一日目の夜
その夜、教員会議を終えたあと、点呼をとるために生徒たちの部屋を回ることになった。
生徒たちは、3人から4人一部屋で過ごしている。
アレックス先生と加瀬先生が男子の部屋を、アン先生と私が女子の部屋を担当する。
女子の部屋のほうが少ないし、注意という注意もセイレーンの二人にむやみに歌わないようにと釘を刺すだけなので早く終わった。そして、集合場所でアレックス先生と加瀬先生の二人を待ったいた。
「アン先生、水川先生、大変です。ランスが脱走しました。そして、それを止めようと、エリックとレオが追いかけました。」
「ランス・・・」
脱走?どういうこと?留学生は希望して来てるんじゃないの?
「どうして・・・」
「今は理由よりもランスを捕まえるほうが先よ。もし、森に入ってしまってたら大変。」
「加瀬先生と水川先生はキャンプ場の敷地内を探して、私とアレックス先生は外まで探しに行くわよ。」
「え?」
「この森は、違う世界へ通じているドアがいくつもあるの。あなたたちが何もわからずにうろつくとどっかに転移されてしまう恐れがあるわ。私たちなら大丈夫。」
「でもお二人だったら人手が足りないのでは?」
「大丈夫よ。いまからどちらへ向かったか調べるから。」
そういうとアン先生の回りの空気が変わり始めた。アン先生が青白く光りだした。
そして胸元から、先のとがった水晶が飛び出し、森の北側のほうを指ししめした。
「こっちのようね。二人は敷地内の北側を念のため探して。」
「アレックス先生行くわよ。」
「「「はい」」」
私と加瀬先生は懐中電灯を用意しに部屋へ戻り、アン先生とアレックス先生は手元から光を出し先に山へ向かった。
懐中電灯を持ち、長袖の上着を羽織る。下半身は元もとジャージだったからそのままだ。
「加瀬先生、お待たせしました。」
「大丈夫ですよ。行きましょう。」
加瀬先生と二人で外へ向かう。外は薄暗く、月が青白く森や草草を照らしている。なんだかとても不気味だ。
「ランスくーん、エリックくーん、レオくーん」
三人の名前を呼ぶ。返事はなく、フクロウの声だけがホーホーと帰ってくる。敷地の外に出てはいけないと言われるのも納得してしまうような神秘的な森の空気が漂っていた。
私たちは三人の名前を呼びながら、北側へと歩いて行った。
「先生?」
北側へ向かう道が狭くなり、一本道になったころ、向こうから、歩いてくる人影が見えた。
「エリックくんとレオくん?」
「はい。そうです。」
「よかった。無事で。心配したよ。」
「すみません。アン先生とアレックス先生にも会いました。ランスを追いかけたんですけど、ランスどんどん北へ行っちゃって、この敷地から出てしまって・・・」
「端のほうでどうしようかと考えていたんですけど、アン先生とアレックス先生に会って、戻れと言われたので、戻ってきました。」
「そうなんだ・・・」
「じゃあ、二人は僕たちと宿舎に帰りましょう。水川先生、僕たちも一回二人を送ってからまた来ましょう。」
「はい。そうしましょう。」
わたしたちは二人を宿舎に送ることにした。
「先生、すみません。ご迷惑をおかけして。」
「いいえ、二人は追いかけてくれたのよね?次は追いかける前に教えてくれると助かるけど・・・」
「ランス、アヴァロンに帰りたいらしくて・・・」
「え?帰る?」
「今の時代は、飛行機で来るんですよ。普通。」
「ウェールズから来れるんです。」
「で、飛行機を使わない裏技でこの森のどこかから転移できるらしくて・・・」
「ランスのおじいちゃんが昔使ってたんだって。」
「えー。そんな方法が・・・」
「そう。だからそれ使って帰るって言ってて。」
「困ったなぁ。使う前に帰ってこれればいいけど・・・」
「ほんとに。」
宿舎についた。二人を部屋まで送り、私たちは再度北側へ向かった。
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