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第五十七回 高尚武大震軍威 枕戈待戦三軍壮

中原では政争や戦争が常態化していた。 遼東王高順は今やこの紛争の重要人物となっている。 彼は軍十五万を率いて、争いを終わらせようと決意した。


遼東からの風が軍旗をなびかせ、遼の王である高順は城壁に立って大軍を見下ろしていた。 彼の指揮下にあるこのよく訓練された精鋭部隊を見つめる彼の目は、頗る鋭かった。 高順はすでに次の行動を計画している。


「命令が下されれば、十万人の軍隊が直ちに前線の守備に就き、厳重な警戒を維持するだろう」


高順は冷静に語った。 最前線での戦争は緊急であり、少しでも気を緩めて隙が生じれば敵の勢いは止められないことも加えて、怠慢の余地はないことを彼は知っていた。


「お前達には苦労かけるな。うちの息子らを頼んだぞ」


「いいえ!滅相もございません」


羅胤は全て悟り、敬意を持ってその命令を受け入れ、さらに高順に指示を求めた。


「遼王、残りの五万の軍隊は洛陽まで連れますか?」


高順は頷いた。


「その通りだ。吾は陛下に会うために自ら洛陽に急行した。これは我々が戦略的優位性を獲得するための重要な一歩だ」


羅胤が手を振ると、命令はすぐに兵士全員に伝わりました。 鉄壁の兵五万人が直ちに準備を整え、遼王高舜を追って洛陽まで向かった。


高順は五万人の軍隊を率いて数日間山の中を行軍し、最終的に洛陽市郊外に到着した。 城門は眠れる巨人のようにそびえ立ち、招かれざる客高順を待っていた。


「遼の高順が皇帝との面会を求めている事を示すものだ。持っていけ」


「はっ!」


高順が命じると、部下はすぐに前に出て城門を守る衛兵に手紙を見せた。


洛陽の守備隊はあえて無視せず、直ちに漢皇帝に報告した。 劉協は少し疲れて玉座に座っていた。彼は最近、さまざまな王子間の争いに悩まされていました。 遼の高順が直接会いに来たと聞いて疑念を抱かずにはいられなかったが、遼王の強さを無視することはできなかった。


「直ぐに通すがよい」


劉協が手を振ると、周囲の侍女や宦官が動き始め、遼王高順を迎える準備を始めた。


高順は政殿に入り、文官と軍の役人全員が見守る中、堂々と歩きながら皇帝のところにやって来た。 五万の軍隊が城外に整列し、その壮麗な光景は洛陽の全市に衝撃を与えた。


「臣順、陛下にご挨拶致します!」


劉協は自分の前に跪く遼王を見つめ、さまざまな思いを巡らせた。


「起きよ、礼は要らぬ。此度は何用か?」


高順は立ち上がって率直に語った。


「形勢は混乱し、群雄らが覇を争っており、臣は中原が荒廃するのを見るのは耐えられないので、勤王の師を挙げ、陛下は外敵に抵抗し、漢朝の再興を…」


劉協の目には驚きと安堵の色が浮かんだ。 彼はこの紛争における自分の弱い立場をよく知っており、高順の支援は間違いなく漢朝の力を強化する事は間違いないだろう、と。


しかし、宮廷の誰もが遼王に対してそれほど友好的だった訳では無い、寧ろ敵の方が多いだろう。宮廷の何人かの大臣は密かに嫉妬と猜疑心を抱き、遼王高順の訪問には邪悪な意図があり、漢王朝の基礎を揺るがす可能性さえあると信じていた。


「陛下、遼王は我が大漢を守っていると主張されておりますが、我らは遼王が異なる意図を持っていることを警戒しなければなりません。」


太師である武卿は立ち上がって眉をひそめて反対した。


高順はこれには驚かず、反対が起こることをすでに予想しており、それに対処する準備ができていた。内心はいない間に官吏の顔も随分と変わったな…、いつの間に?と思ったが、直ぐに思い返した。ま、俺はもう独立してるし?何処の誰が何になろうと知ったこっちゃねぇし?でも、皇帝とは昔から知り合ってるしなぁ…!


「太師の心配はご尤もである。もし我ら遼の意図が違うなら、なぜわざわざ此処へ来る必要が有りましたかな?直接この洛陽に? 存亡の秋、漢と遼は切り離せぬぞ?唇滅びて歯寒し」


議論の末、皇帝は最終的には決断を下した。


「遼王高順の忠誠は真に見上げたものである。朕は遼王を大将軍にして全軍の指揮を任せる。劉備と孫策、曹操たちは外敵と戦い、天下に太平を齎す事を願う。」


これを聞いた遼王高順は満足した様子で、再び跪き


「陛下のご信頼に応えられるよう全力を尽くします」


高順は不遜なニヤけ面で答えた。これに百官は更なる嫌悪感を抱いた事に間違いは無いと高順は確信した。


遼の高順王の騎兵隊が新たな旅に出た。 皇帝との戦略的同盟は、この混乱した土地に新たな希望をもたらした。 しかし、今後の道は依然として課題と変動要素に満ちていた。英雄たちが競い合い、そして本当の戦いはまだ始まったばかり...


陰謀と戦争に塗れたこの時代では、誰もがそれぞれの使命を持っている。 遼王の高順は自分の責任をよく認識しており、来たる大敵と向き合おうとしていた。


曹操は前線で来たる敵を迎え討つ準備を進めていたが、聞いていた敵兵の数は頗る少ない…、遼からも敵襲の報告は聞いていない。


「孝父…!貴様、よもや我らを一網打尽にするつもりではあるまいな?」


「曹公、それは言い過ぎでは?」


曹操らが指揮する漢軍とは名ばかりで、弱みを見せたら見事に食われる腹の探り合いをする場所となっていた。


「ふふふ、小僧、お前はあ奴を余りにも知らなさすぎる…!この世で最も恐ろしい男よ…!」


「何故…?父上含め曹公達はそこまであの高順と言う男を恐れるのです?」


「そうか、お前はまだ知らぬ、か…」


「何をだよ?」


「ふふふ、どうせ明日をもしれぬ身だ…、昔語りをしてやろう!」


高順が如何にして、董卓に気に入られ、都でどの様に政変を穏便に収め、公孫瓚、袁紹を立て続けに破り自立し、王となり国を建てたのか、曹操は一通り説明した。


「じ…、じゃぁ!」


「そういう事だ。お主の父おろか、この場におる者はこの世に知られた豪傑、あ奴は其者らを殺そうと思えば何時でもできるのだっ!」


「クソッ!聞いてねぇよ!なら、真っ先に高順を殺した方が良いじゃねぇか!」


「ふん、口先で二百万の兵を手にする男だぞ…、やれるものならやって見るがいい…目の前の敵を片付けたらな!」


孫策は若さが目立つが、劉備は黙って聞いていた。孫策は知らない事を聞かされた。父も、目の前の曹操も仇だと思っていた高順を褒めた、少しばかり理解出来ない孫策であった。


やっぱ、一戦交えにゃぁ分からねぇわな!なぁ、公瑾!


伯符、落ち着け、叔父上が本当にあの者に殺されたのか明白では無いのだぞ?


じゃぁ、どうすんだよ!?このまま手を握って黙ってろってのかよ!


落ち着け、敵を増やす事は無いだろ?今回の戦を終わらせた暁にはこの件を徹底的に調べようでは無いか!


ちぇ、わぁったよ!そうしてやらァ!


周瑜に目線を送ったが、周瑜が目を瞑り口角を上げたのを見ると孫策も少しばかり理性を深めた。


劉備は曹操の語り口を聞いて、暗に納得していた。


あの天地をものともせず我が物顔で天下を闊歩する曹操ですらあの高順相手に太刀打ちできるどころか、薄らと畏れを抱いてる事を知った。


なんだと!?あの逆賊め…!道理で勝てぬ、どうせアイツら裏で手ぇ組んどりやがる!クソが…、これじゃ二弟、三弟が居ようとも武勇だけじゃ天下を治められんぞぉ…、それに孔明先生が居たとしても益州以外の零陵、武陵と南郡の西側…、兵もようやっと七十万に届こうってところなのによ!あの野郎!


曹操はチラッと劉備の方に目をやったが、内心は劉備に同情すらしていた。


ふふふ、大耳め!ようやっと理解出来たか…!にしても孝父、天下広しと言えども貴様くらいぞ!我らに畏れ、妬み、敬意を抱かせた相手はな!儂とて長年争ってきたこの大耳とも少しばかり奇妙な友情を感じるのだよ!はっはっはっ!孝父は心底お前を嫌っておるがな…!


高順は朝廷での謁見を経て、西涼に旅立った。


さぁて、呂布の野郎…まさか陳宮を再び迎え入れて外部に侵攻するたァ…やるねぇ…!陳宮まだ死んでなかったのね…。


「張五!」


「はっ!」


「全軍急ぎ、西涼の馬酋長の所へ行くぞ!」


今回は馬翼さんを連れて西征に出かけていた。何故かって?《一説》にはこの馬翼さんの一族つまり、馬援の嫡流の子孫がアルメニアの王になったらしい。


俺からすりゃ、親戚同士の顔合わせってとこだろうよ。


「馬監軍!これよりは道案内を…!」


「お任せあれ…」


「おう!頼んだ!」


馬胡韋は現在中央アジアの大半を手に入れた様でもある。イスラム世界と勢力を二分する勢いそのものである。


俺の目的は西北、西蔵の割譲を求めて交渉に行くつもりでもある。にしてもあの野郎…シレッと勢力を拡大しやがって!今じゃ一大帝国を築きやがって…!


西域都護を返上させて、他の誰かに委任して、その上で漢から離脱させて…、あれ?後任誰がやんの?待て待て!なんで俺がこんな心配してんだよ!くそ!漢の領域が広まるって事は紛争が大きくなるって事だ。俺はそこら辺に関しちゃ無関心を決め込んでるからな!


高順はあくまで、今回の対呂布戦での援軍を求めて見返りとして独立させる予定でいる。領土が広すぎてもそれを制御出来なければ意味が無い、高順が学んだ歴史の中にかつてのモンゴル帝国の様に三代皇帝貴由グユク死後蒙哥モンケが即位し、更に継承戦争の後忽必烈フビライが即位した頃には、キプチャク・ハン国、(ジョチ・ウルス)チャガタイ・ハンチャガタイ・ウルス、オゴタイ・ハンオゴタイ・ハンウルス、イル・ハンフレグ・ウルス、元朝へと分裂した、よって元の領土は実際には現在の中国の九割とモンゴル高原の東側のみに留まっている。表面上はそれぞれ遍くモンゴルを束ねる大帝国の一部だが、実際にはそれぞれが独立した王朝である。


高順は漢の領土が広ければ人種、資源、環境、紛争、他勢力の侵攻等を懸念した上でそれを馬胡韋に独立させて何れ西から来る脅威を漢の盾としての役割を求めている。


「…王、遼王殿下…、遼王!」


「ぬァ!?どうした?敵か?」


「いえ、そろそろ着きますぞ?」


「そうか、ならば、一休みするか?」


「えぇ、そうしましょう…随分と考え込んで居られたようで…」


「そうか、すまんな…」


「お気になさらずに」


「そう言って貰えると助かる」


高順達は長安で一休みを入れて一段落した。だが、前線では遼軍十万が入り、遼王室の王子三人が戦場に入った。


「弟達よ、我らが共に戦うのはこれが初めてよな!」


「兄貴、ガタガタ言ってねぇで蹴散らして帰ろうや!母上達が飯を作って待ってくれてるさ!」


「はぁ…尚文、お前と言う奴は…」


「へっ!こう言う性格なんでね!」


「言ってろ!」


高景は振り返り、父の配下達と打ち合わせた。


「叔父上方…、此度の戦、俺じゃ務まらぬ故、各々で指揮を採って頂きたい…」


呉資が口を開けば、章誑も其れに合わせる。


「成りませぬ…、此度の主将は大殿下なのですから、我らが出しゃばるなど…」


「左様、其れに大殿下は陛下より任ぜられた主将、軽んじる者がおりましょうか?」


古参の二人が口を開けばみんな嫌でも納得せざるを得ない。まるで高順がこれを見越して配置したかのように…。


父上…、父上の目は何処まで見ておられるのですか?これではまるで私に圧力をかけてるかのような…!


そんな高景の悩みをよそにそれぞれの配置が行われ、曹操により中軍のすぐ後ろに配置された。


夜には羅胤、麹義が営幕を訪ね高景を慰めた。


「大殿下、我ら一同は大殿下の器に期待して居られるのです…、どうかそのように悩まないでください…」


「そうだ。昼間に呉資、章誑も言ってただろ?気にすんじゃねぇ、ダメなら親父にケツを拭いて貰え!」


「しかし…私は…」


「はんっ!いいか?お前さんは今や、遼国の跡継ぎでこの十万の軍の主将でもあるんだ!お前がそんな風に悩んでると将兵らの士気にも関わるぞ?」


「しかし、将兵らの命を…」


羅胤が砕けた口調になり優しく高景を慰めた。


「…若、もう少し自分勝手になってくだされ、お父上は全軍の将兵に戦場に出て生きて帰れと命じられております」


「そんな…!無茶な!」


「そうですね。無茶です。ですが、我らはその言葉だけで士気が上がるのです」


高景は暫く悩んだが、決心ついた。


「わかりました。お二方、ご教授ありがとうございました!」


若者を諭し、その晴れた顔を見ると何処か清々しいものを感じると麹義は感じた。


あーぁ、俺も息子連れてくりゃあな!


次の日、高景は十万の全軍の前で演説を始めた。


「全軍将兵よ!ひとつ聞いて欲しい…、私は今回初めて三軍の主将として戦に臨む!故に父上の武勇、知略には及ばぬが、負けぬ戦をやるつもりだ!我が遼は諸将士らの血を流して建てた国だ!我が遼国に弱卒はおらぬッ!なぜか?元より強いからだ!我が遼国の戦とは堅い陣を敷き、死戦を戦い、何があっても退かぬ!良いな!」


「太子万歳!」「遼王万歳!」「遼国万歳!」


「行くぞォ!」


「「オオォォォ〜!」」


曹操はそれを見て感心した。


「ふふふ、彼奴め…良き倅を持ったな!」


「なぁに、子脩だって負けちゃいねぇよ!」


「うむっ!そうだな!」


呂布が兵を率いて漠南へと入った。漢と呂布の戦争が今始まろうとしていた。


「公台!」


「はっ!我が軍は既に三つに分けてあります!」


「三つだと…?」


「はっ!一つは可汗が率いる兵十万、一つは我らの留守を守る兵七万、もう一つが遼への足止めに三万で御座います」


「何…?孝父が攻めると?」


「遼王はもはや昔日の将に非ず、今や敵となるか味方となるか…読めませぬ…」


「ふん!蹴散らすまでよ!」


「はっ!」


留守の七万は竇輔によって掌握されていた。


ふふふふふふ!ハハハハハハッ!呂布よ!十万の兵と共に死んでこい!そうすれば俺が次代の可汗として仇を打ってやるから!


「竇将軍!急報だ!」


「どうした!?」


竇輔は身体中から嫌な汗がつたわり、まさかとは思うが…、嫌な予感と言うのはこういう時ほど当たる。


「遼軍が…!」


「何ィ!?」


「その数、凡そ五十万…」


漢ならば竇輔はどうせ半数程だろうとタカ括るが、相手は高順である。むしろそれ以上の兵力で来ると考えた方がいいと竇輔は考えた。


「…、民を匿え、兵達に備えさせよ。我らはこれより可汗が帰ってくるまでの戦だ!」


「おぅ!」


実際、竇輔の言う通りではあるが、張郃と董勇の二面進軍である。合わせて七十五万の軍で攻め寄せた。


「大将軍、これは末将の私戦につき、これより呂奉先を討ち取って参る!」


張郃は止めようにも、二十五万の飛熊軍は制御を聞かないどころか完全に董勇の私兵と化していた。


「大将軍、我らもこれより呂奉先の本拠へと攻め入る。余計な考え事は無用にござれば…」


「文遠、わかっておる…、しかし…!」


「陛下にお任せいたそうぞ!」


「うむ…!」


張郃は気を取り直し、呂布の本営に進撃のして行った。


高順は無事、馬氏一族を何とか引渡し、更には涼州、西蔵の割譲を承諾させた。これを早馬で洛陽に届けさせ、一応の憂いは絶った。


さぁて!昔の主…今じゃ敵か!俺も随分と馴染んだもんだ!行くか!

モンゴル帝国の帝位継承戦争に関しては本作と全く関係無いので詳しく説明しません!悪しからず。

軽く紹介します、

キプチャク・ハン国

チンギス・カン長子ジョチの家系

著名人:産まれてくるタイミング悪かった子ジョチ、祖父の教えに忠実な孫にして欧州の悪夢でもあるモンゴル帝国第3世代裏番長バトゥ

チャガタイ・ハン国

チンギス・カン次子チヤガダイの家系

著名人:正義感の塊にしてヤサの番人チヤガダイ、バーミヤーンの悲劇モアトゥケン

オゴデイ・ハン国

チンギス・カン三子オゴデイの家系

著名人:調和を重んじる2代目オゴデイ、反逆の寵児ハイドゥ

イル・ハン国

チンギス・カン四子トゥルイの家系

著名人:憎めないマイペースフレグ、イスラムの回し者カザン

元朝

チンギス・カン四子トゥルイの家系

著名人:奪い取った帝位フビライ、放蕩帝トゴン・テムル

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