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第四十九回 建国之初重在法 魏公征西険喪命

建国したのは良いけど、何したらいいの?って思うんだけど…、そこはうちの奥さんが頑張ってくれてるからなぁ…。


官職は決まった。次からは冊封せにゃならんのよな。


さて、朝議で話すか!


「皆、建国出来たのは孤一人の考えで、諸公らの尽力あっての国だ。当然爵位を得て当然だが、土地では無く禄を持って報いたいと思うが…どうか?」


高順が質問を投げるが、都察院の田豊が声を上げた。


「陛下、その件につきましては何時でも相談が出来ましょう…。先ずは国の整備を…」


「うむ、そうしようか。法を持って国を治めよ、天下は民のものにして我ら限られた人間のものでは無い、これだけは覚えて欲しいのが文臣武将の禄は民より出るものである。孤は士大夫と共に天下を治めるが、民と共に存る!官民一体の法治国家を作ろうではないか!」


これには文武百官が従った。


「その前に一つだけ、孤のわがままを聞いてくれんか?」


「何でしょう?」


「実はな、軍法を立案したのだが…」


「…何故、我らに?」


「うん、本当はな勝手に決めてやろうと思ったのだが、やっぱり皆に一言断りを入れようかと思ってな」


「「…」」


「まっ、軍は俺たちの立身の本だからな!これだけは俺が決めたいと思ってたんだ」


遼国軍法十七禁令五十四斬

悖軍:聞鼓不進、聞金不止、旗舉不起、旗按不伏。

慢軍:呼名不應、點時不到、違期不至、動改師律。

懈軍:夜傳刁鬥、怠而不報、更籌違慢、聲號不明。

構軍:多出怨言、怒其主將、不聽約束、更教難制。

輕軍:揚聲笑語、蔑視禁約、馳突軍門。

欺軍:所用兵器、弓弩絕弦、箭無羽鏃、劍戟不利、旗幟凋弊。

淫軍:謠言詭語、捏造鬼神、假託夢寐、大肆邪說、蠱惑軍士。

謗軍:好舌利齒、妄為是非,調撥軍士,令其不和。

姦軍:所到之地、凌虐其民、如有逼淫婦女。

盜軍:竊人財物,以為己利,奪人首級,以為己功。

探聽:軍民聚眾議事、私進帳下、探聽軍機。

背軍:或聞所謀、及聞號令、漏洩於外、使敵人知之。 狠軍:呼叫之際、結舌不應、低眉俯首、面有難色。

亂軍:出越行伍、攙前越後、言語喧嘩、不遵禁訓。

詐軍:托傷作病、以避徵伐、捏傷假死、因而逃避。

弊軍:主掌錢糧、給賞時阿私所親、使士卒結怨。

誤軍:觀寇不審、探賊不詳、到不言到、多則言少、少則言多。

皆以斬立決、罪不容誅、軍法如山、不可背之。


要約すると古代軍隊用のコンプライアンスだ。


「どうだ?」


「良いでしょう、陛下も行伍の出、我らが口を挟む事は有りません。ですが、民法、刑法に関しては我らと…」


「わかってるよ。それは…俺も考えたんだけどよ…、うちのカミさんも混ぜていいか?」


「王妃様を…!?」


「ここかァ、適材適所ってやつだ。なっ!」


「しかし…」


「お前らは慣れねぇかもしれねぇけど、女も政に参加させていいんじゃねぇか?先例がないってんなら今から作りゃいいじゃねぇか!」


「…、良いでしょう…」


議論は夕方まで続き、三省六部と軍部がそれぞれ話し合い結論を出す事になった。高順は無関心では無いが、さすがに飽きた。


ったくよォ…、こいつら良くも長々と喋ってられんな…、飽きないのかね?よォ〜し、決めた!


「おいおい、一旦休むか?」


「いえ!」


いえ、しゃねぇんだよ!こちとらァ腹減ってんだよ!この馬鹿どもめ!


「いや、孤の腹が空いてな…」


「「…」」


そこから一旦お開きになり、飯を食べる事になった。


「うむ、皆で食うか!孤一人で食べるのも味気がせぬからな!」


「なんと!恐れ多い…」


「いいじゃん、飯を食べるくらい…、それともあれか?皆家で家族が…」


「…」


そうと決まればみんなでご飯を食べる事にした。


食べた後は、やはり続きを話し始めた。埒が明かないため高順は打ち止めにして、声高に話した。


「結論出ねぇなら、立法院を作り立法議会を設立しろ!三省六部、廷尉府、瀋陽府尹、都察院から代表者を出せ!」


「はっ!」


一旦は落ち着き、そこから立法院を設立し、法を徐々に決めて行った。


版図を四州に分けてそれぞれ遼州、吉州、黒州、朝州に分け、遼州は王国直轄領にし、吉州は魏種に、黒州は董勇に、朝州は甘寧に任せた。俺の人生設計を狂わせたあのアンドリュー・○ーク症候群野郎が!宇宙に在る数多の星の中でも稀に見る無能野郎と同じじゃねぇか!クソがッ!思い出しただけでも胸糞悪いわ!俺が…それなりに手柄を立ててある程度の権力と影響力を利用して無難な一生を送りたかったってのに!あの野郎のせいで全部オジャンだ!


冊封しなかった者は次回手柄を立てたら引き立てるとして…、先ずは漢の神経を逆撫でしないようにな…。


なんせ、人口が少な過ぎる…。何千万いようが…、結局全面戦争でも挑まれたら最終的には勝てないだろう…。今の所、群雄割拠も絞られて劉備、曹操、孫策の三大勢力だしな…、人が死なないだけで結局は同じか…。待てよ…?そんじゃぁ俺は…?嘘だろ!?おいおい…冗談はキツイぜ神様よォ!これじゃぁ…俺が公孫淵じゃん!クソが…!どうやらあの親子も情報によれば…竇輔と合流し俺を狙ってるらしい。クソ…どっちみち八方塞がりじゃんか!


高順は溜まりかねて、錦衣衛を劉備、孫策、曹操、馬超、朝廷に放ち常に情報収集を怠らなかった。


その頃、高順は後宮で身を休めていた。


「ふぅ…、頭痛い…!あっ…!」


「夫君…?どうされました?」


「年号…考えてなかった…」


「え?」


「うん…考えてなかった。どうしよう…」


「では、三省六部の人達に考えて貰いましょう!夫君は落ち着いて暫く平穏に暮らしてはどうですか?」


「そうは言うがな…」


「今まで散々戦ってきたのですから、誰も文句を言いませんよ」


「そうか…?でも、俺は王だぞ?そんな訳には…」


「ふふふ、心配性な方ね…、そこは結婚してからお変わりありませんね!」


「そうか?」


「はい!」


「わかった。俺は暫く顔を出さない」


「はいはい、茶館ですね!」


「バレた?」


「そこ以外に行けるところないじゃないですか」


「うっ!ま、まぁ、そうだな…ははっ」


なんでバレたんや!頭良い奴ってサイキックなんか?


高順は久々に茶館を開いたが、一国の君主と言う身分が邪魔をし誰も寄り付かなくなっていた。


「嘘だろ?閑古鳥泣かせちゃってるよ…」


茶館の周辺は賑やかだが、誰も寄り付かない。


ガヤガヤとした通りは賑わい、角の一角もとい高順の茶館だけが誰一人と寄り付かないのだ。


ある一行が其処に入って来た。先頭に居るのは女だった。高順は望外の喜びを顔に出し、もはや一国の王の体裁は何処にも無かった。


「い〜っらっしゃい!お客さん、何にしますか?」


「は、はい、お茶を…」


「はいはい、直ぐに持っていきますので!」


客が引いていた。高順はそれに気づかない、再開してから初めての客だからむしろはしゃいでいる。


「どうぞ!当店自慢の茶葉です!」


「あ、はい…」


「ところでお客さん、この遼州に何用で?」


「旅を…」


「お嬢様…」


「いいの、大丈夫よ」


「そうですかい、何かあったらご相談にのりまっせ!」


「あ、あの!」


「はいはい!」


「実は…、人を探しているのです…」


「へぇ〜!そりゃ大変ですな!お客さんはどちらから?」


「益州です」


「そりゃ、遠いところを…探し人が見つかるといいですね!ま、見つからなけりゃうちに寄ってきな!」


「ご主人は聞いた事が有りますか?」


「ん〜、言わないとわからんね〜」


「その、探してる人は兄なんです…」


「へぇ〜…お兄さんねぇ〜」


「荊州で戦に出ていたのですが…」


「お嬢ちゃん、お名前は?」


「関銀雪です…」


「関…、いいお名前ですな」


「兄は関平、関定国と言います…」


「そうかい、見つかるといいな!」


まじかい!関羽の娘?きっちり名前も特定して来やがったからそうなんだろうよ!健気じゃねぇか、よし、合わせてやっか!


「嬢ちゃん、遼に間もないだろ?この店で寝泊まりしてっていいぞ!」


「え?」


「おう!暫く、旅に出るからよ!代わりと言っちゃぁなんだが…、代わりに茶館を切り盛りしてくんねぇか?」


「旅って…?」


「あ、あぁ、俺も昔戦出てたんだ。昔の仲間を弔おうって思ってさ!」


「そうですか…、わかりました。私たちは…」


「おぅ、離れるってんなら、ご近所に一言言っといてくれ!みんなわかってくれるからよ」


「あ、はい…、わかりました。」


高順は本当に旅に出るかと言うと本当である。


まっ、侯成らも弔ってやらにゃいかんだろ…。裏切りもんつったって死んでんたがら、つまんねぇ事あっても配下として活躍してくれたからな!


そういう事で一人一匹一本で旅に出らァ!


朝廷は大丈夫かと言うと万全である。


軍部は大将軍の張郃らが差配し、兵部尚書の劉何も合わせる。三省六部と都察院は高順の性格を理解しているし、むしろ高順にやらせようとすればそれこそ行政が上手く行かなかくなる。


高順も半ば自身の権力を分散し、そして歴代中華王朝が失敗した周朝以来の立憲君主制国家を作り上げようとしているのだ。現状は君主が何もしなくても朝廷が上手く運転出来る状態にしただけである。


高順は瀋陽を出て、遼西郡に差し掛かり、目の当たりにしたのが、漢から来た使節が公然と馬に乗り市場を荒らしていた。


「どけどけどけぇ!我らは漢より来た使節なるぞォ!」


通りの両端に並ぶ野菜、果物、瓷器などが散乱し民は泣き寝入りを決めようとしていた。


高順はこれを見て怒りが湧き我慢出来ずに手を出した。


「待てよ、荒らしといて何もねぇってのァ違ぇだろ?謝るなり、何なり有るだろう?」


「あぁ?誰だテメェ?余計な事言ってっと殺しちまうぞ?」


「はぁ?誰が誰を殺すって?」


「ふん!この伏喜様がだよ!」


「お前…、伏家の人間か?」


「おゥ!そうだよ!監国の従兄弟じゃ!」


「そうかい、なら死ね!」


高順は槍を構え、伏喜も剣を抜き両者撃ち合った。


市場の民らは出てきた者は必ず撃ち殺されるであろうと…信じて疑わなかった。ところが、むしろ逆に圧倒したのは出しゃばってきた者の方であった。


「テメェ!この栄えある漢の使節を…!」


「んなもんこの遼じゃ飯食った後に尻から出したクソ以下だぞ?」


「貴様!侮辱したな!?」


「これも貴様らの王に報告してやる!」


「あんだと?」


その刹那高順は槍を突き出し伏喜を殺した。


「ウグッ!き、きさまぁ…」


「とっとと死ね」


施設者らは恐らく雑兵だろうと高順は活かして返した。


「おい!この動かねぇ糞袋を持って帰れ、そして次はマトモなのを使者に立てろと皇太子に言っとけ!」


市場の者らは野次馬根性からこの件の行く末を見て行ったが、殺人現場を見たとあっては話が変わり、それぞれ我先にと逃げていった。


役場からは当然、役人が出てきた。


「貴様!何をしておるかっ!」


「え?国の為に…」


「なぁにが国の為だよ!てめぇのせいでまぁた戦争になるだろうが!…ったく!手間かけさせんじゃねぇよ!」


「あんだと…?おどれ誰にもの言うとんのじゃい!上のモン呼んでこい!」


「はい、そうですかたァ行かねぇよ!このバカ!」


「我らの陛下が何の為に此の『六扇門』を作ったのか知らねぇようだな!」


確かに俺が作ったけれども…、え?まさか俺を捕まえに来るパターンじゃ無いよね?え?


「知るかぁ!」


「だったら今教えてやる!みんな、行くぞ!」


「「おぉ〜」」


えぇ〜!?マジかよ!


高順は皮肉な事に大立ち回りを演じた。不本意極まりない事である。


「てめぇらの上のもんを呼んで来やがれ!」


「そんな与太話は牢に入ってからだ!」


そして、高景はめでたく囚人となってしまった。


役人は遠目から見て、どうもマトモな人間には目えなかったらしく、適当に報告を上げてしまった。


「…、おい?なんであんな頭おかしいもんを?さっさと斬って漢に送ゃいいじゃねぇか!」


「いえ、あのぉ…、アタシらも騒ぎに駆けつけたのはいいんですがね…、あんなの捕まえなきゃ逆に…」


「うん、それもそうだよな…、これも国の為だ。斬監候(執行猶予付き死刑)とするか。儂は朝廷に指示を仰ぐ、奴の使っていた凶器を刑部に持ってゆけ!漢の死者を殺したとあっては町役場のわしらの出る幕も無いだろうよ」


「はい、分かりやした」


こうして、早馬で刑部に届けられたが、逢紀は急ぎ報告書と槍を中書省に持っていき、都察院、刑部、廷尉の三司会議を開き、犯人をどう審議するかを討論していたところ、廷尉の秦宜禄が逆に慄いた。


「出来ぬッ!出来ぬぞ!」


「秦廷尉、どうなされた?この槍がなんなのか?」


「田御史は知らぬかもしれぬが…、これは陛下の槍だ」


「陛下の?ならば軍部の者を呼ばねばな!」


「いや、衛将軍を呼ぼう!衛将軍は常に陛下の傍らに居られたからな!」


「そうしよう!」


程なくして張五が呼ばれて来た。


「あれ?お三方お揃いで、どうしたんです?あっしがなんぞ罪を?」


「衛将軍、そうでは無い…、この槍を見て欲しい」


張五は槍を見て尻もちをついた。


「こ、こりゃぁ…、大将の槍…!」


「やはりか…」


「やはりとは?やっぱり大将の身に…!」


「声が大きいぞ!」


「…」


「陛下の物とわかった以上、物事は簡単には運ばぬ…、我らも遼西に向かわねば…」


「しかし…」


「なぁに、瀋陽府尹の張邈殿が居られる。放っておけ」


「うむ…」


「田御史は残られよ。ここは我らで…」


「いや、あっしが連れ戻して来やしょう」


「将軍?」


「大将は常に言っておられやした。中枢の臣はどれも国家の柱石であるから欠けちゃいけねぇって…」


「わかった。では頼もう」


「へいっ!」


張五は急ぎ禁衛府の兵三万を組織し、直ぐに遼西郡まで急いだ。


衛将軍が出てくると町役場の者もただ事では無いと悟り、出迎えた。


「衛将軍、ようこそ…、此度は何用で?」


「お…あ、んん!ご苦労である!この槍の持ち主に会いに来た!」


「衛将軍の様なお方がわざわざ?」


「うむ、確かめに来た。牢の外は禁衛府の者が固める。良いな!」


「は、はっ!私も責務が有りますので同行しても?」


「構わんぞ、一緒に来い」


張五は牢に入って高順を見るなり膝まづいた。


「大将…!大将、何やってんですかい!?」


「ぬぁ!?お前か!」


「我が国の衛将軍に向かってお前とは何か!」


「え?あぁ、そうか、今の俺は罪人か…。罪徒、衛将軍に拝謁いたします!」


役人に言われ高順も頭を下げたが、もちろん張五をからかっているのである。


「た、たたた、たい、大将!?」


二人は声を低くして会話を始めた


「ん?衛将軍」


「い、いや、表を上げてくだせぇ…、どうすりゃいいか分かりやせんよ」


「どうすんだよ…、首痛ぇんだけど」


「頭上げりゃいいじゃねぇですか!」


「じゃあねぇな!」


役人は怪訝に思ったが、状況が掴めず唯見守るだけであった。


「おい!ここからこのお方を出せっ!早くしろ!」


「え?」


「え?じゃねぇんだよ!早く出せ!俺を殺してぇのか!」


「えぇ!?」


え?何この古代マスオさんみたいな人…。ちょっと待てよ。真面目にやんなきゃ行けないところを笑っちまうじゃねぇか!


「へ、陛下とはつゆ知らず…、とんだご無礼を!」


「あぁ…、もういいや…、お前らが良く法を守ってちゃんと仕事してるのをよくわかったからよ」


「ありがとうございます!」


高順は釈放され、幽州に入った。


「ん〜!懐かしい!そう思わんか!」


「懐かしいじゃありゃせんですよ!何かあったらどうすんすか!」


「心配し過ぎだ。何もおこりゃせんよ!はっはっはっ!」


張五は衛将軍となって以降、心配事が増えていた。


「大将…とりあえず、幽州牧の田将軍に話をと推させてもらいますからね!」


「うむ、わかった。」


そう言うと、高順は自身の腕を張五の首に巻き付けじゃれあった。


「成長したなコノヤロウ!ハハハハハハ!」


「痛ぇっすよ!」


北平に入り、田豫に挨拶した。


「よォ、田将軍、元気にやってっか?」


「陛下!」


「おう!そんな畏まる事は無いさ!」


「しかし…、今日はどの様な御用で?」


「なぁに、昔世話になった奴らを弔おうとしてな!」


「そうですか…、某からも陛下に一言ご挨拶を…」


「ん?何があった?」


「実は…、先日、使節が殺された件について…」


やっちまったー!そうだった…。こいつが責任者なんだった…。


「それで?」


「遼に向けて更に兵百万を持って董承を征東将軍に任じ、それがしと牽招を副将に…」


「戦うのか?」


「…、情理からすれば陛下は昔日の主…、某が今あるのも陛下のおかげ…道理からすれば陛下は某が討たねばならぬ相手…」


「チッ…!ヤな情報を知っちまったな!なら、帰って戦の準備でもするか?」


「いえ…」


「ま、お前と牽招が俺に情報を漏らしたと言いふらしてやろうか?」


「へ、陛下!」


「おい、今ある兵は?」


「全て新たに徴募したもの達です…」


「俺が託した兵は?」


「全て裏で養っております…」


「そうかい、なら漢にお前らの居場所は無くなった。遼に来い!」


「しかし…!なぁに家族は心配すんな!きっちり手配してやるからよ!」


「はっ…!」


田豫は流されるまま、家族を伴い、遼に向かった。


牽招には同じ技は使えないだろうと高順は踏んでいる。昔は仁侠に走る遊侠だったのだから、筋の通らないものには最後まで抵抗するだろうと高順は思っているのである。


高順はそのまま、西涼に着いたは良いが、既に戦場と化した。


曹操と馬騰が戦っているのである。高順はこれを見て苦笑いをぜすにはいられなかった。


「はは…、歴史は変わらんか…」


馬騰が叛乱を起こした理由は無論、皇太子らの権力闘争の捨て駒にされたからである。そして、今や高順と敵対する理由も無くなり、息子の馬超に唆されて兵を興した。


「孟起よ、これで良かったのか?」


「父上、何をおっしゃいますかッ!高順を見てください!見事に漢より独立したではありませんか!」


馬騰は頭を抱えた。軍閥のお頭として漢、羌、逆賊とのらりくらりと付かず離れずに西涼一の勢力を築き上げたが、今正に息子の手によって潰されかけているのである。


孟起よ、お前は一つ大事な事を忘れている。高順は高句麗、卒本、三韓など大小の諸国を滅ぼしその地に居座っているから、漢も口を挟めないのだ…。


「父上!私も戦場に出ます!」


「そうか…」


こうなると先祖も泉下で泣いておるだろうな…。兄上、馬家を頼みますぞ!


馬騰には自身の敗戦が目に見えていた。


今回の戦役の背景は、曹操が夏侯淵らに命じて漢中の劉備を討伐しようとした。馬騰らは自分の領土が攻められると疑心暗鬼になり、共に兵を挙げたことから戦役は始まる。曹操は曹仁を派遣し、潼関を守備させた。関中の兵は精強であることから、曹操は諸将に戦わず堅守するよう命じた。


報告を受けた曹操は笑いながら征西を決めた。


「ふふ、西涼も中々に精強では無いか!ハハハハハハ!」


「孟徳ぅ…、笑ってる場合ではなかろう!」


「ふっ、元譲、少しは肩の力を抜け!」


「お前は抜きすぎなんだよ!」


そして曹操が西征を始め、潼関を挟んで幾度と無く戦い、曹操は数度に及ぶ命の危機を晒すことになった。




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