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第十一回 曹孟徳死於非命 劉玄徳由蛟成龍

夜の帳が下りた長江のほとり、呉の陣営には、静寂の中に緊張感が漂っていた。孫権は、兄孫策の遺志を継ぎ、若くして江東を治める君主である。彼の心は、迫りくる曹操の大軍を前に、激しく揺れ動いていた。


「周瑜、そなたはどう思う?曹操の軍勢は圧倒的だ。我々に勝ち目はあるのか…」


孫権は、長年の友であり、信頼する将軍周瑜に問いかけた。周瑜は、静かに、しかし力強く答えた。


「主君、確かに曹操の軍勢は強大です。しかし、彼らは長距離の遠征で疲弊し、水戦にも不慣れ。疫病も蔓延しており、その力は見た目ほどではありません」


周瑜は、巧みな弁舌で、曹操軍の弱点を一つ一つ指摘していった。


「一方、我々には地の利があり、水戦の経験も豊富です。兵士たちの士気も高く、十分に勝利の可能性はあります」


孫権は、周瑜の言葉に少しずつ希望を見出し始めたが、それでもなお、不安は拭い去れなかった。


「しかし、万が一敗れれば、呉は滅亡の危機に瀕する。民たちの安全はどうなるのだ…」


「主君、ここで退けば、我々は永遠に曹操の支配下に置かれることになります。自由を失い、屈辱に耐え忍ぶ日々を送ることになるでしょう。それは、主君が望む未来でしょうか?」


周瑜は、孫権の目を真っ直ぐに見つめ、語りかけた。


「主君は、若くして呉の君主となり、その勇気と決断力で民を導いてきました。この戦いに勝利すれば、主君は真の英雄として歴史に名を残すでしょう。さあ、決断の時です。江東の未来、そして主君の誇りのために、共に戦いましょう!」


周瑜の熱い言葉は、孫権の胸に深く響いた。彼は、

父兄の遺志、そして民たちの未来を守るため、ついに決断を下した。


「分かった。周瑜、そなたを総大将に任じる。全軍を指揮し、曹操軍を打ち破るのだ!」


「はっ!必ずや、主君の期待に応えてみせます!」


周瑜は、力強く応え、その瞳には勝利への確信が宿っていた。こうして、呉は全軍を挙げて曹操軍と決戦に臨むことを決意したのだった。


周瑜の言葉が、呉の陣営に響き渡った。孫権は、その決意に呼応するように、静かに頷いた。


「江東の未来のため、この戦い、必ずや勝利を掴み取る!」


その頃、劉備は荊州の守りを固めつつ、赤壁の戦いの行方を見守っていた。


「孔明、我々にできることはないのか?」


劉備が焦燥を滲ませながら問うと、諸葛孔明は静かに答えた。


「今は、天の時を待つのみ。我々は、この戦いの後に備え、荊州の地を固めることに専念すべきです。」

一方、曹操は、赤壁に集結させた大軍を前に、高らかに宣言した。


「天下統一は、目前である!この戦いに勝利し、江南を平らげ、天下を我が手に!」


曹操軍の兵士たちは、その言葉に呼応し、鬨の声を上げた。しかし、その時、予想外の事態が起こる。突如、それまでとは逆向きの強い東南の風が吹き始めたのだ。


「何だ、この風は…!」


曹操が戸惑う中、周瑜は黄蓋に命じた。


「黄蓋殿、今こそ、火計の時です!」


黄蓋は、覚悟を決めて、燃え盛る船団を曹操軍へと向かわせた。


「我が身を犠牲にしてでも、曹操軍を打ち滅ぼす!」


赤壁の炎が夜空を焦がし、曹操軍の船団を焼き尽くす中、曹操は敗走を決意した。


「全軍、撤退!北へ退く!」


阿鼻叫喚の中、曹操はわずかに残った兵を率い、馬に鞭打って逃走を始めた。しかし、その逃走経路は、劉備軍によってすでに封鎖されていた。


まず、趙雲率いる劉備軍の伏兵が、曹操軍に襲いかかった。趙雲は、愛馬白龍に乗り、槍を手に、神出鬼没の動きで曹操軍を翻弄した。


「曹操め、逃がすものか!」


趙雲は、槍を巧みに操り、曹操軍の兵士たちを次々と薙ぎ倒した。その姿は、まるで戦場を舞う龍のようであった。


趙雲の猛攻に混乱する曹操軍。そこへ、張飛率いる伏兵が、さらに襲いかかった。


「死に晒せぇ!」


張飛は、蛇矛を振り回し、その豪快な動きで曹操軍を蹴散らした。その咆哮は、戦場に轟き、敵兵を震え上がらせた。


趙雲と張飛の猛攻により、曹操軍は完全に混乱状態に陥った。そこへついに、関羽率いる伏兵が姿を現した。


関羽は、得物を構え、その威厳ある姿で曹操軍を威圧した。


「丞相、もはやこれまでか…」


関羽は、静かに、しかし力強く言った。曹操は、かつて関羽に受けた恩義を思い出し、複雑な表情を浮かべた。


「雲長、どうか道を開けていただきたい。」


曹操は、声を絞り出して言った。関羽は、しばらくの間、曹操を見つめ、やがて、静かに口を開いた。


「丞相、かつての恩義に報いるため、今回は見逃しましょう。しかし、次はないと思われよ」


関羽は、そう言い残すと、兵を引いた。曹操は、九死に一生を得て、再び逃走を始めた。


しかし、劉備軍の伏兵は、それだけではなかった。劉備軍の兵士たちが、各地で待ち伏せし、曹操軍に襲いかかった。


曹操軍は、度重なる伏兵の攻撃に、疲弊しきっていた。兵士たちは次々と倒れ、曹操自身も、何度も死線を彷徨った。


それでも、曹操は諦めなかった。彼は、自らの知略と勇気を信じ、必死に逃走を続けた。


赤壁の戦いは、孫権・劉備連合軍の勝利に終わった。


「我々が、あの曹操を打ち破ったのだ!」


孫権は、勝利の喜びに沸きながらも、その目に、更なる野望を宿していた。


「天下は、まだ決まっていない。これからが、本当の戦いだ。」


劉備もまた、この勝利を足掛かりに、天下取りへの道を切り開こうとしていた。


「荊州を拠点に、天下に号令するのだ!」


しかし、勝利の陰で、それぞれの思惑が複雑に絡み合い、新たな戦いの火種が生まれようとしていた。


「天下三分の計、ここからが始まりだ」


孔明は、静かにそう呟いた。


俺はこの気に襄陽、新野周辺更には宛城まで軍を進めて漸く武関と連携を取り生き残った禁軍の数万を朝廷に返す事ができた。禁軍に復帰した将兵らは各々昇進し、隊長格として司隸を守護した。


そしてついに、曹操は長江を渡り、北へと逃げ延びることができた。しかし、その軍勢は、かつての面影はなく、残ったのはわずかな兵と、深い傷跡だけだった。


「この屈辱、必ずや晴らしてくれる!」


其の矢先に曹操は何者かによって殺された。曹操の死は、瞬く間に各地に伝わった。曹操の支配下にあった幽州、并州、青州、冀州、徐州、兗州、豫州では、後継者を巡る争いが勃発し、各地で反乱が起こった。


「丞相が亡くなられただと…?誰が後を継ぐのだ!」


「我こそが正当な後継者だ!」


各地の豪族や武将たちは、我こそが正当な後継者であると主張し、互いに争いを始めた。


しかし、合肥などの要衝には、張遼をはじめとする曹操配下の名将たちが配置されており、彼らはそれぞれの持ち場で領地を死守した。そのため、孫権や劉備も容易に侵攻することができなかった。


「曹操の死は好機だが、迂闊に動けば、手痛い反撃を受けるだろう。」


孫権は、慎重に情勢を見極めようとしていた。


曹操軍の内紛を静観することにした。

曹操の死は、天下に新たな混乱をもたらした。曹操が築き上げた強大な勢力は内側から崩壊していった。


劉備は更に軍を南に進めた。南荊州の四郡を手に入れるためである。


劉備は、曹操の死後、混乱に乗じて南荊州四郡を手に入れるべく、諸葛亮、徐庶、馬良らと共に策を練り始めた。


「曹操が死んだ今、この好機を逃すわけにはいかない。南荊州四郡を我が手に収め、荊州における足場を固めるのだ!」


劉備は、拳を握りしめ、力強く宣言した。しかし、南荊州四郡は、それぞれ独自の勢力を持っており、容易には服従しないだろうと予想した。


「南荊州四郡は、それぞれ独立した勢力であり、武力で制圧するには時間がかかります。ここは、計略を用いて、彼らを味方につけるのが得策かと」


諸葛亮は、地図を広げ、各郡の情勢を分析しながら、策を練りました。


「まず、長沙郡の太守である韓玄は、勇猛ではあるが、疑心暗鬼な性格です。彼には、曹操の残党が攻めてくると偽情報を流し、混乱に乗じて城を奪い取りましょう」


「桂陽郡の趙範は、欲深く、裏切りを繰り返す人物です。彼には、我が軍の強大さを見せつけ、降伏を促しましょう。もし抵抗するようであれば、その隙を突いて城を攻め落とします」


徐庶は、冷静に各郡の太守の性格を見抜き、攻略方法を提案しました。


「武陵郡の金旋は、酒色に溺れる愚鈍な男です。彼には、酒と美女を贈り、油断させてから攻め込みましょう」


「零陵郡の劉度は、優柔不断で、決断力に欠ける人物です。彼には、偽りの降伏を申し入れ、油断させてから城を攻め落とします」


馬良は、各郡の太守の弱点を巧みに利用する策を提案しました。


「皆の策、いずれも素晴らしい。この策を組み合わせ、南荊州四郡を我が手に収めるのだ!」


劉備は、諸葛亮、徐庶、馬良らの策を採用し、南荊州四郡攻略に向けて動き出した。


かくして、劉備軍は、計略と武力を駆使し、南荊州四郡を手に入れるための戦いを開始した。


劉備軍は、まず零陵郡へと進軍しました。零陵郡の太守・劉度は、優柔不断な性格で知られており、劉備軍の強大さに恐れをなして降伏を申し出た。しかし、劉度は裏切り者であり、降伏は偽りであった。彼は、劉備軍が油断した隙に奇襲を仕掛けようと企んでいた。逆に諸葛亮は劉度の裏切りを既に見抜いていた。劉備軍は、劉度の奇襲を逆手に取り、逆に奇襲を仕掛けた。この戦いで、趙雲が獅子奮迅の活躍を見せた。趙雲は、槍を手に単騎で敵陣に突入し、敵兵を次々と薙ぎ倒しその勇猛果敢な姿に、敵兵は恐れをなし総崩れとなり劉度は逃走を図りましたが、趙雲に討ち取られ、零陵郡は劉備軍の手に落ちた。


劉備軍は桂陽郡へと向かった。桂陽郡の太守趙範は、欲深く裏切りを繰り返す人物として知られていた。彼は、劉備軍の強大さに恐れをなし、降伏を申し出た。しかし、趙範は劉備軍を油断させ、夜襲を仕掛けようと企んでいた。しかし、徐庶は趙範の裏切りを見抜いていました。劉備軍は、趙範の夜襲を事前に察知し、逆に夜襲を仕掛けました。この戦いでも、趙雲が活躍しました。趙雲は、混乱に乗じて敵陣深く侵入し、趙範を捕らえました。趙範は降伏を余儀なくされ、桂陽郡も劉備軍の手に落ちた。


武陵郡では、馬良の策が功を奏し武陵郡の太守金旋は、酒色に溺れる愚鈍な男だった。馬良は、金旋に酒と美女を贈り彼を油断させた。金旋は、警戒を解いて宴会を開き、酔いつぶれてしまった。その隙を突き、劉備軍は城内に侵入し、金旋を捕らえた。金旋は降伏し、武陵郡も劉備軍の手に落ちた。


最後に、劉備軍は長沙郡へと兵を進めた。長沙郡の太守・韓玄は、勇猛ではあるが、疑心暗鬼な性格でした。諸葛亮は、韓玄の性格を利用し曹操の残党が攻めてくるという偽情報を流し城内を混乱に陥れた。


疑心暗鬼に陥った韓玄は、配下の将軍である黄忠を疑い、処刑しようとした。しかし、黄忠は怒り、韓玄を討ち取りました。混乱に乗じて、劉備軍は長沙城を占拠し、黄忠を配下に加えることに成功し黄忠は、劉備の仁徳に感銘を受け劉備軍に帰順した。


こうして、劉備軍は諸葛亮、徐庶、馬良らの計略を駆使し、零陵、桂陽、武陵、長沙の順に南荊州四郡を平定した。劉備は、荊州における足場を固め、天下統一への道をさらに進むことになった。


南荊州四郡を平定した劉備軍は、江陵に凱旋した。その中には、長沙郡で劉備軍に帰順した猛将・魏延の姿もあった。魏延は、その勇猛果敢な戦いぶりで、劉備軍の兵士たちを大いに鼓舞していた。


劉備は、魏延の功績を称え、労をねぎらうために、彼を謁見の場に呼んだ。魏延は、堂々とした態度で劉備の前に進み出た。


「魏延、そなたの働き、まことに見事であった。よくぞ、我が軍を長沙に導いてくれた。」


劉備は、笑顔で魏延に語りかけた。しかし、その時、諸葛亮が静かに口を開いた。


「主君、魏延は裏切り者でございます。このような者を味方につけては、後々災いを招くかと」


諸葛亮は、魏延の過去を指摘し、その危険性を説いた。


「魏延は主君韓玄を討ち、その首を差し出して我が軍に帰順しました。そのような男は、再び裏切る可能性がございます」


諸葛亮は、魏延の裏切りを警戒し、劉備に斬首を促した


「ここは、魏延を斬り、後顧の憂いを絶つべきかと。」

諸葛亮の言葉に、場は静まり返った。魏延は、驚愕と怒りを露わにし、劉備を見つめた。


その時、徐庶が静かに立ち上がり、諸葛亮に進言した


「孔明、魏延は確かにかつては裏切り者でありました。しかし、彼はその過ちを悔い、我が軍のために尽力してるんだ。彼の功績を考慮し、もう一度機会を与えるべきではないか?」


徐庶は、魏延の功績を評価し、その命を救うよう訴えた


「それに、主君は常に仁義を重んじておられます。魏延を斬ることは、主君の仁義に背く行為となりましょう」


徐庶の言葉に、劉備は深く頷いた


「元直の言うとおりだ。魏延、そなたの過去は問わぬ。これからは、我が軍のために力を尽くしてくれ」


劉備は、魏延の命を救い、彼を配下に加えることを決めた。魏延は、劉備の寛大な処置に深く感謝し、忠誠を誓った。


「この魏延、命に代えても、主君のために尽くします!」


こうして、魏延は劉備軍の一員となり、その後の戦いで大いに活躍することになる。


更に黄忠、魏延らを派遣し交州の鬱林、合浦、珠崖より西を手に入れた。


宛城に居る高順はこれを聞いてから内心はもう俺死んでも良くねぇか?流石にもう平気だべ?


そうは問屋が卸さないに決まっているのに無駄な足掻きをするのも人の性だろう…。


劉備の荊州支配と交州を切り取った事に不満が溜まる江東軍は劉備を嫌い始めた。


其れもその筈である。赤壁の戦いは彼らが血を流し大局を定めて最後は劉備が持っていったのだから…其れに飽き足らずに荊州と交州の西半分を持っていったのだから不満は当たり前のように溜まる。


高順は曹家の内訌が他に累に及ばない様に細心の注意を払い、対応していた。

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