんかじゃないわ!頭からテロリストと決めつけての捜査でしょ?私達が異次元人で洪水教徒だから?夫を助けるより有罪にスル方に一生懸命じゃない!」


泣き崩れるラピクの妻。そんな彼女を左右から健気に支えながら、ヲタッキーズに容赦のナイ視線を浴びせる娘と息子。


娘が1歩前に出る。


「パパは25年間、この秋葉原で暮らしてきたマジメな異次元人よっ!過激派でもテロリストでもナイわっ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


一方、万世橋警察のラギィ警部は、ADFを訪問スル。


「警部さん。ウチは慈善団体ですょ。マルチバースに散らばるヲタクを支援してるだけです。政治組織じゃナイ」

「えっと…ハマド・マザリさんですか?貴女の役目は?」

「主に資金集めですが、基本、ボランティアなので何でもヤリますょ」


ハマド・マザリは、女か男か良くわからない外見の市民ボランティアだ。ADFでの彼女のポジションも良くワカラナイ。


「では、ADFメンバー全員の個人情報、資金関係のコンピューター記録を見せていただけますか?」

「いいえ。お断りします」

「即答?ねぇ御社のメンバーが2人も拉致されてルンですょ?」


率直に疑問に思うラギィだが、マザリは引かない。


「だからと言って、ADF内部で魔女狩りをされてはたまりません。まるっきり加害者扱いじゃないですか!」

「では、裁判所の捜査令状をとります」

「どうぞ」


マザリは一顧だにしない。


「とりあえず、今日はお引き取りください」

「2人が拉致された理由に心当たりは?」

「秋葉原でマルチバース生まれの異次元人が消えた時、その多くは内閣情報調査室(ないちょう)に拘束されている。彼等のお家芸だ。アッチに確認されては?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「違うな。内調は拉致ナンかしない。秋葉原ではね。しかしヲタッキーズってホントにメイド服なのね?」

「月の裏側ではどーだったの?何ゴトにも例外がアルって、ウチのパパが言ってたけど?」

「オシャベリは、この事件限定にしてねプリーズ。ソレにムーンライトセレナーダー、貴女のお父様は確か…」


ムーンライトセレナーダーは、僕の推しミユリさんが変身したスーパーヒロインだ。

因みに、メイド服で下はバニーガールという作者の妄想満載の素敵なコスプレだが…


「ナンでこんな外で会うの?オフィスで聞かれちゃマズいコトでも?…寒いわ」

「ちょうどランチに出るトコロだった。何処で会おうと答えは同じょ。内調は関係ナイ…しっかし、もうすぐXmasという寒空の下、そのコスプレwスーパーヒロインもタイヘンね」

「…なら他にどこが関わってると思うの?ハックション!」


クシャミをかわし、声を潜めて小声で囁く内調の女。


南秋葉原条約機構(SATO)ょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「サジラは、立派なヲタクで8年もアキバ工科大学で教鞭をとって来た」

「ルイナ。まさか彼女のために弁護士を呼んだの?」

「YES。何人かに電話したわ。悪い?」


超天才ルイナのラボは、主に警備上の都合からSATOの地下司令部に併設されている。

生身で彼女と会うのは、ごく限られた人となるが、その中にハッカーのスピアがいる。


「アッブナイ真似スルわねぇ!ナンか義理でもアルの?」

「彼女は大事なヲタ友なの」

「警察の捜査対象なのょ?私達、SATOの関係者ょね?」


車椅子にゴスロリの超天才は唇を噛む。


「でも、私はSATOメンバーじゃない」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


マジックミラーの向こうは取調室。

既に30時間近く尋問は続いている。


「…だから、私の研究は農業です。病気に強い品種の開発ナンです」

「その研究成果の活用は秋葉原内のみで、敵対するマルチバースの別次元に情報を流すのは違法だ。禁じられている」

「禁じられてるなんて初耳だし!」


取調官はニコリともせズ答える。


「違反事項のリストは機密扱いだ」

「なら私は知りようがナイじゃナイの!」

「…なぜ過激派へ情報を送った?」


どんどん極限状態へ追い込まれるフィリ・サジラ。


「彼等は、一緒に研究している科学者です。そもそも貧しく飢餓に苦しむ次元で作物の収穫を増やそうと努力する仲間に情報を送っただけです!」

「貴方は、最先端のゲノム配列決定の研究を送った。秋葉原を憎む組織と繋がりのある次元に」

「違う!優秀な研究者達と成果を共有しただけだ…そもそもアナタ達は誰なんだ?警察じゃナイな?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


神田リバー沿いの廃倉庫。駆けつけたラギィ警部に、警官が証拠品用のビニール袋に入った血染めの運転免許証を示す。


「解体作業員が見つけたと通報して来ました」

「カリム・ラピクの免許証だわ。他には?」

「今のところ、何もありません」


ラギィ警部は拳銃を抜き、廃倉庫に入って逝く。

ヲタッキーズのエアリとマリレは音波銃を抜く。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「警部。床に血痕。奥へ続いています」


廃倉庫の暗がりの中をポケットライトで照らしながら進む。

さらに先へ進んだトコロでビニール袋に包まれた人の形は…


「…カリム・ラピクです。死んでます」

「コチラの死体はロナル・ジマリ」


第2章 殺されたパパ


「散々殴られ、電流で拷問されてますね。酷い」

「密告した裏切者と思われたのね」

「コレを見てください。トリガーピンです」


証拠品袋に入っているのは小さな丸いピン。


「ソレ何?美味しいの?」

「自由世界のバズーカ砲、ロシア製ロケットランチャーRPG-7のセイフティロックを解除するピンです。このピンがアルと言う事は、本体のロケットランチャーも秋葉原の何処かにアル」

「なんてこと!燃料気化爆弾(サーモバリック弾)を使われたら秋葉原は火の海ょ」


ウクライダでも使われている気体爆弾だ。


「警部、ジマリの自宅でコレを見つけました」

「え。昌平小学校の見取り図?」

「ロケット弾のターゲットは…小学校?」


既にピンは抜かれている。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「昌平小学校を見張って!ただし、目立たないように。監視がバレればテロ組織はターゲットを変更スルわ」

「SATOは"リアルの裂け目"経由の武器のブラックマーケットを調べます。何か情報があるカモ」

「お願いね!」


騒然とスル捜査本部にリモートで割り込むルイナ。


「ラギィ警部?死んだ2人とADFのコトだけど、面白いコトがわかったわ」

「え。なになに?」

「既存のシステムと相互に関連するコンポーネントを特定するコトが出来なかったの!」


瞬時に期待は当惑に代わる。


「(え。何言ってるのかしら?)そ、そう。ソレは御愁傷様だわねぇ…」←

「つまり!ADFは、テロ組織のプロファイルと一致しないってコトょ!」

「例の何ちゃらネットワーク分析だとそーなるワケ?」


辛うじて相槌を打つラギィ。


「違うわw今回はSATOの基準で調べたの。ADFは、異次元テロ組織とつながりはなく、組織構造や活動も当てはまらない。内部に秘密組織が潜んでる兆候もナイわ。つまり、フィリ・サジラ博士が事件に関わったのは、全くの偶然に過ぎナイってコト!」

「…ルイナがサジラ博士のヲタ友なのも偶然なの?」

「その通り!」←


その答えに全員がドン引くが、ソレに超天才は気づかないw


「警察は、彼女の研究を見て、ADFが異次元テロ組織だと言う先入観から、サジラ博士をテロリストだと決めつけた」

「ルイナ。彼女は"コロナ第34波"のウイルスを合成をしていたの。しかも、その遺伝子情報をマルチバースの全秋葉原へ流していたのょ」

「だから、ソレが先入観ょ!サジラ博士の仕事は、農作物の品種改良。干ばつや害虫に強い品種を作ってる。"リアルの裂け目"の向こう側に広がる農業地域の死活問題と真摯に向き合い、地球温暖化に柔軟対応スル植物の品種改良に取り組んでるだけ!わかって!」


ラギィ警部は首を横に振る。


「ルイナ。貴女は科学者ょね?」

「だから何ょ?科学者なら全員逮捕スルの?」

「異次元テロ組織のメンバーだったらね」


超天才は食い下がる。


「ラギィ。もしADFが慈善団体だったらどーするの?」

「あのね、ルイナ。会員同士で拷問したり、殺し合ったりスル慈善団体なんてアリ?」

「 SATOのパツキン姐さん(ルイナ)。RPG7の問題もアルんだ」


捜査本部の刑事達からも声が上がり、ルイナは絶望w


「わかったわ…私もアプローチを見直してみる。でも、警察も少しは見直すべきょ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ラボで肩を落とすルイナ。SATOのレイカ司令官が様子を見に訪れると、相棒でハッカーのスピアから慰められているw


「ルイナ」

「レイカ司令官?」

「貴女とヲタ友のフィリ・サジラ博士は、最近マルチバースの"秋葉原β-0017"に行ってるコトを知ってる?異次元テロ組織が征服した世界。彼等の新拠点ょ。ソレから、ケンブリッジ時代の貴女のお友達の中に、後に異次元テロ組織のメンバーになった者がいるわ」


ルイナが口を開く前に、相棒のスピアが喋り出す。


「その論法で来ると思ったので調べておいたわ。司令官の妹さんは、阿呆堕大学で薬学を履修。有機化学の教授はパパス博士だった。博士は、メソポタミア大学で学び、薬理学者で外科医だったけど、異次元テロ組織の幹部の1人ょ。私達は、司令官の妹さんと異次元テロ組織を容易に結びつけられるわ。どーです?」

「なるほど。貴女達の論理的思考とハッキングの腕前は評価スルわ。でも、SATOの異次元テロ対策の経験も認めて欲しいわね」

「残念だけど司令官、私達はどこまで行っても平行線のようね」


ラボから出て逝くレイカ司令官。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ほぼ同時刻のADF。ラギィ警部が捜査令状を見せる。


「捜査令状ですか。仕方ありません。どーせ調べればわかるコトです」


デスクから立ち上がり応対したマザリは観念スル。


「あらゆる記録と情報の提出を命じます」

「どーぞ。でも、大したモノはありませんょ。どーせSATOは、盗聴や電子偵察で私達を丸裸にしてルンでしょ?その膨大な情報の解析は済んだのですか?」

「あら。なぜそう思うの?」


肩をスボめ、掌を天に向けるハマド・マザリ。


「どーせ私達は、マルチバース生まれの異次元人だ。異次元人、就中、洪水教徒は、どの次元でも常に監視対象ですからね。お返しします」


捜査令状を投げ返す。ソレを合図に制服姿の男達が、一斉にキャビネットの引き出しを開けて関係書類の押収を始めるw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「今まで何人もの異次元人がADFに助けられて来た。ADFは異次元人を支えている。学校の生徒からも感謝の手紙が届くの」


夫の死亡を告げに来たムーンライトセレナーダーに、ADFの存在意義を力説スルのは、当のカリム・ラピクの妻だw


「つい去年も、マルチバース内の別の次元に診療所を建てるためにボランティアが派遣されていたわ」

「御主人は、ADFへの資金集めに何か不満を持ってはいませんでしたか?」

「そういえば…同僚のジマリさんと2人で何か怒っていたけど…詳しいコトは何も聞いていません」


悲しげに首を横に振る妻。


「他のADFメンバーと、何か揉めたりしてませんでしたか?」

「そのコトで"リアルの裂け目"の向こう側と何か通信をしていました。時折、ハマド・マザリさんの名前が出てたけど、それ以上のコトはわかりません」

「ご協力ありがとうございました。御主人のコト、お悔やみ申し上げます」


場を辞すムーンライトセレナーダーに声をかける妻。


「主人を拉致した男達だけど、声を聞きましたが…アレは恐らく異次元人じゃなかったと思います」

「声だけで?顔は見なくてもわかるのですか?」

「異次元人ではありますが、息子は野球。娘はモールでショッピング三昧。この秋葉原しか知らない私達です。誰が異次元人かぐらいはわかります…しかし、その秋葉原から、パパはテロリストだと決めつけられ、挙句に殺されるナンて」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ルイナのラボ。


「アキバ工科大学の細菌学ラボのボルテ博士とリモートで話した。微生物学のトップなんだけど、サジラの研究について意見が聞きたくて」

「それで?」

「別に怪しい研究でもナンでもないと言ってたわ。どーやらサジラの言ってた通り。病気に強い品種を作るための遺伝子組み換えね」


車椅子にゴスロリの超天才ルイナは、相棒のストリート育ちのハッカー、スピアと話す。因みにスピアはジャージ姿だ。


その下はスク水ナンだけど←


「ただ、その技術を使えば、毒性の強い病原体を合成出来る可能性もなくはないと言ってた」

「SATOのレイカ司令官は、サジラが"コロナ第34波"のウイルスを合成してたって言ってたわ」

「そのコトはボルテ博士も触れてたわ。パラノイアの目を通せば、なくはないという程度だけど」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部のギャレー。僕は、ココのパーコレーターで淹れる薄いコーヒーが大好きで良く飲みに来る。するとラギィが…


「テリィたん。ヲタッキーズのCEOである貴方は、やはりルイナの味方ょね?」

「え。ヲタッキーズは、SATO傘下の民間軍事会社(PMC)だ。雇い主との契約を守る以上の義務はナイょ」

「私達の捜査は、テロ対策の側面もアル。少ない情報で動かなきゃならない時もアルの。わかって欲しい」


やや?ラギィはラギィなりに悩んでいるw


その通り(exactly)

「私、でも行き過ぎれば大事なモノまで壊してしまうようで…実は怖い」

「"安全のために自由を捨てるなかれ"か?」

「え。まさか…聖徳太子?」


思わず吹き出す僕w


「いや。パーツ通りですれ違ったヲタクのTシャツに描かれてた文句だ」


今度はラギィが吹き出すw


「あのね、テリィたん。ADFは、半年前から急に金回りが良くなってるの。でも、財務記録は極めて曖昧。それから、ヤタラと妙な異次元通信を繰り返してる。ソレもかなりの通信量ょ」


僕は、紙カップを投げ捨てる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


御屋敷(メイドバー)のバックヤードをスチームパンク風に改装したら、ヤタラ居心地良く(僕を含むw)常連が沈殿、回転率は急降下←


「テリィ様。サジラ博士のコト、どう思われます?」

「無実だょ多分」

「テリィ様も、そう思われます?」


カウンターの中で首を傾げるミユリさん。

彼女は、ココのメイド長なのでメイド服←


「ラギィも辛いょな。仕事柄、加害性を高める方向で捜査せざるを得ない。警察の宿命だ」

「実は、今回SATOも科学者があるべき姿を先入観を持って勝手に思い描いてる気がスルのです」

「無理もナイ。客観的になればなるほど、情報の共有だけで逮捕はあり得ない。冤罪だ」


溜め息をつくミユリさん…

こんな時だけど横顔萌え←


「でも、サジラ博士は"危険情報"をマルチバースに潜む異次元テロリストに送信したのですょね?」

「ただ、ソレを"危険情報"だと認識してるのはSATOだけだ。サジラ博士が"危険情報"と認識してないコトに罪はナイ」

「怪しい秘密兵器を作るマッドサイエンティストに罪はナイというワケですか?」


やれやれ。メイド服がアキバ1似合う僕の推しも言葉数が増えたモノだ。僕はデリバリーの熱々のピザに手を伸ばす。


「あのさ、ミユリさん。僕の逝いたいコトは、ピザと議論は熱い内にってコトさ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜も万世橋(アキバポリス)の捜査本部は眠らないw


「ラギィ警部。ヲタッキーズのエアリだけど"リアルの裂け目"経由の武器マーケットでRPG-7を買った情報はありません。ただ、逆に誰か売ろうとした奴がいるみたい」

「RPG-7を売る?誰かしら」

「調べまーす」


続いてリモートでルイナが割り込む。


「ラギィ。ADFについて面白いコトがわかってきたわ」

「テロ工作員の思いがけない性的嗜好とか?」

「何ソレ?殺されたラピクとジマリに密かに接触を持とうとした存在がいるわ」


大事なコトだが…天気の話題でもスルような口ぶりだw


「ちょっ、ちょっと。ルイナ、確かなの?」

「98.2%の確率。ビザンチン合意とセキア通信モデルで分析したら、SATOが持ってたADFの通話履歴から、殺された2人と接触した第三者が浮上した。2人が拉致される直前まで良く連絡を取り合ってた相手ょ」

「その相手って…2人がテロ計画を漏らしてる証拠を集めていたんじゃナイの?」


裏を読むラギィ。たが、ルイナの答えは…


「違うの。私の分析では、別の特徴的な動きをしているわ。確かにネットワーク上で情報を集めて回ってるんだけど、殺された2人とは敵対関係になく、むしろ協力関係にあった。で、ラピクとジマリに協力していた者の名は、ベンジ・ラジヤ」


本部のモニターにラジヤの顔写真と個人情報が出る。


「ラギィょ。ベンジ・ラジヤ…YES。免許証番号を言うわね…え。何?弁護士なの?イジゲ法律事務所。推し活通り626!」


本部のモニターに、さらに詳しい個人情報が出る。


「また東秋葉原だわwでも、コイツと殺された2人が結びつけば、異次元テロ組織を炙り出せる!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


東秋葉原。推し活通り626。万世橋(アキバポリス)覆面パトカー(FPC)車内。


「東秋葉原にしちゃ繁華街の方です」

「訓練されてれば繁華街でも拉致は簡単。ほとんど目を引かずに、雑踏で1人を拉致ナンて朝飯前ょ」

「フラミンゴ、出口へ移動。確認願います」


最後は銀行に張り込み中のBチームからの無線だ。


「確認した。フラミンゴ、銀行前でスマホを出した」


眼前をバスが通過…したら姿が消えてる!


「コチラ覆面パトカー(FPC)。フラミンゴをロスト。何処だ?練塀町07?」

「推し活通りと萌えアベニューの角」

「警部、アソコです」


ドライバーが指差す先に安い背広を着た痩せ男…突然フードを被った連中に取り囲まれ、駐車中の車に叩きつけられる!


「フラミンゴが襲われた!保護しろ!」


ラギィがトランシーバーに叫ぶ。フードの連中は、そのママ駐車中の車の後部座席に男を放り込もうとスルが、その時!


万世橋警察署(アキバP.D.)ょ!動くな!」


ベンチに座り、新聞を読んでいた老婆が、右手の拳銃を車に向け、左手で警察バッジを示し車の前に立ち塞がる!

しかし、ドライバーが1発で老婆を射殺!そのママ、バックで急発進!開け放しの後部ドアから男が転げ落ちるw


「大丈夫ですか?」


男はフラミンゴこと、ベンジ・ラジヤ。さらに、もう1人降りて来て腰の位置で構えるのは…突撃銃タイプの音波銃だ!


「ふせろ!」


カタカタカタ…秋葉原タイプライターの異名をとる突撃銃は銃声こそ軽いが被害は甚大!たちまち四方八方が蜂の巣だw


「抵抗するか!」


冷静に身を隠して連射をやり過ごしたラギィが、仲間を逃すために捨て駒となった突撃銃手を1発で仕止める←

その間、バックで逃げた車は途中でターンをキメて遁走、影も形もナイ。追おうにもパトカーは穴だらけだw


「発砲事件発生!現場は推し活通りと萌えアベニューの交差点。警官負傷、FPC全壊。逃走中の車は…」


飛び交う警察無線。ラギィ警部は、倒した突撃銃手に駆け寄りフードとマスクを剥ぐと…やや?極東系のアジアン女子w


「誰かしら?」

「分かりません。秋葉原の腐女子には見えませんね」

「ソレと異次元人でもなさそうょ」


第3章 冤罪で揺さぶれ


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「あのテロリストの何処が異次元人ょ!」

「何処の組織だって、いつも現地の人間を使うのょ。その方が動きやすい。私達だって同じコトをスルでしょ?」

「確かに筋は通るけど…ラギィ、他の可能性は考えないの?」


ミユリさんは、ラギィにブレーキをかける。


「状況証拠は揃った。2人の殺害に殺人未遂。RPG-7と昌平小学校の爆破計画」

「ADFの"リアルの裂け目"の向こう側との通話記録は、全て異次元テロとは無関係だったわ」

「だから、指示を出してるハンドラーを探さなきゃ」


ハンドラーとは、複数のスパイを束ねるラスボスだ。


「ハンドラーが見つからない時は?」

「裁判所でADFメンバーの逮捕状を可能な限り取るしかない。強制送還で脅かして揺さぶりをかけるわ」

「無実の人を冤罪で揺さぶるの?ねぇ待って。いつものラギィとはまるで別人ょ」


なだめるミユリさんだが、ラギィは耳を貸さない。


「昌平小学校にロケット弾をブチ込まれたいの?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


一方、拉致寸前?を救出されたベンジ・ラジヤ。


「ラジヤさん。貴方が狙われた理由に心当たりは?」

「全くありません」

「殺される2日前のコトですが、カリム・ラピク氏は貴方に電話していますね?」


取調官はラジヤにラピクの死体の写真を見せる。


「ADFの財務記録の調査依頼でした。"リアルの裂け目"の向こう側に寄付金を送ったハズが届いてないと連絡があったそうです」

「なるほど。ADFの財務の担当者は誰なんです?」

「財務委員会でしたが、最近は…」


口ごもるベンジ・ラジヤ。


「誰なんですか?ラジヤさん!」

「申し訳ナイが答えるのは控えたい。警察の捜査は酷すぎる!無実の人に疑いをかけてばかりだ」

「ソレを正すためにも確かな情報を話してください」


取調官は、カリム・ラピクの死体の写真を指差す。


「…わかりました、良いでしょう。ADFの資金を管理していたのはハマド・マザリ氏です」

「ADF財務のコトで誰か彼と話をしましたか?」

「YES。ラピク氏とジマリ氏が。亡くなる直前に」


一気に話は核心へ。


「で、その時のマザリ氏の反応は?」

「新しいチャリティー団体に送ってると言ったそうですが、ラピク氏が調べてみたら、そんな団体はなかった」

「何と。ソレでも誰もマザリ氏が資金を横流ししているとは疑わなかったのですか?」


怒り立つ取調官。マジックミラーの向こう側は既に大騒ぎw


「ただの手違いかと思った。その矢先に2人が殺された。ADFメンバーは動揺して…正直なトコロ、金の心配どころじゃナイのです」

「ラジヤさん。コレに見覚えは?」


取調官は、RPG-7と昌平小学校の見取り図を示す。


「ナンですかコレ?見たコトもありません。防災訓練で使うスタンドパイプかな…」


ため息をつく取調官。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


裏アキバの芳林パーク。秋空は天高く、大気は穏やかだ。


「信じられないわ。このアキバが、世界に初めて"萌え"を発信した街だったナンて…ねぇこの街に、未だ"萌え"は残っているのかしら」

「そう思いたいな。旅立つヲタクは後を絶たないが」

「私、間違ってるかしら」


遠くフライパスする護衛の戦闘ヘリが見える。


「君を呼ぶ心の声に今、君は気づいた。ソレを誰も間違っていたとは逝えないさ」


僕の肩に頭を載せる…ルイナ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ルイナ!私、もう30時間も尋問されてる。面会だと言うから、やっと弁護士が来たのかと思ったのに…」


蔵前橋重刑務所の面会室。収監中のフィリ・サジラ博士とリモートで面会するルイナ。サジラは…身も心もボロボロだw


「え。尋問は弁護士抜きなの?」

「無駄ょ。誰も聞いちゃくれない。どーせテロリストにされルンだわ」

「貴女の大学のルームメイトが闇の傭兵"スグネル"の幹部だったと聞いたけど…」


天を仰ぐ囚人服のサジラ。


「人違いなの。彼は"スグネル"のメンバーと同姓同名で、その誤解は一生解けないわ」

「でも、貴女は去年"リアルの裂け目"を渡って異次元へ行ったわょね?」

「マルチバースに散らばる仲間の研究者に会うためだった。誓ってテロリストに会ったり、訓練キャンプに顔を出したワケじゃナイの」


ソレはウソなのか、ホントなのか?


「サジラ。いったいADFで何があったの?どーしてADFの2人は殺されたの?」

「知らないわ!ねぇルイナ。貴女、SATOに頼まれて尋問に来たの?ねぇコレもSATOの取り調べなの?」

「違うわ。私は貴女の研究の理解者ょ」


しかし、サジラは絶望している。


「でも、SATOの科学チームが調査し、私の研究を"コロナ第34波"のウィルスづくりだと評価したわ」

「私が必ず再評価スル」

「逮捕前には研究の1部しか送れなかった。飢えに苦しむマルチバースに散らばる何万人ものヲタクを救える可能性が、このママでは全て水の泡に帰してしまうわ」


ルイナは決心スル。


「私が力になるわ。SATOの先入観を変えてみせる」

「…やったって無駄ょ」

「そんな!」


最後にサジラの心からの懇願。


「ソンなコトより、私の家族と会って。両親に伝えて欲しい。私は、異次元テロリストなんかじゃナイわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


リモート面会を終えてルイナは肩を震わせている。


「SATOのサジラ論文の評価だけど、アレは科学とはいえないわ」

「どういうコト?SATOの科学チームが調査して"コロナ第34波"のウィルスづくりだと断定したのでしょ?」

「私も読んだけど、多分に政治的な文書(ドキュメント)だった。科学的な検証とは言えない。再評価の必要がアルわ」


ルイナの恐らく唯一の理解者、相棒のスピアは心配げ。


「ソレでも"リアルの裂け目"の向こう側に送っちゃいけないモノを送った事実は残るし」

「害虫や農作物の不作。深刻な食糧不足に悩むマルチバースのヲタクを救う研究だった。次元を超え、広く共有すべき知識で、何人にも独占スル権利はナイ」

「同時に何人も自分の次元を守る権利がアル。違う?」


しかし、ルイナは聞く耳を持たない。


「私ナンか、同じ次元のロシアや中国、インドの科学者とはメル友ょ。ねぇ私を逮捕スル?」


肩をスボめて降参するスピア。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「ベンジ・ラジヤを狙って死んだ女は身元不明のママょ」

「ミユリ姉様、照合は警視庁の国内データ?」

「え。外国人の可能性が?」


ヲタッキーズの3人娘がメイド服で闊歩スル。


「ADFと国内の各都市への通話記録を調べたけど、妙なコトに気づいた。モチロンただの勘違いってコトもあるけど、通話相手の多くは"喜び組"と繋がってる」

「ボスの代替りでお払い箱になった"元"美女軍団?」

「ほぼ全員が"女の武器"を生かして地下で活躍中。秋葉原でも、以前は盛んにマネーロンダリングや武器調達に精を出して大儲けしてました」


頭をヒネるヲタッキーズ。


「その残党が未だ御健在?もうアラフォーでしょ?」

「(姉様と同じw)女盛りです!彼女達が今、どーしてるか気になりません?メイドカフェのバイトに精を出してるとお思いですか?」

「姉様なら、元喜び組方面のコネから探りを入れられルンじゃナイかと」


ミユリさんの出番wムーンライトセレナーダーではなくて。


「貴女達は通話記録の調査を続けて。マザリに関スル情報が引っかかるカモ…でも、少し手伝って」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


神田練塀町のパブ。昼間からメイドがビールを飲んでいる。ミユリさんを見かけ、裏から出ようとするとヲタッキーズw


「変身前のヲタッキーズがお揃いで…なんの御用かしら」

「クリラ・モッズ。昔のお友達が悪の道に戻ったみたいょ」

「私に友達はいないわ。他を当たって」


エアリが1歩前に出る。


「あのね。姉様はおっしゃらないけど、有罪判決を受けた元喜び組が協力を拒めば、秋葉原追放は免れナイから」

「…何が知りたいの」

「兵器の密輸をやってる連中」


溜め息をつく元喜び組。横顔が美しい…コレで若ければ←


「何人かやっていると聞いた。でも、ニューヨークやロンドンがマーケットで秋葉原じゃない」

「この女は?」


死体の写真を見せる。


「キムヒ・パイロね。死んだの?」

「拉致を企み万世橋(アキバポリス)に射殺された」

「ロクな死に方はしないと思ってたわ」


元喜び組は、全く驚かない。


「アキバで奴は何を?」

「さあ。特に付き合いはなかった。キムヒの相棒が秋葉原では嫌われ者だったから。オハナ・ナハン」

「なぜ嫌われ者?」


思い出すのも嫌そうな元喜び組。


「半島の輝ける暁の明星様なんかどーでも良いって奴で。金儲けのコトしか考えナイ喜び組のクズだったわ」

「ねぇ奴が秋葉原でテロを企てる異次元人の過激派と組む可能性はアリ?」

「前からリビア人やシリア人と組んでた。金になるなら悪魔とだって手を組むわ。そーゆーロクデナシ女ょ」


そして、一言つけ加える。


「ミユリ…コレで借りは返したから」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


特別養護老人ホーム"外神田の森"。

ナースがベランダの老婆を指差すw


「どうも…あなたがハマド・マザリさん?」


トンでもないおばあちゃんが振り向く。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


捜査本部のモニターに2枚の画像が並ぶ。


「同じ社会保障番号に同じ身元証明書ね」

「IDを盗んだのね!フリーメーソンかアルカイダか薔薇の騎士団みたい」

「射殺された奴の身元が割れました。名前はキムヒ・パイロ。香港出身の元喜び組」


ヲタッキーズの3人娘がメイド服で颯爽と入ってくる。


「で、コイツの相棒がオハナ・ナハン。兵器の密売をしています」

「通話記録はニューヨーク、ロンドン、雲南省のゴールデントライアングル…元喜び組シンジケートの活動拠点ばかり」

「電話は半年前から?」


エアリとマリレは口々に語る。


「マザリがADFに入会したのは半年前ね」

「ADFの資金の流れが変わったのも、その頃ょ」

「え。元喜び組の奴等がADFに武器を売ってたワケ?」


ミユリさんのまとめ。


「先ずこのマザリを抑えましょ。ADFのオフィスは引き払ったみたいだけど、住み処は分かってるわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


拳銃を目線で構えて突入するラギィ警部。後に続く迷彩服に防弾ベスト、短機関銃を構えたSWAT。一斉に雪崩れ込む!


万世橋警察署(アキバP.D.)万世橋警察署(アキバP.D.)!」


ベランダから(飛行してw)突入したヲタッキーズと合流。


「クリア!」

「クリア!」

「誰もいません」


ソコへ警察無線が入る。


「警部、地下ガレージへ来てください!」


地下ガレージの施錠をバールで壊し入る。中は、地雷やマガジンドラム。RPG-7のケースが山積み。武器庫になってるw


「持てるだけ持って逃げたようですね」


キャップを取り頭を撫でるラギィ警部。


「奴は秋葉原のどこかに潜んでる」

「サーモバリック弾付きのロケットランチャーを持って」

「ちょっとした戦争が出来るわね」


第4章 飛び立つ天使


捜査本部。頭を抱えるラギィ。


「マザリを名乗ったテロリストの正体は未だ不明。過激派としか、わかってナイ。RPG-7を手に入れ、小学校の爆破計画と関わってる」


ルイナがリモートで割り込む。


「マザリを工作員と想定した上で分析にかけてみたけど、彼女はテロ組織の中心人物じゃない。単独行動をしている。明らかに孤立した活動パターンょ」

「そりゃそーでしょ?共犯者を殺して今は1人だし」

「そうじゃなくて、今までもテロ組織の中で孤立した存在だったってコト。漕ぎ手2人がチームの足を引っ張る話を覚えてる?今まで、漕ぎ手は殺された2人だと思ってた」


全員が分かりにくかった例え話を必死に思い出すw


「で…ナンだっけ?」←

「解析の結果、漕ぎ手=妨害者はマザリだった」

「つまり、テロ組織による計画的犯行ではなく、たった1人のテロリストの犯行?」


結論だけ聞けば、飲み込みは早い←


「YES。でも、ホントに彼女がテロリストと100%言い切れる?」

「でなきゃ何なの?兵器やら小学校の爆破計画の図面やら」

「待って。あったのは、あくまで小学校の見取り図ょ。攻撃計画の作戦図面ではなかった」


ルイナの例え話が始まるが今度は全員が必死に食らいつく。


「わかったわ!つまり、コレは"天使と悪魔"なの」

「そーょね!で、結論は?」←

「エッシャーの騙し絵"天使と悪魔"は、知覚の体制化におけるフィギュアグランド効果の典型的な例。知覚はその人の持つ傾向によって左右される。同じ1枚の絵の中に黒い悪魔を見るか、白い天使を見るかは、各々が持っている考え方や先入観によって大きく変わるワケょ!」


ヲタッキーズが応援の弾幕を張る。


「あの図面はジマリの家にもありましたょね?奥さんの話では、小学校の改築計画に入札スル予定だったらしいです」

「だから、図面があっただけなの?」

「死体の近くに落ちてたこのトリガーピンは、マザリが残した可能性もあります」


ラギィは頭を掻きむしるw


「だとすれば、陰謀もないしテロリストもいないってコト?全く別の何かの可能性がアルわ!」

「YES。みんな、腰を抜かさないでょw」

「スピア?」


スク水(ホンキの格好)のスピアがPCを開いたらママ飛び込んで来る!


「元喜び組のキムヒ・パイロと組んでた相棒オハナ・ナハンの顔写真をダークウェブで見つけた。見て!」


捜査本部のモニターに、2枚の顔写真が並ぶ。

1枚はADFの財務担当のマザリ。もう1枚は…


「SATOの顔認識ソフトにかけたら同一人物と判定」

「マザリは異次元人じゃなかったのね?!」

「元喜び組の武器商人だった!」


捜査本部に衝撃が走る。


「異次元人を装いADFに潜り込んで、寄付金を兵器密輸の元手に商売してたw闇の武器商人ょ。最近はロシアに自爆ドローンを売ってたみたい」

「ソレでブラックマーケットインフォメーションがw」

「ソレがラピクとジマリの2人にバレそうになって殺したワケ?」


スピアがつけたしの確認。


「YES。ついでに、弁護士も襲ったけど逃げられたw」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


アキバ某所。変装するオハナ・ナハン。カラコンを外し瞳の色を変える。鮮やかな金髪を切り落とし翠色に染め変えるw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)はフル稼働だ。


「ADF資金担当ハマド・マザリを広域指名手配!神田リバー水上空港に厳戒体制!」

「地下鉄新幹線の末広町ステーションとバスターミナルを監視強化!」

「待って。ソンなありきたりのルートで逃げるとは思えないわ。もっと捜査範囲を広げて!」


ラギィ警部の指示が飛ぶw


「リバー発着の自家用飛行艇のフライトプランを全てチェック!」

「ブンカーから出航スル原子力U-boatに停船命令。臨検が済むまで遣欧潜水艦は出航停止!」

「私、ダークウェブ経由で口座とカードの使用状況を調べるわ。マザリが偽名でお金を動かしたら教えるから!」


猛烈な勢いで、何かのハッキングを始めるスク水(ホンキ)のスピア。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


アキバ某所。全く別人の外見となったハマド・マザリは、ヤタラと落ち着き払った声で、使い捨てスマホを手にスル。


「もしもし。レンタカーの予約をしたいのですが。ケリガと言います」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「神田五軒町でカードが使われたっ!オハナ・ナハンが使う偽名の1つ、ケリガの名義よっ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


カーシェアのオフィスから出てくる翠髪のケリガ。

直ちに捜査員がオフィスの従業員を裏口から外へ。


「全員出ました」

「スナイパー、配置完了」

「ミユリ、拘束して」


ケリガの前にフラリと現れるビラ配りのメイド。

アキバでは日常的な風景だがすれ違い時に囁く。


「オハナ・ナハン。手を挙げて」

「わ、私はケリガょ」

「いーから。カバンを置いて」


ムーンライトセレナーダー必殺技"雷"キネシスのポーズ。


「わかったから、落ち着いて。カバンを、置く、わょ…」


肩から提げてたボストンバックを落としがてら、振り向きザマに銃口がラッパ型に開いた音波銃を取り出すケリガだが…


次の瞬間、射抜かれハチの巣、真っ黒焦げに炭化←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の捜査本部。


「完全な論理エラー。証拠から結論を導くのではなく、証拠を仮説に合わせてしまった」

「ラギィ。そう思うなら、なぜ未だフィリ・サジラ博士は蔵前橋重刑務所に拘置されたママなの?」

「だから!部外秘の制限のかかった文書(ドキュメント)を"リアルの裂け目"の向こう側に送ったからょ。ねぇもう勘弁してょルイナ」


捜査本部解散の片づけ中にラボからリモートで絡む超天才。


「しかし、ソレは異次元テロ行為ではなかった」

「秋葉原デジマ法には違反したの」

「でも、勾留理由は違うでしょ?ADFだから逮捕したんだモノ」


長い長い長ーい溜め息をつくラギィ。


「関係ナイわ。違反は違反」

「関係アルわ。SATOは、彼女をテロリストと決めつけて、研究を分析した。その先入観を植え付けたコトが問題なの。客観的に見れば別の結論に達していたハズなのに」

「だったら、堂々と法廷でそう主張して」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ラギィ警部とのリモートを切り、大事な決断をするルイナ。


「みんな。私のラボから出て。巻き込みたくない」

「私は相棒ょ。バディとリスクはシェアする」

「テリィたん。私、間違ってるかな?」


ソンなコト、僕にはワカラナイ。


「信じる通りにすべきだ。僕達は、大事なヲタ友の進む道を推すだけさ」


送信完了。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「…だから、フィリ・サジラ博士の研究の残りを"リアルの裂け目"の向こうに送ったの。30分後には身柄を拘束された。でも、今は保釈されてる。みんなゴメン。前科者になっちゃった。テヘペロ」

「な、なぜソンなコトを?」

「義務だと思ったの。彼女の同僚として。科学者として」


翌日夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。ラボからオンライン呑みで参加しているルイナを囲む"常連呑み"だ。


「でも、ラギィ。私に勝ち目はアルのょ。あの研究は、どう考えても武器には使えないわ」

「でも、あの時はソレがわかってなかったの!」

「ルイナ!SATOの機密情報アクセス権を失ったって?」


今度はスピアが御屋敷に飛び込んで来る。


「そーなの。ゴメンね、スピア。SATOの顧問も返上しようと思ってる…最初にサジラの身柄を拘束したのはSATOだった。レイカ司令官は、全部知ってたのね」

「ねぇラギィ。何とか出来ないの?困るのは事件捜査に超天才のお知恵拝借が出来なくなる貴女でしょ?」

「えっ!でも、コレばかりは所轄の力じゃ…ねぇSATOの機密扱いのプロジェクトにも参加出来なくなるんでしょ?SATOの仕事は続けられる?資格ナシでどうやって協力スルつもり?」


超天才の回答は簡潔だ。


「もうSATOに協力はしないわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


オンライン呑みを終えたルイナに来客。


「レイカ司令官w」

「何も話さないつもり?コレじゃ気まずくて、私もいたたまれないわ」

「…今まで何年もの間、SATOに協力出来たのが驚きだったのだと思います」


SATOの最高司令官はうなずく。


「ねぇ。私達の間で決定的な意見の不一致が発生したのは、今回が初めてじゃナイ。貴女がテリィたん達とつきあい出してから、アレはショックだったわ」

「私、突然ゴスロリに目覚めたw確かに、国家的財産でもある超天才には、ありうべからざるコトだったかもクスクス」

「いや、日常茶飯だょ。このアキバではさ」


そう逝ってラボに入りかけた僕のスマホにメールw


「おっと。また"リアルの裂け目"で事件だ。OK。on my way。ソレじゃ。ルイナ、また後でね」

「テリィたん。気をつけて」

「ルイナもな!」


指2本で敬礼し出掛ける僕を見送るルイナ。


「大丈夫?ルイナ」

「わからないわ、レイカ司令官…思ったより辛い」

「さぁどーなるかしら。次回に続く、ね?」



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"冤罪"をテーマに、コロナウィルス培養の疑惑を受ける遺伝子組み替え科学者、異次元人支援NGOの資金担当、NGOメンバー、闇の商人とその相棒、強盗を追う超天才や相棒のハッカー、ヲタッキーズ、敏腕警部などが登場しました。


さらに、冤罪をかけられた科学者の苦悩や結果として冤罪に追い込む警察の姿勢などもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、第8波コロナただ中の秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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