16話
俺は、誰も居なくなった教室を見ていた。さっきまで、少し騒がしかった教室は、今静まりかえっている。
「・・・帰るか」
部室の戸締りおし、部室を出て鍵をかけた。それから職員室に鍵を返しに向かった。
「失礼します。部室の鍵を返しにきました」
職員室に入り、鍵置きにかけて出て行こうとすると・・・・・・・
「増田ちょっと来い」
白川に呼び止められた。一体何の様なんだ。そう思いながら、白川の席へ向かって行く。
「何ですか?」
「今日部活行ったんだな」
「まぁ・・・一応部員ですし」
「そうかそうか」
白川は癖毛の髪を弄りながら言ってきた。たぶん白川にとって、あの癖毛がチャームポイントなのかもしれない。
「で、お前も、辞める気になったのか?」
「・・・いえ、辞めません」
そう言うと白川は驚いた顔をしていた。
「そんなに驚くことですか?」
「まぁな。部員が入ってもいつもも初日で辞めていくのに、お前はやめないと言ったからな」
これは本当に謎なのだ。どうして、すぐ辞めていくのかまったくわからない。美和先輩が関わっているんだろうが・・・
「それで?春園とは上手くやっていけそうか?」
「・・・まだわかりません」
「そうか。俺は増田が春園と上手くやっていけると思ってるがな」
急に白川がそんなことを言ってきた。
「どうしてそう言いきれるんですか?」
またも白川は癖毛を弄りはじめ・・・・・・
「ま、なんて言うか男の勘ってやつだ」
根拠を言ってくれるのかと思ったら、圧倒的にハズレそうな男の勘などと言い出した。
「その勘は多分あたりませんよ」
「フッ。どうだろうな」
美和先輩と上手くやっていけるかどうかなんて分かるはずもない。今上手く言っているだけで、これからどうなるかなど誰にも分からないのだ。そう・・・・・過去の俺のように。
「ま、頑張れよ。高校生は高校生らしく青春でもしとけ。今やっとかないと後悔することだってあるぞ」
「・・・失礼します」
そうして俺は職員室を後にしたのだった。
靴箱まで行き、靴を履き替え帰ろうとしていると
「お!侑大じゃねーか!」
智則が声をかけてきた。どうやら部活が終わった後のようだ。今から帰るのだろう。
「少し待っててくれよ!荷物持ってくるから!」
そう言って急いで荷物を取りに行った。どうやら一緒に帰るののは確定らしい。
「待たせたな」
直ぐに智則が荷物を持ってきた。
「・・・別に待ってない」
「そうか?」
笑顔で言ってきた。こいつの笑顔に一体どれだけの女子が落とされてきたか。
門を出たあとしばらく無言の状態が続いた。いつもは、ウザイくらい声をかけてくるのに今はかけてこない。智則は、こういう時は空気が読めるやつなのだ。
「何か気まずいし話さないか?」
結局今の空気を変えるため、俺から話しかけた。
「侑大から言ってくるなんて珍しいな」
「・・・そうか?」
「ああ」
「・・・いろいろあるんだよ」
「まぁ。お前が何を考えてるかしらねーけどさ。今を楽しんだほうがいいぜ」
智則がニコニコしながら言ってくる。でもそれは俺には重すぎる事なんだよ智則。
「じゃあ俺はこっちだから」
駅にたどり着いたのでこっから別々だ。俺と智則は家が反対側なのだ。
「おう!また明日な!」
「・・・・・・」
俺は帰りながら今日、白川が言った言葉と智則に言われた言葉を思い出していた。今を楽しめか・・・・・・そして後悔するか・・・
もう遅いんですよ。俺には、楽しむ資格もない。残っているのは後悔だけだ。
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