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第九回 兵分三路取北方 劉皇叔三顧茅盧

曹操の目線は荊州では無く東南の揚州にあった。天下広しとといえども、曹操とまともに戦える勢力は北の公孫瓚南の劉表、孫権、劉璋西の馬騰、韓遂くらいである。


馬騰、韓遂は段煨や徐栄らが鍛えた禁軍の精鋭がいる為敵にはならない。


高順はまさかと思ったが、曹操は暴挙に出た。


鄱陽湖で孫権らと一戦交えて敗れはしたものの兵を整えて荊州に兵を直接進めてきた。


張五の報告と照らし合わせてデータ野球で有名な監督ばりにボヤき始めた。


「…ったく野郎…順序逆にしやがったな?こうなりゃやる事やってやるよ…勝てるか?知らねぇよ…」


「た、たいしょう?」


「んあ!?お、居たのか」


「へい…」


「んじゃ、野郎が来たから来るのか東から来るのか調べろ」


「へい!」


夏侯惇が宛城方面から進軍してきた。


「子孝!三万で新野を攻めろ。上将軍は俺が引き受ける」


「元譲…」


「なぁに、孟徳だって本気でお前の事を殺せんさ」


曹仁は内心呟いた


アンタぁ…戦に関しちゃ誰よりも下手だろうが…司空の元に居なきゃ役に立たねぇよ…!まだ妙才の方が役に立つわィ!


「礼を言う」


副将の李典を連れて新野に着いた。


「将軍、どう戦うのです?」


「うむ、司空の陣法を使うしかあるまい?」


「どのような?」


「八門金鎖の陣だ!如何に劉備も破れはせん!」


劉備の陣営は慌てた。


劉備は顔にこそ出さないが小刻みに震える手を抑えつつ徐庶に聞いた。


「元直…策は?」


「ご安心を」


「どうやってだ?」


「あれなる陣は『八門金鎖』と言います。古来より入る者を帰さぬほど堅牢です」


「じゃ、城に拠って戦うにしたって…」


張飛が吠えた。


「あー!まどろっこしい!んなもん俺が先に入って蹴散らしてくりゃいいじゃねぇか!」


「益徳、黙ってろ…!」


「三弟、今はそれどころじゃない」


「しかしよぉ、兄貴…」


「ハハハハハハ!三将軍は心直口快ですな!」


「ケッ!」


「元直兄」


「関将軍」


二人は目線を交わし張飛を抑え込んだ。


「皇叔、破るには先ず話を聞いてください」


「わかった」


「この陣は霊亀八法から発展した陣にございます。方角でいうと、死(北西)、驚(北)、開(北東)、景(西)、休(東)、杜(南西)、傷(南)、生(南東)となります」


「んで?どう破るのだ?」


「死・杜から入ると全滅、驚・休・傷から入ると負傷、開・景・生から攻めるが吉という訳です」


「なるほど…」


その頃、曹洪、朱霊達は兵を率いて公孫瓚が治める青、冀、并、幽の四州を攻めて支配下に置いていた。



クソッ…!さすが曹操と言ったところか…?だいぶ前の話だが、情報封鎖でどうにもならなかった。


三万の八門金鎖は趙雲が徐庶の指示通りに動き、曹仁を後一歩の所まで追い詰めた。


退いてきた曹仁を見てただ事では無いと感じ取り一先ず曹操に報告をして自身も残りの兵を率いて劉備を攻ようとしたが、兵達が疲弊し始めたので宛城で待機し陣容を整えて再度攻めるという事になった。


「ふむ…子孝が敗れるのは無理は無い…大耳野郎に軍師が付いたのでは?」


「元譲!いくら野郎に知恵が付いたってこんな負け方はねぇだろうが!」


「子孝、昔の気性に戻っておるぞ」


「…!」


「まぁ、良い。気にするな、俺とて偶には戻るからなぁ」


「そうだな。学問の先生をバカにされて問答無用で斬ったっけ?」


「あぁ、お前みたいに勘当された訳では無いがな」


「「ハッハッハッ!」」


高順がこの場にいたら間違いなく『お前ら笑ってる場合か?言い訳をきちんと考えとけ』と冷や水を掛けていただろう


高順は直ぐに諸将を南に差配し、劉表に曹操が来ると挨拶をした。


「高将軍、礼を言う。だが、あの曹操は幽、冀、并、青、兗、徐、豫七州も手に入れたのだぞ?」


「ふふふ、景昇殿きにめされるな。いくら曹操といえども我らには荊州という土地があるではないか!我らが南陽の地を守り抜けばいくら曹操が戦巧者でもそうやすやすと勝てぬ」


そうこうしてるうちに劉備は『三顧之礼』を済ませた。三度目は特に熱く語ったようで劉備は手紙で『私は漸く水を得た魚になったぞ!』と喜びをお裾分けしてくれたが俺としては全く興味がないのである。


史実を簡単に言えば大卒ニート詐欺師がヤクザの組長を騙してなるようになっただけだからね?諸葛亮なんざ【出師表】さえ書かずに黙々と蜀漢を運営していたらすごいと思うけどあんな綺麗事を並べるからには権力が欲しいという思いが文面から滲み出て詐欺師っぽいんだよなぁ…。


三度目の会話内容は後世では隆中対と言う作品になっている。


「孔明先生。わたくしは漢室再興の志を抱き、各地を転戦しております。しかし、智謀に乏しく、思うように事が進みません。先生には、かねてよりその名声を聞いております。天下の情勢をどのように見ておられますか? 何か計略はございますか?」


「董卓の乱以来、多くの豪傑が台頭し、多くの地域を支配しました。曹操は袁紹と比べれば、当初は勢力も名声も劣っていました。しかし、曹操は袁紹を破り、弱小から強大へと成長しました。これは天の時だけでなく、人事をうまく行った結果でもあります。」


「現在、曹操は百万の兵を率い、天子を操り、諸侯を従えています。彼と正面から戦うのは困難です。孫権は江東を治めており、三代に渡る支配で、地勢も安定し、民衆の支持も厚く、優秀な人材もいます。彼とは同盟できる可能性がありますが、攻めるべき相手ではありません」


「荊州は、漢水と沔水に恵まれ、南海に近く、東は呉、西は巴蜀とつながる戦略上重要な場所です。武力を行使するのに最適な土地ですが、その主である劉表は、それを守る能力がありません。これは天が将軍に与えたチャンスと言えるでしょう。将軍はいかがでしょうか?」


「益州は険しい山々に囲まれ、肥沃な土地が広がる天府の国です。高祖劉邦がここを拠点に帝位に就きました。現地の劉璋は暗愚で、北には張魯がいます。豊かな国土と人材を持ちながら、民を顧みず、有能な人材は賢明な君主を待ち望んでいます。」


「将軍は帝室の血を引かれ、信義は天下に知れ渡っています。英雄が集まり、人材を求めておられる。もし、荊州と益州を手に入れ、堅固な地盤を築き、西方の諸民族と和睦し、南方の夷越をなだめ、孫権と同盟し、国内の政治を立て直せば、天下の情勢が変わる時、荊州の軍を宛と洛陽に向かわせ、将軍ご自身は益州の兵を率いて秦川から進軍すれば、民衆は喜んで食料を差し出し、将軍を迎えるでしょう」


「そうすれば、覇業を成し遂げ、漢室を復興できるでしょう」


「まさにッ!先生の言葉はまさに私の心に響きました…!」


後日、関羽と張飛は寂しさを抑えられず校場で暴れていた。


「二弟、三弟。わしにとって孔明は、魚にとって水のような存在だ。これ以上、そのようなことを言うな!」


こうして劉備は文武の顧問が付いた形で新たに曹操と争うこととなった。


関羽、張飛らが此方に道場破りもとい…出稽古に来たので相手にして飯を食ってる時ですら孔明の悪口である。


「三将軍、ご機嫌が優れぬようですな?」


「聞くんじゃねぇよ!孝父、相手してくれ!」


『しろ』じゃないだけマシか…、張飛は士大夫層に歪んだ憧れが有るからな…金は持っても教養は持ってない…まぁ、一流企業のボンボンは嫌な性格してるが成金の息子は教養が無い分素直であるという事で納得しておこう。


「高将軍!おるか!」


「ほぅ?二将軍もこられたようだな」


関羽が姿を見せるとそこに張飛の姿もあって若干の顰めっ面を見せた。


「三弟…」


「なんでぇ、兄貴…」


「ふははは、我ら考える事は同じだな?」


「おふた方、皇叔に不満があるのはわかり申した。些か女々しいかと思いますがね」


「んだと!?」 「どういう意味か?」


「お二人の武勇こそ無双に強いが、智謀に関しては…あの孔明には及ばぬ。それも当然あちらは学問、お二人は武勇と胆力のみを極められた」


「的は得ておる」


「怖いもの知らずのお二人は『卒の中の将であって、将の中の将にはなれませぬ』と言ったところですかな?」


「ぬぅあにぃ!?貴様ァ…言わせておけば…!」


「三弟!止めぬかっ!」


「…、あ、兄貴だって…」


「うむ、高将軍は百戦錬磨の名将…ではご教授頂こうかね?」


「なら、毎日碁をうとよろしい」


「んだと!?」


「碁を打てば嫌とと言うほど対局を見ねばならなくなる故…」


関羽は何かを悟った。張飛は全く分からないでいたがその日の晩には二人とも碁を打ち兵法の研鑽に勤しんだ。


時同じくして曹操の辞令により夏侯惇は征南将軍として七万を率いて新野に侵攻した。


「子孝、共に雪辱を…!」


「わかった!」


荊州内部は一人の女の意見によって後継者を失い、それ以降劉表も抜け殻のように全てを諦めた。


これに高順は激怒して襄陽城に入り蔡瑁を問い質した。


「貴様の姉は何がしたいのだ!」


「姉は…」


蔡瑁の口から荊州を自身の息子が支配しその権益を享受したいなどと決して口に出せなかった。


「荊州諸将の反応は?」


「芳しくない…」


「だろうな!たかが女にここまで丸め込まれて面白いわけが無い!いいか?こうなりゃお前が荊州を仕切るのだ!」


「わ、私が…?」


「うむ、長年荊州の軍を統率してきたのはお前だろ?ならば此処で曹操相手に一戦交えろ!」


「どうやって?」


「いいか?曹操に降る降らないは別として、だ。己の価値を見せつけねば所詮捨て駒ぞ?」


蔡瑁は高順の話を聞いて姉の意見を無視し、急ぎ軍備を始めた。


これを見た高順は軍を長江の南岸に移し来る大戦に備えた。


夏侯惇は諸将と共に新野に侵攻した。


「良いか!これは劉備を滅ぼす又と無い好機!なんとしてでも打ち滅ぼせ!」


「「おぅ!」」


劉備は伏兵を上手く使い、徐庶の的確な指示もあり夏侯惇の七万を撃退して新野から一路南に向かった。


十万の民を添えての逃避行であるが、高順が曹操軍の行き先を阻んだ。


「高将軍!路を譲られよ!」


「我が背には民が居る!」


「民…?陛下の意に背き天下を乱した劉備に付き従う者らの事か!?」


「それでも民だ我ら官の争いに民を巻き込むな!」


曹操は少しばかりこの理想に偏りを見せたかつての友に対して失望した。


高順、見損なったぞ?あの袁術は考えが甘かったが、貴様はそれに輪をかけて尚足らぬほど甘いわ!頭が蜜で出来ておるのではないか?


それもそうである。中身がこの時代の人間では無い近代的思考回路の高順としては人を残せば復興も早まるという考えだ。しかし、誰もそれを見ていないのだった。


両者は襄陽で一戦交えた。


「行くぞ」


曹操の一声で諸将が雄叫びを上げて突撃を敢行した。


「ふぅ…偶に喧嘩するってのも友達だよな?」


高順は手を振り上げて下ろした。攻撃の準備である。


曹操は高順と戦う時に最も手こずるのは陣形を何もあったもんでは無いからだ。陣形を使うのであればいくらでも攻略法は見つかるが陣形では無く部隊を分けて四方八方から奇襲してくる戦い方に困惑を覚えていたのである。


張遼は高順の本陣目掛けて突撃し、高順と一騎討ちを演じた。


「将軍!」


「お?文遠か!」


二十合撃ち合い、高順が若干押してる形でもあった。


張楊も漸く使い物になり始めて曹操の本陣を目掛けたが徐晃を圧倒し、張郃を押し退けたが許褚に斬られ負傷して退却した。


曹操は一安心したが、単純な戦闘力で言えば高順が鍛えた兵達の方が上で部隊毎に作戦立案が出来る状態にある為苦戦を強いられている。


高順はこの報せを聞いて怒りが沸いたのか張遼の戟を素手で折り、石突側で張遼を馬上から叩き落とした。


「文遠、まだまだだな!ハッハッハッ!」


曹操の本陣を目掛けて突撃した。


「ふははは!高順、甘いわ!」


許褚が率いている曹操の親衛隊は虎豹騎の中でも選りすぐりの百将を更に選び抜いた精鋭中の精鋭である名を【虎士】と云う。それだけに曹操も高順には抜けられないと信じてやまないのだった。


高順の直属の【陥陣営】も兵五千と少ないがそれでも高順が一人一人選抜して選んだ精鋭だった。


一見互角に思えるが、陥陣営の方が騎兵が多い為、優勢である。


曹操は剣を抜き身構えたが、直ぐに意味を成さないと知った。目的は曹操では無いからである。


「己ぇ…!高順!」


高順は突撃してる最中にも戦況を俯瞰しつつ、虎豹騎を殺し回った。こうすれば暫く曹操に戦う力が無いだろうからと言う計算である。


「おぅ!そこの間抜け野郎!」


「…」


そうだ。コイツ俺以上に無口だった。どっかの無双とは違ってよっぽど武将然としてるぜ!


五十合撃ち合い、互いにかすり傷を負って両者兵を退いた。


此処で戦いが終わったと理解した双方は追い討ちもせずに戻った。劉備は虎豹騎が弱り曹操軍自体あまり強くないと踏んだ為、奇襲をかけた。


成功したが、三万の兵を五千にまで討ち減らされほうほうの体で此方に逃げ込んだ。


「孝父!孝父…助けてくれ!」


「曹操に奇襲を掛けたな?」


「あぁ、そうだ」


「はぁ…、なら江夏に向かえ其処には亡き劉表の長子が居るはずだ。取り込んで荊州を制すれば道も開けよう」


こう言うしかねぇじゃん?野郎こっちの兵を取り込もうと躍起になってるし、下心見え見えなんだもん!


翌年、劉備らは歴史通りに赤壁で戦う事になった。歴史と違うのは俺と言う不確定要素が加わったからだ。

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